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2010年3月13日 (土)

戸山公園から鬼子母神へ――箱根の山と本の山

一気に登る「箱根山」

箱根山通りは、かれこれ10年近く通い続けた道だ。国際医療センターへと数か月に一度の定期検診に向かう。帰路は、風がやや冷たいものの、ようやく晴れたこの日、初めて戸山公園へと入る。いつも急ぎ足で通り過ぎる、都営住宅1階の商店街の裏側の侘しさは格別で、店を閉じて久しい幾軒かがあった。敗戦直後の1949年、明治以降陸軍用地であった一帯に戸山ハイツと呼ばれる団地ができ、1970年代にいまの高層に建て替えられた。この公園自体は、17世紀の半ば造られた尾張藩の下屋敷で、水戸の偕楽園に並ぶ回遊式名園の跡だという。きょう目指すのは、海抜44.6mの箱根山である。団地の棟を離れて木立の中へ入ると、戸山教会と幼稚園が見えてくる。さらに進むと、なるほどスリ鉢を伏せたような築山にきちんとした階段がつけられていた。登り始めると、背後からは、男子高校生の一団がすごい勢いで駆け上がって来る。そういえばあちこちに「箱根山駅伝大会」の順路表示がされていた。息づかいがだいぶ荒くなっている生徒たちがあとから、あとから「スイマセーン」と追い抜いてゆく。中には、手をついて這い上がるようにのぼっていく生徒もいる。近くの高校の体育の授業ででもあるのだろうか。起伏もほどよい、格好のマラソンコースなのだろう。頂上からは、新宿方面が一望できる。辺りには、桜の裸木が大きく枝を張り、芽吹きを待ちかねているようであった。50段ほどの階段を下りれば、野良猫にえさをやっているお年寄り夫婦、車いすを押し、押されているのは、その会話から息子と老いた母のようでもあったし、犬との散歩を楽しむお年寄りも多い。団地の住人の高齢化は著しいにちがいない。沈丁花や越前水仙の香を楽しむのもつかの間、車の往来の激しい早稲田通りに出る。ようやく念願の「箱根山登山」を果たすことができたというわけだ。

路面電車で鬼子母神へ

きょうの帰り道には、もう一つ寄りたいところがあった。鬼子母神近くというか、むしろ南池袋、明治通りにある「古書往来座」をのぞいてみたかったのである。家の中の本がなかなか片付かないので、買い取りを相談してみようかと思い立ったのである。まずその前に、早稲田大学南門前の「高田牧舎」で昼食を済ませた。この店の独特のロゴでの店名を掲げる看板を見上げて、一度入ってみたいと思っていたのだ。2時近かったので、客はまばら、何の変哲もないレストランながら、窓越しに眺める門を出入りする学生たち、門の際には数本の桜も咲き始めていて、どこか懐かしい風景であった。「牧舎」というのは、明治時代の創業者が麹町の放牧場からこの地に引っ越してきて、ミルクホールを開いたことに由来するらしい。ランチはどれもフライやソテーで、中高年向きとはいえないが、グルメ情報では、やや割高感があって学生よりも教職員の利用が多いようなことが記されていたのを思い出す。なるほど、お年寄り夫婦は、食後、二人で薬を取り出して服み、ともにしっかりと帽子をかぶる散歩スタイルであった。大隈講堂の左手、成文堂の路地を入っていくと、「角帽」の大きな看板、水野帽子店というのがあり、棚には角帽が重ねられることなく等間隔で並んでいた。商売として成り立つのかな、と余分な心配もしながら、大通りにつきあたり、左折すると屋根のある都電のホームが見えてくる。久しぶりの路面電車、一律160円。鬼子母神までは、面影橋、学習院下をへて三つ目である。始発から20人ちょっとで満席となった。鬼子母神で下車後、矢印に沿って進んだのは、ケヤキ並木の参道だが、両脇は普通の住宅で、壁や屋根にぶつかるケヤキは、どれも相当の古木で、太い幹だけが残されているものもあった。境内の駄菓子屋は江戸時代からで、上川口屋の看板をあげている。隅にある句碑はと近づいてみると、作者が「苔人」とあり、もしやと裏面に回ってみる。「昭和37年、白炎社」とあり、御子息が建立されたらしく、河合苔人の句とわかる。昭和30年代になって、父は、河合氏が主催する句会によく出かけていた。池袋で 薬局を営む薬剤師であった父は、ドクダミの別称「十薬」という俳号が気に入っていて、地元の「豊島新聞」の俳壇に自作が載るのを楽しみにしていた。たしか選者をつとめていらした苔人さんの句碑に出会うとは思わなかっただけに、きょうの散歩の収穫だった。鬼子母神から明治通りに出る角のビルの一階にあった!古本屋さんの「往来座」が。

店内をひとまわりしてみると、整然としていて見やすかったのだが、歌集の類が見つからなかったので、聞いてみる。「少しだけですが」と棚の前まで案内してくれる。子規、茂吉から塚本邦雄、馬場あき子、福島泰樹等が並ぶ。店のひとは、基本的には、発送費を持って下さるのなら、どんな本でも、何冊でもよいという。査定をした後、値のつかないものも引き取らせていただく、とのこと。私がいま手放してもよいと思うのは、図書館学・書道関係と短歌関係の一部である。天皇制と女性史、美術関係の本はもう少しの間?手元に残しておきたい!

家に帰って、あちこちに積まれたり、押し込まれたりした本の山を眺めては、途方に暮れるのである。

補記:昨3月13日の「毎日新聞」によれば、「箱根山駅伝」は、3月14日、新宿区若松地区16町会が合同で初めて開催するのだという。区内在住・在勤者の一般参加16チームと町会対抗14チームが参加、5人が4200mを走るらしい。(2010年3月14日)

Photo

箱根山通りに面した戸山住宅

Photo_2

戸山教会の右手奥が箱根山

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