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2009年11月 5日 (木)

美術館とカフェと~ノルウェー、デンマーク早歩き<7> フィヨルドヘ

ベルゲン鉄道からフロム鉄道へ

西向きのホテルの部屋から見たベルゲンの日没は9時、街のざわめきは深夜に及んだが、朝は意外と早いのに驚く。私たちは、大きな荷物はホテルに預けて、ベルゲン中央駅に早めに向かう。日本の旅行社で用意したフィヨルド周遊券のバリデ-ションという点検の手続きを経なければならない。結構行列ができていたが、このオフィスのパンフレットで、ベルゲン鉄道が今年11月で開通100年になると知った。記念の絵ハガキも何枚かゲットして、840分ミュルダルに向かう。約2時間、列車は、Daleダーレ、 Bolstadoyriボルスターオイリ、 Evangerエヴァンゲルとフィヨルドの谷や湖水に迫ったり離れたりしながら進む。どの駅も似たようなオレンジ色の小さな駅舎、ヴォスVossから乗り込む観光客も多く、以後は各駅停車となり、長いトンネル(Gravhals)を抜けるとミュルダルだった。雪渓が残る峰々を見上げながら、数分の待ち合わせでフロム鉄道に乗り換えた。深緑の斜面が窓に迫り、眼下の湖水に安らげば、突然岩山が現れ、遠い連山には雪が光る、といった沿線の展望はめまぐるしい。赤い実をびっしりつけた木はなんというのだろう。しばらくして、列車は突然停まって、乗客が降り始めるではないか。背の高い車掌が降りた客を誘導しているので、私たちも木製のホームを進んでゆくと、そこには思いがけず、目の前にすごい水量の滝がしぶきを上げていた。展望台の先まで進むとしぶきはもう雨のようで、床はびしょぬれで滑りそうでもあった。何段にもなった瀑布の右手にはかつての水力発電所の建物が見え、その先の崖の上では、薄物をまとった女性が踊っているような・・・、観光のために仕組んだことらしいが、これは少しやり過ぎでは?車掌の合図で乗客たちは再び列車に乗り込んだ。滝の段差は94mの由。あっという間の50分でフロムに到着した。幾筋かの細い滝を擁した山を背景に赤や朱の家が点在する集落こそ、フロム鉄道の終着駅。人口400人、年間の観光客3万人という村でもある。早めのチェックインをしたのは、正面のガラス張りの窓が目立つホテル・フレットハイムだった。波止場には大きな客船が停泊、すぐにフィヨルド観光に出かける人たちもいる。ホテルで一休みした後、昼食をと辺りをめぐり、結局バイキング方式のレストランに入った。あったかい紅茶がありがたかった。ホテルの夕食での日本人客は私たちのほか、やはり熟年のご夫婦だった。白ワインがほどよくまわった私の夜は早かった。

そしてフィヨルドへ      

周遊券の日程では、午後にフロムを発つ予定であったが、これ以上留まることもないね、と朝一番の遊覧船に乗ることにした。セーターは着込んだものの、薄い上着でもなお寒い。乗船前にお土産屋さんをひとめぐり、どうも気になったのが鉄道博物館であったが、もちろんまだ開館していないので、窓から覗いて鉄道100年の歴史に思いを馳せた。

争うようにして乗船した連れ合いは、甲板の先に席を取って手招きしているではないか。フィヨルドの谷の空気はめっぽう冷たい。留守をするので声をかけた隣家の奥さんが、2年前の北欧旅行の体験から厚手の上着は持って行った方がいいですよ、の言葉を思い出す。いっそう船室に入りたいくらいだったが、熱い缶コーヒーで陣取っていた。連れ合いは席のあたたまる間もなく、撮影に忙しい。地図で見るとノルウェーの西海岸からは一番長いソグネフィヨルドの、一番奥まったアウルランフィヨルドからナーロイフィヨルドへと船は進んでいる。迫る斜面、絶壁の岩、重なる山々を背景に、湖水のような静かな水面を滑るように船は進む。左右には、時折、頂き付近からのジグザグの滝、直接に水面に落下する滝、急斜面から岸にかけて家が点在する集落が見えたりする。集落の真ん中に教会と墓地が見てとれるところもあれば、船着き場付近に数軒の家しか見えないこともある。道路がない集落、夏季しか人が住まない農場もあり、村びとたちの営みを思うと気が遠くなりそうな世界だった。1時間余のクルーズを終えて降りたグドヴァンゲンではようやく日が射してきてホッとする。

 グドヴァンゲンは、フィヨルド観光船の寄港地、今はバスでナーロイ渓谷沿いにスタールヘイムに向かう出発点である。1140分発、乗客は156人、急こう配のジグザグを登り切ったところでバスは停まり、乗客らは、赤茶色の建物になだれ込む。ホテルの売店を突っ切ったところの展望台に案内される。眼下の渓谷と集落、ま向かいの山並みを堪能させてもらったサプライズだった。案内書によれば、これも観光客へのお決まりのサービスらしい。ドイツや北欧の王族たちに愛されたリゾート地だったという。

思いがけずヴォスの展望台にて

再び国道13号線をひた走り、オッペンハイム湖や幾つかの湖水を左右に、草原やスキー場らしい斜面が続く。正面の峰々の尾根には雪渓が光る。フロムを早く発った分、ヴォスで数時間過ごせそうだ。ロッカーに荷物を預け、まず昼食をと思うが、店がない。ホテルという気にもなれず、結局駅構内のカフェで済ますことになった。駅のホームの端にある陸橋には、ケーブルカーの矢印がある。階段も手すりもすっかりさびているわびしい橋を渡ると、傾斜地に点在する住宅、どの家も色とりどりの花を咲かせ、庭には、大きなパラソルを逆さにしたような放射線状の物干しに洗濯物がいっぱいであった。斜面の上の家々のメールボックスは、坂の上り口にまとめて設置されているから、郵便物はここまでしか配達しないのだろう。眼下には、線路と国道と雄大な山並みと湖水が見下ろせる。ケーブルの駅にはそれでも人はいた。56人も乗ればいっぱいのケーブルカーは無人運転で急傾斜に差し掛かると、大きく揺れておそろしい。山頂駅に着けば係員がドアを開けてくれて、なぜかホッとする。発着所付近には羊が放牧されているが、足元の大きな糞には要注意ながら、目の前に展けたパノラマには息をのむ。先ほど訪ねた教会が小さく見える。駅の周辺にわずかに続くヴォスの家並み、湖畔からゆったりした草原には何の競技場だろうか、土色のグラウンドが幾つも点在しているのがわかる。展望台でぼんやりしていると、何本かのケーブルカーをやり過ごしようやく下山、それでも、ひと電車早くベルゲンに帰れそうである。

(フィヨルド遊覧船から)

Photo_2

Photo_3

(ヴォス、ケーブル山頂駅展望台から)

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