美術館とカフェと~ノルウェー、デンマーク早歩き<8> グリーグの家へ
郵便局が見つからない
今朝のベルゲンは風が強く、公園の落ち葉は舞い、通学・通勤の人々は足早に歩いている。フロムで若干買い込んだ土産や旅の前半の荷物を送り返しておこうと、朝一番で宿にも近い郵便局に出かけた。ところが、地図で示されているあたりを何度回ってみても見当たらず、女子学生に尋ねたところ、従いてきて、との言葉に追いかけると、ビルの小さな入り口を示して、入れという。彼女はすでに先を急いで去って行った。ともかくそこは、どの店もまだ、開店準備に忙しい小規模のショッピングモールだった。エスカレーター脇の案内板にはたしかに郵便局〒のマークがあった。2階に上がってみれば、あったあった、9時オープンという。送料込みの日本行きのダンボール箱を買って、ホテルに戻った。ようやく、発送のひと仕事?を終えて、きょうは何が何でもグリーグの家を目指す。
歩けども、歩けども
案内書によれば、20~23、30、50系のバスであればよいという。下車駅Hopsbroenへは20分足らずで着いた。降りる客もなく、運転手のいう道を歩き出す。時々車や自転車とは遭うものの、歩いている人はいない。何の変哲もない田舎道をひたすら歩くが、“グリーグ”の文字はどこにもない。停まっていたトラックの運転手に、ガレージに車を入れる女性に、疾走する自転車を留めてまで尋ねてみるが、方向としては間違ってはいないらしい。途中、大きな立体交差のロータリーも見える。20分以上歩いたところで、ようやくGrieg Museumの看板があって、並木道をしばらく行ったところに人影と建物が見え、ほっとするのだった。1995年オープンの博物館にはいろいろな工夫もしてあって、外国人の私たちにも親しみやすい。私の好きな?年表の壁の前で、写真に収まる。グリーグの住まいには、ゆかりの家具や食器や写真などが展示されていた。
グリーグ(1843~1907年)は、ライプツィヒ音楽院では伝統的な作曲家はもちろん新しい作曲家についても学んだが、ノルウェーらしさを目指し、コペンハーゲンでは多くの作曲家やアンデルセンにも出会い、生涯の伴侶ニーナにもめぐりあう。後、クリスチャニア(現在のオスロ)に居を移し、ピアノ教師の傍ら数々の名曲を残す。「ペール・ギュント」はじめ、イプセンとの仕事も代表的な作品となっている。1885年、ニーナとともにベルゲンから約8キロのこの地に新居を構え、トロルハウゲン(妖精の丘)と名付けたという。晩年もチャイコフスキー、ブラームス、リスト、サンサーンスら、多くの作曲家と交流を深め、バルトーク、ラヴェル、ドビッシーなどには大きな影響を与えたという。
博物館には、イプセンの肖像画も描いているE.Wereckioldの作品やダール、クロ-グの絵も飾られていたので、学生らしい案内ボランティアに、画家たちとの交流について質問すると、「あなた方はアーティストか」と逆に尋ねられてしまう。湖の方に下っていくと、途中にコンサートホールがあり、その先に作曲小屋があった。若い女性から遠慮がちに写真を撮ってくれますかとデジカメを渡される。それならばと私たちも撮ってもらい、尋ねたところアメリカからとのことだった。カフェでの食事の間、ずいぶんと迷っていたようだが、連れ合いは昼のコンサートを聴いていきたいといい、博物館入館とコンサートチケットとのセットに交換してくる。それぞれリンゴケーキとワッフルとお茶で軽く済まし、先ほどのホールに入って、階段状の客席から見ると、舞台の奥の窓には、湖水と山が一枚の絵のようにおさまり、グランドピアノのシルエットが素晴らしかった。30人ほどの聴衆のなかには、作曲小屋で出会った女性もいた。今日のピアニストはRune Alverさんでやさしい声のおしゃべりも心地よく?癒しのひとときではあった。
帰りは、余裕のウォーキング気分で、バス停まで苦にならなかった。
ベルゲン大学とスーパー総菜売り場
夕方の5時過ぎにはホテルに帰り、夕食まではと散歩に出た。ホテルの横の大通りを上ると国民劇場にぶつかる。気ままに歩いているといつの間にかベルゲン大学のキャンパスに入ったらしい。街との境などないかのようだ。ヨハネス教会と向かい合っているベルゲン(文化歴史)博物館はもう閉館、ここではベルゲン鉄道開通100年記念展が開催中ではあったが、もう明日はベルゲンを発つ。
ベルゲン最後の夜は、気楽にビールと惣菜を持ち込み、ホテルで済まそうということになった。なにしろ、レストランではその支払い額の25%が消費税なのだ。近くのスーパーは大変な混雑ではあった。欲しいものをかごに入れてゆくのだが、スモークサーモンと白身のお寿司、すり身の揚げ物、マスカット、プラムにビールとミネラルウオーター・・・と、ややわびしい品選びではあった。それでも、食品は14%、ビールは25%の消費税を払ったことになる。ともども、満足の末、ひと眠り、荷物整理はまた後回しになってしまった。
明日は、最後の宿泊地コペンハーゲンへ飛ぶ。
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