区画整理組合による開発の企業主導と行政の後押し―「佐倉市都市計画見直し」説明会に参加して―
「都市計画の見直し」というけれど・・・
4月23日(日)午後、市役所で「都市計画見直し」の市民むけの説明会が開催された。都市計画法により、大体5年ごとに実施する基礎調査にもとづいて都市計画を見直すことになっており、前回は2000年(平成12年)だったという。思えば、私は前回の見直しの前後から、都市計画の見直し=土地区画整理組合による開発の不透明性に気づき始めたといえる。今回の見直しも、いま進行中の井野東土地区画整理事業区域の一部工区の「用途地域変更」とあらたに井野南土地区画整理予定区域の市街化調整区域をはずし市街化区域とする「区域区分変更」の2件がメインなのである。
山万の開発はなぜ区画整理組合方式にシフトしたか
2000年の冬、家の近くのユーカリが丘北公園に隣接する高台に広がる雑木林の中で、突然ブルドーザーの音がうなりだし、伐採と掘削が始まった。かつては馬の牧場だったといい、注意して歩くと低い土手に囲まれているのが分かり、雑木林や赤みちは、周辺住民の散歩道であり、子供たちには格好の遊び場であった。あちこちに問い合わせてようやく、井野東土地区画整理事業の一環としての埋蔵文化財の試掘工事だとわかった。ミニコミ誌を発行していた地域の主婦たち数人で、一帯の開発業者である「山万」に出かけたところ、1998年10月に井野東土地区画整理組合準備会が、1999年に井野南土地区画整理組合準備会がすでに発足していたことを知らされた。それまでは、この井野東・井野南と称される60㌶以上の区域は、山万の第3期開発予定区域として喧伝されていた場所だった。山万の常務は「わが社だけの開発というより地域の皆様とともに開発を進めたい」ので組合方式に踏み切ったと胸を張った。完成間もないと手渡されたPR冊子「ユーカリが丘夢の百科」の地図には相変わらず「第3期開発予定区域」として色塗りされていたままで、その後、業界紙でも第3期開発を展開する発言もあったから、どっちに転んでもいいような二重体制を取っていた節がある。当時は、はじけたバブルの後遺症の真っ只中にあり、現在もそれを引きずってはいるが、不動産の下落と不況には著しいものがあった。開発区域の5割以上は山万による買収が進んでいたはずだが、組合方式によるリスクの分散や行政との連携色を強めたかったのだろう。2002年7月、山万を業務代行として井野東土地区画整理組合は認可、スタートしたのである。
説明会になぜ県の担当者は参加しないのか
そんなことを思い出していると、前に並ぶ行政担当者の紹介が始まった。市のまちづくり計画課と都市整備課から課長以下数名づつの参加である。あれっ?区域区分変更と用途地域変更という千葉県決定権限事項の説明がメインにもかかわらず、県からは一人も参加していないことになる。県の担当者は市民・県民の声に直接耳を傾ける数少ないチャンスだというのに・・・、その姿勢は相変わらず閉鎖的だ。
<都市計画の基本理念>に逆行する開発
まずは、「都市計画区域の整備、開発及び保全の方針案新旧対照表」という配布資料を見ながらの説明で、今回の「方針案」と2004年3月の「方針」とが左右に並べてある。変更個所は上記の2件以外、ほんのわずかにすぎない。ただ、今回は第1頁「都市計画の目標」の冒頭「都市づくりの基本理念」に「千葉県の基本理念」が半頁加筆されている。少子・高齢化、価値観・ライフスタイルの多様化に伴う生活環境の整備―バリアフリー、ユニバーサルデザイン、徒歩生活圏、安心快適、インフラ整備など美辞麗句で綴られた作文である。おまけに、歴史や文化の地域特殊性を生かし、景観や環境に配慮した魅力ある市街地形成を目指すと、とまで書き連ねながら、今回の見直しのメインはまさにこの理念のすべてに逆行しているといっても過言ではない。40年前に策定された都市計画道路、里山・雑木林などの環境破壊、長割遺跡や井野城址の破壊、人口減少期における大量の宅地造成と高度地区化、どれをとってみても、この開発の必要性が立ち上がらないではないか。
私が住んでいるのは井野東開発に隣接する地区だが、最も近い工区では、境内地周辺の鎮守の森の伐採、6m以上の盛り土・傾斜10度に近い跨線橋の出現、雨による盛り土の崩壊を目の当たりにした。さらにその造成地には13階にも及ぶ高齢者用マンション建設計画の話も浮上した。
組合を「隠れみの」にする業務代行「山万」、後押しする行政
今回の説明会には、井野東土地区画整理組合の業務代行「山万」、井野南土地区画整理組合準備会を仕切る「山万」関係者が数人詰め掛けていた。井野南地区の地権者の参加も多く、数人からの質問によれば、少なくとも参加した住民には組合事業への同意の意思表示が問われなかったのに、今日、市から聞いた同意率80%には疑問があるし、これまで準備会からの説明、説明会は一切受けていないというのだ。中には、一度仮同意をしたが、取り下げたという地権者もいた。また、井野南開発地区に隣接する自治会の代表も来ていて、周辺住民への説明も一切ないという。行政は、そんな状況はすぐに把握出来るだろうに、はじめて聞いた風に、地元への説明をするように組合を指導するなどと答える、いつものパターンである。
大型の組合による開発には、たいていゼネコンや開発業者が業務代行となる。それを行政も奨励してきた。1980年代に、一片の課長通達で確立された代物だ。高度成長期にはそれもよかったかもしれない。しかし、いまのような経済低迷期、少子高齢社会、環境破壊のツケが回ってきている社会にあっては、地権者、周辺住民の意向と環境や福祉、文化に及ぼす影響を丁寧に、慎重に調整し、環境保全に努めなければならないはずである。組合・業務代行の「言いなり」の行政は、環境問題や市民生活に将来重大な禍根を残すことになりかねないのである。
井野東の組合開発においても業務代行「山万」の「言いなり」がまかり通ってきた。全国的にも貴重な縄文後期長割遺跡の埋め戻し、都市計画道路の公共施設管理者負担金11億円の算定、開発面積が50㌶以下だと環境アセスメントを実施する必要がないことから、48.1㌶に抑えたこと、近々では、一事業者が3割以上の土地を持っている場合は助成できないという要綱を削除して山万が6割以上持っている井野東に5700万円の助成を行ったこと、などなど、明白な法令違反はないとしても脱法行為スレスレのところを行政は特定の企業の後押しをしているのである。
これからの開発にはきびしい目を
井野南の開発では、この流れを改めなければならない。まず、地権者の合意形成の過程を十分監視し、周辺環境への影響、資金計画、特に保留地処分価格の算定・市からの助成・県から下りる公管金の算定などをチェックして、その合法性や正当性を質していかなければと思う。
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