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2007年6月 8日 (金)

首相夫婦の、あの全面広告はナンだったの?

今年のバラは、どこのお宅でも勢いがいい。わが家では夏ツバキと山ボウシが高いところから花をつけはじめた。山ボウシは「花」というものではないらしいのだが。

6月5日の朝刊を見て驚いた。「環境の日」だそうだ。購読している3つの全国紙のどれにも、「電球から日本を明るくしよう。」なる安倍首相が奥さんと並んで登場する全面広告が載っている。その広告主は「地球温暖化対策推進本部」、要するに、我々の税金であの寝ぼけたような広告が打たれたのである。一気に目がさめた。動いたお金、広告費は?

その日の朝刊のトップ記事は、社会保険庁の不明年金記録5,000万件の照合を1年間で完了するという、なんとも信じがたい政府の対応策であり(毎日・東京)、それを参院選の重点公約にする(朝日)というものであった。同じ日、ドイツに旅立った安倍首相は、6日から始まるサミットで環境問題での主導権を握りたいと記者団に語っていたが、各種の世論調査で安倍内閣支持率が下がるなか、その挽回策とでも思っているのだろうか。第一、この全面広告は、居間の明かりを電球形蛍光ランプに替えようとしている安倍首相、それをにこやかに見守る夫人という構図なのだが、まったく生活感のない空間の二人から届くメッセージといえば、まさに「モッタイナイ」「この紙がモッタイナイ」、「温暖化促進」に尽きる。参院選へのイメージ戦略とすれば、これって公費を使っての公職選挙法違反なのでは?

思えば、2004年の年金未納問題ってナンだったのだろうか。国民年金法改正の国会審議中に、いわゆる議員たちの年金保険料未納問題が浮上、与野党未納者続出のなか、議員年金という特権的な制度が国民に広く知れ渡るところとなったのが、そこは改められないまま、6月5日に法律は成立した。オロオロする政治家たち、連日書きたてた新聞、未納政治家に怒って見せたワイド番組のキャスターやコメンテイターたち、あれはいったいナンであったのか。20047月鳴り物入りで長官に迎えた村瀬清司(損保ジャパン副社長)、企業の論理?とかで保険料納付率を高めよとの声で進められたのが、2006年、全国的に発覚した社保庁自らの保険料不正免除であった。要するに、納付率の実態が変わらないのに、分母の数字を減らすべく、申請もしないのに免除をしてしまうという手段に出たのだ。この責任って誰が取ったんだっけ。そして、今年の3月に閣議決定されたのが社保庁改革。社保庁を解体して「年金事業機構」にするという国会審議の最中に、何千万件の中に浮いた年金記録により「消された年金」問題が発覚した。時効撤廃特例法や24時間相談窓口、たんなる看板の付け替えではナンの解決にもならないことが明らかになった。

メディアによる政府批判は、もう不可能なのだろうか。この全面広告以後、広告に触れる新聞記事は見出せない。新聞社にとって政府は、大事な大事な広告主というわけである。一つだけ、6月7日『朝日新聞』、やくみつるの一こま漫画「昼行灯だって困ります」(新聞広告と同じ構図で、安倍首相が行灯のなかに立ち入って「ぼーーー」と広告と同じポーズをとっているものだ)があった。安倍の「鈍感さ」をやんわり皮肉ったものだろうか。メディアの音なしの構え、スポンサーである政府批判の回避は、もうここまで来てしまったのだろうか。

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