マイリスト「野の記憶―日記から」に「ディベロッパーに取り込まれる研究者たち」を登載しました
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお付き合いいただければ幸いです。
賀状にしては少し堅い話になりますが、年末にネット上で発見した学会報告がきっかけになって、どうしても書いておこうと思った次第です。
目次
1.山万の開発手法を「賞賛」する論文が・・・
2.論文と現実との落差をどうする
3.行政に取り込まれる研究者たち
4.ナイーブな学生の調査報告に出会う
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あけましておめでとうございます。今年もよろしくお付き合いいただければ幸いです。
賀状にしては少し堅い話になりますが、年末にネット上で発見した学会報告がきっかけになって、どうしても書いておこうと思った次第です。
目次
1.山万の開発手法を「賞賛」する論文が・・・
2.論文と現実との落差をどうする
3.行政に取り込まれる研究者たち
4.ナイーブな学生の調査報告に出会う
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コメント
内野光子様
明けましておめでとうございます。人文地理学会都市圏部会のブログで、年末にコメントを頂戴しました山下博樹です。先ほど、こちらのブログにある「ディベロッパーに取り込まれる研究者たち」を拝見し、私なりの意見を述べさせて頂きたいと思います。もちろん、このコメントは公開して頂きたいと思います。
まず最初に、内野様の原稿にあるA論文の存在については、私は承知しておりませんでした。今後の参考にさせて頂きます。また、私の研究部会報告についての内野様のコメントに対応して次のアドレスにある部会ブログにコメントを掲載しております。http://metropolitan.blog68.fc2.com/blog-entry-9.html#comment
それに加えて、本日掲載された内野様の原稿のうち、私の報告に関する記載に関連してコメントをいたします。
まず、この原稿にある「デベロッパーに取り込まれる研究者」の中に私が含まれていることに対して異議を申し上げます。A論文の著者や佐倉市や千葉県の学識者として様々な委員会などに参加している研究者については、私はコメントする立場にもありませんし、情報もありません。しかし、私は佐倉市、あるいは山万に関しては、佐倉市への2度の訪問と山万への約2時間の聞き取り調査のみで、その間に山万の事務所でコーヒーを一杯頂戴しただけです。原稿にあるようなパーティーへの招待や利害関係にある立場ではなく、純粋に学術的な見地からユーカリが丘に関心を持って、遠路鳥取から調査に訪ねただけのことですので、誤解のなきよう、お願いします。
また、私の専門は都市地理学といいます。近年は、主に地方都市の中心市街地の衰退に象徴されるような疲弊した都市の再生や、住み良い都市のあり方について関心をもち、海外の先進的な取り組みについて、視察や調査を進めています。そうした中で、最近明らかになってきたのは、公共交通の整備と利便性の高い徒歩で移動可能な街の中心部を上手く結びつけて行うことが大切であると言うことです。しかしながら、国内でこのような取り組みを行っている都市をそれまで私は知りませんでしたが、偶然にユーカリが丘のことを知り、関心を持って調査に訪れたのです。調査はわずかな時間の合間を使ったものでしたので、上記のように短時間の聞き取り調査とそこで得た資料が中心で、論文としてまとめるためにはもちろん不十分ですが、研究部会の話題提供としてその一端をご紹介しました。研究部会のブログはその要旨を公開したものです。私たちの研究視点は、「21世紀に相応しい都市のあり方の検討」にあります。研究には、通常統計データや地図資料などの客観的な資料を用いて、公平な立場から学術的な判断をしています。今回は、山万の資料を用いましたが、土地利用やユーカリが丘線の開発状況などについて、採用しました。内野様の指摘する「住民との協働」については、ご指摘の通り、十分な確認をせずに報告しましたことは認めます。しかしながら、私たちの研究スタイルは企業や行政と住民とのナイーブな関係について取り上げることが目的ではなく、いかに都市計画的に持続可能なまちづくりであるか、という点に焦点があることをご理解ください。よって、住民やNPOが街のために様々な取り組みを行っていることは事実のようですので、私は肯定的に評価したいと思っています。
こうした様々な点からみても、いくつかも点(なぜ高層ではなく、超高層マンションの建設なのか?なぜ電波障害対策が遅れたのか?など)で疑問は残りながらも、その全体的なコンセプトは都市計画的には高く評価されるべきものだと思います。これは、企業としての山万が素晴らしいというのではなく、ユーカリが丘のまちづくりが優れているという意味においてです。私が他の研究者から聞き及ぶところでは、山万が他の地方の多くで行っている開発手法は、ユーカリが丘とは全く異なるそうですから。ユーカリが丘に対する評価は、私個人の意見としてだけではなく、より専門的な方に伺っても、ユーカリが丘の事例は広く知られているそうです。
これまでの長期間にわたって、行政やデベロッパーの手法に疑問を感じながら活動をされてきたことに、私は敬意を表します。内野様たちの活動は、健全な自治体の維持には不可欠だと私も思いますし、今後のご活躍を陰ながら見守りたいと思います。しかしながら、私の立場である学術的な面からの評価としては、やはり「ユーカリが丘は持続可能性の高い街に発展しつつある」ことを、私は内野様にご理解して頂きたいと思います。私たちのように外から見る人間と、内野様たちのようにそこに住む方々とは、当然いろいろな問題に対しての感じ方も異なりますし、その深刻度・温度差も違います。しかし、私たち多くの研究者は企業や行政の御用学者としてではなく、公平な立場から広く社会に役立つ研究をしたいと思っております。どうぞご理解を頂きたいと思います。宜しくお願いいたします。
投稿: 山下博樹 | 2007年1月 5日 (金) 01時21分