「自治会費からの寄付・募金は無効」の判決を読んで―自治会費の上乗せ徴収・自治会強制加入はやっぱりおかしい
1.高裁の無効判決とは―希望が丘自治会の場合
8月24日、大阪高裁は、赤い羽根共同募金や日赤への寄付を自治会費で徴収できるかが争われた訴訟で、「事実上の強制で思想、信条の自由を侵害する」として自治会の決議を無効とする判決を言い渡した。この判決には、数年前の自治会役員当時のことを思い起させられた。会計担当だった1年目に、自治会費とともに募金や寄付、社会福祉協議会会費を班長さんに集金してもらうことに抵抗を覚えたのだった。あらかじめ金額が記入された領収書をもって募金や寄付を集めるなんて、やっぱりおかしいと。今回の判決について地元の新聞は、全国紙よりもやや詳しく、つぎのように伝える。 甲賀・自治会費訴訟で高裁判決 赤い羽根共同募金など募金や寄付金を自治会費に含めて強制徴収するのは違憲などとして、滋賀県甲賀市甲南町の住民5人が、加入する希望ケ丘自治会に、募金や寄付金分を会費に上乗せした決議の無効などを求めた訴訟の控訴審判決が24日、大阪高裁であり、大谷正治裁判長は「決議は憲法の思想、信条の自由を侵害し、民法の公序良俗に違反する」と一審判決を破棄し、決議を無効とする住民勝訴の逆転判決を言い渡した。 数年前まで、私たちの自治会では、毎年5月頃、新班長さんは、自治会費前期分(1800円)と日赤への「社資募集」に応えて1口500円、社会福祉協議会会費500円の領収書を持ち、各戸をまわっていた。秋になると、自治会費後期分、赤い羽根共同募金、年末には歳末助け合いの募金を班長さんが集約する仕組みになっていた。夏祭りの参加費800円もあった。班長はまさに1年を通じて「集金人」となる覚悟を余儀なくされた。 それまで、私は、日赤などへの寄付は個人的に断っていたが、毎年、班長さんにそれを言うのにはかなりの勇気が要った。一緒に役員となった人たちのなかには、当地に引っ越してきて、自治会が領収書をもって寄付を集めるのを知って驚いた人、ボランテイアの精神に反すると怒る人もいた。そして、私の役員2年目のとき、役員会や班長会議で議論の末、日赤支部からの回覧文書を自由意志の寄付であることを強調するものに変えてもらい、社会福祉協議会会費についても自治会独自の文書を作成して、丈夫な封筒を用意して、回覧方式・手渡し励行での「募金」に変更した。同時に日赤社員や社協会員になりたい人の道も残した。班長さんはもちろん、多くの会員からは「よくやった」と励まされたのだが、なかには、日赤の活動や福祉活動に自治会が積極的に協力しないのはけしからんと抗議してくる会員もいた。それから数年、その方式が定着し、募金総額は徴収時代よりももちろん減ったのだが、ちょうど半減したあたりの額で横ばいとなっていた。 要するに、お金は必死に集めるが、その出口たる支出については曖昧な点がいくつも出てきた。会員でないと社協のサービスが受けられないなどと、人件費の大方の1億近くを市からの助成金でまかなっている社協がいうことではない。そんなルールを持つ社協は県下でも皆無であったのだ。自治会の有志で、市の担当課にこんな社協に人件費助成や委託費を出すのはおかしいと抗議をしたところ、いつのまにか移送サービスの会員資格云々は沙汰ヤミになった。しかし、その後も自治体と社会福祉協議会の癒着振りは続き、「市民協働」をかかげて、地域の自治会を含めた諸団体を束ねる「まちづくり協議会」の核に社協を据えているのである。自治体の仕事を社協に丸投げした格好である。少なくとも自治会が社協に束ねられる必然性はなく、自治体は、市民・住民の声を幾重ものバリアで堰きとめようとする意図がミエミエなのである。 今回の判決後、被告の自治会長は、自治会として日赤や赤い羽根に募金に協力することを前提としながら、「高齢者も多く、1軒ずつ各戸を回って徴収するのは負担が大きいという実情を裁判所は分かって欲しい」とコメントするが、町内会や自治会を通しての募金システムは福祉への善意とは無縁であり、建前からも、実態からも適切でなかったことを示していよう。 2012年5月21日補記: 以下をクリックしていただくと、最新の<募金・寄付><自治会><社協> <日赤>関連記事及びリンク先ががまとめて表示されますので、ご利用ください。 http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/cat20187440/index.html |
(補記)8月24日の大阪高裁判決は、自治会側から上告されたが、2008年4月3日の最高裁決定により上告棄却され、高裁判決が確定して、自治会の寄付の自治会費上乗せ決議は無効となった。2008年4月4日の本ブログ記事をご参照ください。
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