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2010年4月30日 (金)

ノルウェーとデンマーク、日本との違いは何か(1)三井マリ子さんの講演会

 当初は、ノルウェーとデンマーク、フィンランド、スウェーデンなどの位置関係など曖昧で、ノルウェーとデンマークをよく取り違えていた私だったが、昨年、ノルウェーとデンマークの急ぎ旅をして以来、少しずつだが、関心を持つようになった。急ぎ旅の顛末は本ブログにも登載した。最近、関連の二つの講演会に出かけたので、報告してみたい。

1.三井マリ子さんの出版記念講演会

4月27日(火)夜7時から、南麻布のノルウェー大使館で開催されたのは、「ノルウェーを変えた髭のノラ―男女平等社会はこうしてできた」という三井マリ子さんの講演だった。

最近、ある集会で三井さんと知り合ったつれあいが、講演のタイトルとなった本(明石書店 20104月)の出版記念の講演とレセプションに大使館から招かれた。テーマがテーマなので、私もどうかと誘われ、二人で出掛けた。

 三井さんといえば、高校の先生から都議会議員を務められ、その後は女性問題について研究されている人という認識であった。私たちは、去年の夏、ノルウェーからの帰国後、ノルウェー大使館のホームページ上で、三井さんがノルウェーの政治や女性問題について幾つかのレポートをされているのを知って、私のブログでも紹介させていただいた。もう少し早くから読んでおけば、ノルウェーの旅もいささか趣が変わったかもしれなかった。女性の政治参加、女性の社会的進出は日本の比ではないことを知って、驚いたのである。

 三井さんはすでにノルウェーに関する本も何冊か書かれているが、今回は昨年9月の秋の選挙結果などをも踏まえての啓蒙書といえようか。講演を聞き、本を読んで、初めて知ることも多く、ノルウェーへの認識を新たにしたのだった。

三井さんは、講演の冒頭で、ノルウェーでは、3歳以下の子どもがいる母親の就労率は75%、日本の女性就労者は第1子が生まれると70%が仕事を辞める、という現実を指摘しながら、現代のノルウェー人の考え方の根底にある、インターネットのフル活用、ポストの代理や代行を促進するシステム、環境への柔軟性にまず言及された。

 続いて、女性の社会進出には「クオータ」制の重要性を説いた。つい最近までは日本の女性が置かれている状況と変わりがなかったのに、1970年から急速にノルウェーを変えたのは「クオータ」制であったと。そして、駆け足とはなったが、1970年代は各政党内での候補者数において4050%の女性を、1980年代は雇用において40%の女性を、1990年代は男性の育児休暇取得を90%に、2000年に入って会社の取締役に40%以上の女性をという流れで進んできた歴史を語る。そして、2009年の国政選挙では7人の党首の内4人が女性で、169議席のうち66議席を女性が占める(39.1%)結果を招来するに至ったと。さらには、1879年イプセンが「人形の家」を発表した時代まで遡り、1913年女性が参政権を獲得、1978年中絶決定権を女性が獲得して行った過程が語られた。

 また、あとで、今回の本『髭のノラ』にあたってみると、現在の日本で議論されている、夫婦別姓については1964年に、1990年には、王位継承権が女性にも認められているのを知り、興味深いものがあった。この本の分かりやすさは、先駆的な女性への著者自らのインタビューを通して、男女平等への歴史や女性政策が綴られているからではないかと思う。ノルウェー最初の女性首相ブルントラント、当時の民主社会党で、党内の決定機関は50%を女性にすること、クオータ制を初めて導入した党首ベリオット・オース、女性初の南極点単独踏破の探検家リブ・アーネセンらの体験が歴史となっていく行程を解き明かす。また、著者のたゆまない行動力にも感服、とくに最終章「100年遅れを挽回するには」では、三井さん自身の教師、都議会議員時代の体験や実践には説得力があった。1980年代後半から90年代にかけてのことである。

 最近の三井さんには、もう一つの大仕事が続いている。今年の330日、大阪高裁で、「豊中市男女共同参画推進センターすてっぷ館館長だった三井さんの雇い止め」による人格権侵害が認められた逆転判決が出たばかりだったのだ。判決は「20009月から20042月まで館長を務めた三井さんを排除しようとする一部勢力に行政が屈した」とし、原告三井さんへの人格侵害による賠償の支払いを命じた。被告は上告したので、今後は最高裁で争われることになり、法廷闘争は、当分続くことになったのだ。

 講演の日、受付に立つ三井さんは、参加者の「逆転判決、よかったですね」のねぎらいの言葉に、ガッツポーズで応えていた。「きょうは、その件については一言も触れはしないけれど、ありがとう」と笑顔はさわやかだったのを思い出す。

(追記)

この日の様子は、たくさんのスナップと共に、以下の三井さんご自身のブログ(5月29日)に詳しい。

50%プラス:lykkeilig.exblog.jp

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