こんなことをして何になるのだろうと思いながら、やっぱり気づいた限りで記録にとどめておきたいと思った。私の理解は浅いらしい、表面上のことしか読み取れない。深読みの鑑賞はできない、と開き直ることにした。
これまでの調査と、いま、渉猟できる手元にあるアンソロジー、ほんのわずかな全歌集、個人歌集、古い雑誌、そしてネット検索の結果である。ほんとは、初出にあたりたいのだけれど、図書館に出かけたり、遠隔コピーを依頼したりする体力・気力が覚束ない。転居の折、手離さなければよかったと思う資料もあったのだが、後の祭り。一応、出典は、メモしているが、さらに確認中である。もし、他の歌人や作品をご存じでしたら、ぜひご教示いただけましたら幸いである。
若干のコメントも付して、当ブログで発表できる日があればいいと思う。さらに勝手な区分をしながら・・・。
(敗戦直後の歌人たち)
坪野哲久 (1906-1988)
・敗戦の責めの所在を見きはめつつ君をうやまはずまた否定せず
・神にあらず人にも似ざる旅を行き新しき代の感覚のずれ
・切羽つまりしわれらが今日のまなこもて天皇をみる遮ることなかれ
香川進 (1910-1998)
・天皇がただすなほに詫び宜らすことすらなしに何革まるべき
阿部静枝(1899~1974)
・雲の上に主権をおきてひれ伏せる暗愚の歴史閉じて起つべし
安藤佐貴子 (1910-1999)
・奉安殿壊つ清しさや古きもの崩えゆく兆しまのあたり見つ
・新憲法かにかく成れど「象徴」の模糊たる二字にわが怡しまず
渡辺順三 1894~1972
・天皇制廃止のことをこともなげにこの老いはいふゐろり端にて
(抵抗の歌人たち)
大塚金之助(1892~1997)
降伏の日(一九四五年八月)
・真珠湾 奇襲の戦果を その夜の 君は無批判に うけとりました!
人間宣言
・人間が 神になったり その神が 人間になる 国なのである。
・あのやさしい 天皇の名において 十三年、 僕が追放されたとは 信じられまい。
・君のしずかな 態度の底に 暴力を ひそませているのを 見のがしはしない。
・人間を 口にする君が 人間を 虐殺ナチズムを どうしてとったのですか?
木原実(1916~2010)
・襟もとふかく天皇をみた二十歳の未決監房赤い煉瓦みち
・地獄が天皇を待つと書いたザ・サンの記事読みつづける雨のなか
・象徴不信の声もなく早鐘を打つように戦後が終わる
・高速道路に車の影はなく 堵列する亡霊二百十八万八千二百五名の雨しぶく
草野比佐男(1927~2005)
・国会の答弁に似てぬらりくらり歌会始選者受託の弁も
・皇室に御子生れしと祝ぐこゑのとどろきて国はいまも帝国
・皇孫の誕生にまたしばらくはわが非国民はいぢけて過ぎむ
・勲章の人間差別をあやしまずあはれ勲六等感泣す
竹山広(1920~2020)
・現つ神にあらず人民にまたあらず機関車二輌みがきつらねて
・広き窓に並ぶおん顔なほ見えて天皇かなし皇后かなし
(「前衛」とつらなる歌人たち)
塚本邦雄(1920~2005)
・おどろくばかり月日がたちて葉櫻の夜の壁に若きすめらみこと
・迦陵頻伽のごとくほそりてあゆみますあれはたまぼこのみちこ皇后
山中智恵子(1925~2006)
・雨師(うし)として祀(まつ)り捨てなむみ氷雨は過ぎて昭和終んぬ
・天皇制はいかにあるべき大喪の誄歌(るいか)ながれてやまざるときを
・青人(あおひと)草(くさ)あまた殺してしづまりし天皇制の終を視なむ
水原紫苑(1959~)
・昭和天皇いまだ裁かれずその裔すゑを崇むる不條理、太陽のごと
・天皇制、自衛隊容認のリベラルを訝しむとき露草濡るる
・裁かれて無惨の生を全うせよ それのみに希ひし延命のこと
・國葬はくにを葬る秋ならばかへらざるべし血の蜻蛉(あきつしま)島(しま)
瀬口真司(1994~)
・二十三区の夜景の黒い本丸よ・何度もジャングルを生き延びて
・君の身体は君のものでも人生は人生は天皇に生きられて
(釋迢空・岡野弘彦を継いだ歌人たち)
中西洋子(1941~)
・被災地にペリリュー島にひったりとつね寄り添ひてかの女人(ひと)も、老ゆ
・歌びとら、あゝあの歌びとも詠(うた)ふなり、天皇制にふれざるやうに
一ノ関忠人(1956~)
・抑揚の乏しきこえ聲に帝國の滅びを告げしより半世紀
・天皇をことほぐこゑに満ち充ちてこのくにあやふしとおもはざらめや
・大嘗祭の天皇の儀のむなしさをこころしておけいまの世の子ら
・天皇の退位ことほぐ声々にかきけされたる慨(うれた)みのこゑ
・毒のごとくに体中めぐりわだかまるわが天皇よいまだ滅びず
・なやましき課題の一つ天皇制解きがたければ幾度(たび)も問ふ
(最近の雑誌などから)
斎藤寛(1952~)
・歌会始風に自作を音読ししばし怺へてそののち笑ふ
・神を脱ぎ象徴といふ韜晦に身を躱(かは)しつつ生き延びたりき
・ビックカメラの店内はしづまりをりき'89年1月8日
・象徴が思想を表明する是非は問はれぬままに代は替りぬ
・一条より八条までを廃棄せよ 俺もしつかり改憲派だぜ

施設の東門を出ると、「さくら庭園」沿いに、”昼なお暗い”こんな道がある。一度だけ通り抜けたことがある。今回の千葉県の豪雨で、倒れた木や竹が頭上に迫る個所もあった。
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