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2009年11月 2日 (月)

美術館とカフェと~ノルウェー、デンマーク早歩き<6> ベルゲン美術館

1035分発のオスロからベルゲンへのSAS便は、搭乗ゲイトが変更になり、離陸が大幅に遅れたにもかかわらず、ほぼ予定通りベルゲン空港に着く。小雨のなか、乗り込んだバスの運転手にはまずホテル名を告げた。降ろされた広場前では、人群れとマイクの声に驚いたが、演説をしているのは女性党首という雰囲気で、正面の大きな画面にも映し出されていた。これは後で知ったことだが国政選挙が間近いのだった。いったい誰だったのだろう。そういえば、日本の選挙はどうなっているのか。娘からのメールによれば、麻生首相がまた失言をしたらしい。それに、家の近くの京成の駅前にまで演説に行ったらしいよ、と。当選危うしの2代目議員が招んだのでは。

ホテル前のフェスト広場に接した大きな池の端に3棟のベルゲン美術館が続いている。やや遅い昼食は、迷わず美術館カフェに決めた。窓から望める池の水面を打つ雨脚はまた強くなってきた。テーブルのセッティングがユニークで、空いているテーブルには、フォークとスプーンが羽を広げたようにセットされ、グラスの鳥が今にも飛び立とうしているようであった。 

ベルゲン美術館は、大きな三つのコレクションから成り立っているらしい。一つは中世のヨーロッパ美術が中心のThe city art collectionであり、一つは、R.ステナーセン(Rorf Stenersen,18991978)コレクションで、ミロ、ピカソ、パウル・クレーから現代に至るまでのインターナショナルなフロアとダールを核にしたフロアなどに分かれて展示がなされている。タワーのある、この美術館は今回大急ぎでしか見られなかった。比較的時間をかけて私たちが見たのは、もう一つのコレクションで、実業家R.メイヤー(Rasmus Meyer18581916)963点にも及ぶコレクションの一部だった。美術館自体もこの地に建造し、1924年にオープンしている。ノルウェーの絵画の歴史がたどれるような展示であり、各部屋には解説のプリントがノルウェー語と英語版の2種が用意されているが、その場で読める量ではなく、部屋によっては英語版がなくなっていることもあった。1階は、1819世紀のインテリアや家具が展示されている部屋も多く、ダール、グード、エッカーズベルクらのノルウェーの風景や暮らしを描いた作品が続く。2階に上がった踊り場には、イプセンの大きな肖像画(1896 年、Evik Werenskiold)が掲げられていた。17室には、先にもふれたH.BackerとクローグC.krohgの作品が集められていた。ここには、オスロの美術館では撮影できなかったクローグの“The Fight for Survival”1890)の異なったバージョンだろうか、もう一度出会うことができた。また、ムンクの前半期の絵画や版画が2021室に集められていた。初期の作品、Girl sitting on a bed(Morning,1884)  Inger on the beach(Summer night,1889) Sick girl(1892)など家族の死や病をモチーフとするものが多い。1890年に入り、パリモネやゴッホの印象派に出会い、スーラーやゴーガンにも影響を受けたらしく、Spring day on Karl Johan (1891)などはまさに点描だし、セーヌ川をスーラー風に描いた作品を先のムンク美術館で見てもいる。さまざまな手法を取り入れてノルウェー絵画からの脱却を試みていた時代という。このころ、マドンナも幾度となく描かれ、Woman in three stages (1894)Four age in life(1902)では、3世代―青年期・熟年期・老年期の女性、4世代―さらに幼年期の少女を一枚の絵に描く手法がとられている。これらの絵がどんなメッセージを発信しているのか、私にはやや不明確ながら、ムンクとも親しかったイプセンは男性や家庭から解放された「新しい強い女性」を描いていた時代でもあった。1900年代に入ると、しばしば滞在していたオスロの南東にあたる海辺の村、オースカーストランドでは、カラフルな衣装をまとった少女たちが、また橋の上の少女たちが描かれ始める。神経症を病み、療養しながらの後半期の制作も多くこの時期までのモチーフに拠るのではないか。

ベルゲン美術館にもまだまだ見残した名画は多い。
 いつまでも昼下がりのような夕方は、ここは見逃せないと、ベルゲン港の北側に沿ったブリッゲン地区へと出かけた。中世のハンザ同盟の隆盛を今に伝える木造の家並みは、奥行きも深い。様々な店や工房がどこまでも続く趣が魅力的だった。とある店で、私にしてはかなり思い切った値の毛糸のマフラーを買ってしまったのだ。

明日は、ベルゲンを離れて、フィヨルド観光のためフロム一泊の小旅行となる。

(上)クローク:The fight for survival

(下)ムンク:Four age  in life

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