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2006年3月13日 (月)

道路用地費11億円はどのように決まったのか(3)―異議あり!井野東土地区画整理事業への公管金

「不服申し立て」にはじめて挑戦!

井野東土地区画整理組合(業務代行、山万)の公管金算定の根拠が協議された会議の記録、協議時の配布文書、作成資料が残っていないはずはないと、まだどこかで行政を信じたい私は、そうした重要文書が消えたことに納得ができなかった。文書の探し方や管理方法に問題があるのではないか。情報公開制度における「不服申し立て」をすることを決意した。

 不服申立てとは、県の行政文書の「開示・非開示決定通知書」に必ず付記されるように、その決定に不服があるときは行政不服審査法第6条により、決定があったことを知った日の翌日から起算して60日以内に、知事宛にする「異議申立て」である。

 今回は、上記のように、「公管金算定の根拠が協議された会議の記録、協議時の配布文書、作成資料」を「作成していない、保有していない」から開示できないという20051月の「決定」に対しての異議申立てとし、60日以内ぎりぎりの32日に提出した。まず、書式を県のホームページからダウンロードして、申立人事項と申立ての趣旨、理由を記述する。理由は、形式的な側面から言えば①請求している文書を全て開示していない ②請求している文書の調査・検索・管理に疑義・不備がある、の2点である。以下文書のやり取りはすべて私と千葉県情報公開・個人情報センター間である。

2005年)

32 「異議申立書」提出

425日「諮問通知書」着。情報公開審査会に諮問した旨の通知

615  実施機関(担当部署)から審査会に提出された「理由説明書」(67日付)着。意見提出の案内

713日「理由説明書」への意見を提出

728日、926日、1027日 情報公開審査会第二部会審議)121日 異議申立てに対する決定についての「審査会答申」着、     1227 異議申立てに係る口頭による意見陳述を実施

 部会制をとる情報公開審査会のメンバーは公法専攻らしい大学教員2名、弁護士2名の計4名で、答申の結果は、「開示された打合せ記録がごく簡易であることなどを考慮すると、開示されたもの以外の打合せ記録を作成していないとする実施機関の説明は不合理とまではいえない。また、現に実施機関の事務室、書庫等からもその存在は確認されないことから、特定された行政文書以外の文書は存在しないとした判断は妥当である」というものであった。

 私は、上記の二つの形式的な理由に加えて、③公管金の額と算定根拠という重大事項を協議せずに決めたとは考えられない ④土地公示価格が著しく下落しているのに、鑑定地価格が上昇している鑑定結果に疑義があり、それとの比較によって公管金の額の経済性を主張しているのは不合理である、ということにも触れた。答申では次のように述べる。組合が提示した公管金の額と算定方法の妥当性とその額が実施機関の算定した用地取得費用の範囲内であるかを判断して決定したのだから、上記重要事項の協議を記録した「行政文書が存在しなければならない根拠とは確認できない」と。

 脈々と生きている役人の言葉、「不合理とまではいえない」「根拠とは確認できない」・・・。公管金の額が鑑定結果より低いことをもって、経過がどうであれ、実施機関の言い分のみを肯定した答申であった。3回もの審査会で何を審議したのだろう。信じられない思いで、追っかけるように、さらに、審査会議事録の情報公開を請求してみた。なにせ、委員の一人は、私のかつての職場の同僚のお連れ合いらしいのだ。親愛の情をこめて。

 

情報公開審査会で話し合われたことって!?

 私の異議申立てについて審査したのは7月、9月の審査会であった。入手した議事録は、部会長のみは特定するが、他の3人の委員の発言は、ただの委員ひとからげの発言として表記される。なぜ各発言の委員名が開示されないのか。これは私が公募委員として参加している佐倉市情報公開審議会でも同様である。議事録で発言者の委員名まで記すと、委員が自由に発言できない、議事録を作成するのに精査を要して効率が悪い、とかで私の「発言委員の記名案」は多数決で実らなかった。県の審議会にならったということか。委員という公職にある以上、名前を背負って発言するのは当然の責任だとは思うのだが。それはさておき。誰がどういう発言をしているか、特定できないながら、審査会の流れは理解できた。主なやり取りは次の通り。

2005728日)

事務局:異議申立ての趣旨を「最近の土地価格の下落のため事業計画を変更縮小し、計画自体は減額しているにもかかわらず、公管金は下げていないことに疑問や不満があるようだ」と説明。

「実施機関が申立人の主張する文書はないという説明の合理性の判断」を審査会に託したい。

実施機関(道路建設課・印旛地域整備センター):「あるものはすべて開示したのだから、まだあるはずだという申立人の主張には理由がない。それに誠意をもって探した結果で、異議申立ての理由はない」と説明、質疑応答に入る。

事務局:公管金は事業者が算定し、県に提出。覚書では物価の変更等が著しいときは変更可能となっているが、今は土地の値段が下がっているので、道路管理者・県から提起しなければ変更されることはないと推測される。

委員11億余の金額を決めたのならば、それなりに大事な会議なので、目録や書庫を探したがないという理由だけでは弱いのでは。

委員:県庁内部・組合内部の会議ならともかく、県と外部組織の組合との会議の記録なのだから残すのが普通ではないのか。

実施機関:おそらく、組合認可前に組合からから口頭で11億余と提示され、事前協議を経て組合認可時の資金計画書に11億余が記載された。いずれも積算根拠は明らかにされていない。組合が最初に提示した額が、偶然、最終的な結論と同じになっただけである。

委員:組合認可前に、8回も公管金についての事前協議の形跡がある以上、金額についてのやり取りがあると、普通の人は考える。そういう市民の疑問に、県は説明責任があるのではないか。簡易な打合せだから書類はないと突っぱねるのはいかがなものか。

委員:公管金を下げたくないから、協議しなかったのでは。

実施機関:道路の計画には変更がない。公管金は、土地区画整理事業がなかったら道路単独として買収した金額との比較だから理論的に変更はない。

委員:それは形式的で、事業見直しがあれば、道路計画の見直しもあってしかるべきだと。それが一般人の認識だ。

926日)

この審査会では、「答申」の下書きにあたる取扱方針案が委員に配布された模様である。

委員:同じ県の中で、資金計画は都市整備課、道路に関する値段は道路計画課が検討というのは、1つの計画の分断ではないのか。今回見直しをしないと決めたのは、一体誰なのか。

委員:土地区画整理事業は事業期間が長い。その間の経済変動による価格見直しのルールはないのか。

組合提示額が“偶然” 最終結論と一致しただけ!

「組合が最初に提示した額が、偶然、最終的な結論と同じになっただけである」と開き直る事務局と実施機関への、委員からの的確な質問にかみ合った回答はついに得られないまま、10月審査会では、委員1名欠席、3人の委員によって事務局起案の「答申」が決定した。少なくとも、食い下がって質問をしてくれた委員がいたことがわかったのは収穫であったが、この議事録を読み終わったときの言いようのないむなしさをどこへぶつけたらいいのやら、ショックは大きかった。 しかし、これですべて終わったわけではない。まだ、要望により申立人の口頭陳述の機会があるはずである。事務局提案で最も早い日程、20051227日と決めた。県庁に出向けということであったが、当時、私には、長時間家を空けることができない事情があったので、志津コミセンでやってもらえませんか、と申出ると、「前例がない、出向かないならば意見陳述は流れる」とまで突っぱねるのだ。しかし、かつて、別件の「口頭意見陳述」の際には、当方が申出たわけでもないのに、県は志津コミセンで開催した。前例はあるじゃないですか、とねばる。コミセンが予約でいっぱいだからというので、身近な自治会館を借りることで、落着。とんだ歳晩のできごととなった。

さて、これからは・・・

 そして3月、いまだに、口頭意見陳述を踏まえた「異議申立て」

についての「決定」が届いていない。電話をすれば「遅れてすいません、初めての仕事なもので」というばかりなのだ。決定の内容には期待できないが、それを待って、その後の対応を決めたいと思っている。旭川国保訴訟の杉尾正明さんの例もある。国民健康保険料の徴収方法の違憲性を訴えた裁判を最高裁まで弁護士なしの一人で長く闘ってきた方だ。この31日、最高裁大法廷で敗訴と決まったが、その覚悟と努力に敬意を表したい。私にそんなエネルギーがあるだろうか。

 いま、千葉県は赤字の土地区画整理組合を全国で一番多く抱えた上、情報公開の実態も最悪なのだ。異議申立てをした場合、答申までの期間ですら、かかる年月が半端でなく他の自治体より長い。たとえば、県の資料によれば、平成13年度、答申数13件、1件平均41か月かかっている。首都圏の他県が5か月から12か月のところを、である。情報公開請求件数自体も異常に多いことはすでに報道されていたが、どうも根っこには、ある県民と県との信頼関係が著しく損なわれ、その県民からの膨大な情報公開請求が累積している、ということであった。さもありなん。

 県職員との接触で、いつも思うのは、県民の立場に立つという視点がなく、常に市町村・県民を指導するかのようなスタンスが前面にでる。そして、対応に詰まればテープレコーダーのように内容のない回答を繰返すばかりなのだ。千葉県ますます危うく、その行方は?。

次はこれも怪しい土地区画整理組合事業への助成金についてレポートしたい。(この項、完)

http://www.pref.chiba.lg.jp/syozoku/a_bunsyo/pp/koukai/tousin/tousin-202.html

https://www.pref.chiba.lg.jp/syozoku/a_bunsyo/pp/koukai/tousin/tousin-201.html

 

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