無計画な都市“計画”~千葉県佐倉市の場合も
井野東開発、組合解散は3年延期
宮ノ台の緑を虫が食い荒らすように開発は進められてきた。私の住いに近い、雑木林だった高台では、周辺の地区計画では許されない、敷地40坪ほどの小さい戸建が建ち始めた。また、旧集落の鎮守の杜八社大神があった地域には、5分の1ほどの境内のみを残して盛り土・切り土の末の造成地には14階のマンションが完成した。323戸という巨大なマンションの外廊下の照明が灯されると、住宅街の真ん中に「なぜ」と思うような異様な光景が展開される。そして、南側に回ってみると明かりが灯っている部屋は20戸前後か。入居が思わしくないようだ。連休あたりに少しは増えるのだろうか。このご時世だもの、ムリもない。これらの街区を含む約48㌶は、地元の開発業者山万が業務代行となっている井野東土地区画整理組合によって開発が進められている。2002年7月認可された組合の事業計画によれば、当初、今年3月には都市計画道路も完成し、組合も解散の予定だった。しかし、1.5キロほどの都市計画道路もようやくその予定地はつながったものの、道路工事の方はまったくの手つかず。仮換地指定は済んだが、保留地の売却も難航か、解散・精算にはまだほど遠い状態である。ともかく、事業期間の見直しによって3年間の延長が、3月13日付で認可された。
繰り返す変更、ずさんな認可~ 行政は市民の意見を聴いたのか
組合の認可以来、事業計画の変更は、今回で3回目になる。1回目の変更では、認可から1年もたたない2003年4月事業費約162億を90億に大幅な圧縮をした。土地の価格の下落は止まらず、保留地処分価格を105,875円/㎡を55,206円/㎡としたため、工事費を137億から75億に落とさねばならなくなった。
2回目の変更は、2005年4月井野長割遺跡(23,000㎡)が「国の史跡指定」になって、その保存のために道路・公園・調整池などの配置を変更しなければならなくなったからだ。
今回の3回目の変更は、事業期間の延長だけかと思ったら、なんと、佐倉市条例の3分の1条項をはずして、市は5,700万円を組合に助成金を交付したこと(本ブログ2006年3月15日、6月16日、2008年3月31日参照、不動産業者が3分の1以上所有している組合事業には助成しないという制限をなくした)、また佐倉市が約6億7千万円(33,200円/㎡×20,400㎡)で井野長割遺跡を買上げていることも記されている。これら2件はすでに予算執行済みでもあるのだが、縦覧(市民への関係情報閲覧公開)の対象とされ、関係市民は意見を提出できるというものだ。
これまでも、井野東開発については、都市計画法に基づく縦覧や意見提出、公述の機会があった。2000年8月の佐倉市の都市計画変更―市街化区域区分(線引き)見直し素案の公開以来、私も、これらの縦覧・公述、意見提出などに何回となく付き合ってきた。そのつど、味わう徒労感にさいなまれながら、少しでも暮らしやすい住環境を守りたいという思いが先にたち、諦めたくはなかったからだ。しかし、市民の素朴な疑問や意見に耳を傾けず、形だけの役に立たない縦覧制度や公述制度がまかり通っている。たとえば、都市計画道路予定地の買収金(公共施設管理者負担金)、助成金、遺跡買い上げ価格の算出基準なんて実にずさんで、事業者の言いなりのこともある、ということを知ってしまった(本ブログ2006年2月28日、3月7日、3月13日参照)。私たちの税金が適切に使われるためにも、引き続き目は離せない。さらに、妙なタレントの県知事就任、あの視線が怪しい知事に住民の気持ちはわかるはずもなく、ユーウツな日は続く。
なお、本ブログの「都市計画」関係の記事を時系列で列記した。土地区画整理組合・業務代行・公管金・自治会費などのキーワードでのアクセス件数はコンスタントに多い。試行錯誤の実践記録でもあるので、読者の方のご意見も伺いたい。当ブログの編集は未熟で読みにくいながら、「都市計画」で検索すれば、お読みいただけると思う。
<都市計画関係記事リスト>
・土地区画整理事業における住民参加―行政と業務代行のはざまで1・2(2006年2月26日・28日)
・道路用地費11億円はどのように決まったか―公共施設管理者負担金の怪」1・2・3(2006年3月7日・10日・13日)
・助成金は土地区画整理事業の延命装置か―佐倉市井野東土地区画整理組合の場合(2006年3月15日)
・区画整理組合による開発は企業主導と行政の後押し―<佐倉市都市計画見直し>説明会に参加して(2006年4月25日)
・区画整理組合への助成金はやはり業者への後押しだった―6月佐倉市議会の傍聴でわかったこと(2006年6月17日)
・佐倉市井野東・井野南開発はどうなるのか―千葉県都市計画見直し素案に対する公聴会に住民10人公述に立つ(2006年8月24日)
・堂本知事、千葉県都市計画公聴会って何ですか(2006年9月25日)
・佐倉市都市計画審議会、やっぱりおかしい―行政・議長の露骨な賛成誘導と議長の条例違反明らか(2006年11月19日)
・ディベロッパーに取り込まれる研究者たち(2007年1月4日)
・「ディベロッパーに取り込まれる研究者たち」へのコメントについて(2007年1月8日)
・ディベロッパーに取り込まれるメデイア(2007年3月21日)
・「佐倉市マンション紛争あっせん条例」ってこんなもの?(2007年8月4日)
・「自治会費からの寄付・募金は無効」の判決を読んで~自治会費への上乗せ徴収・自治会強制加入はやっぱりおかしい(2007年8月31日)
・道路は誰のために~佐倉市はなぜ車両通行止めを拒むのか(2007年11月24日)
・「考える街。ユーカリが丘」って、ディベロッパーは何を考えているの?1・2(2008年3月31日、6月4日)
・住宅街の真ん中に24時間営業のスーパーができる、大店法は何を守るのか(2008年9月6日)
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