インターネットの中の短歌情報~楽しく、役に立つ私流ネット検索(3) 出版社のホームページ、ブログの役割とは
さきに、短歌関係出版社としては後発の青磁社のHPを紹介したが、他の幾つかを概観してみよう。
⑧ながらみ書房
ホームページは、2009年7月30日の更新でストップしている。自社による前川佐美雄賞、ながらみ書房出版賞、ながらみ現代短歌賞の受賞者一覧と2006年以降の『短歌往来』の各月号の目次を見ることができる。なお、新しい出版情報は、「短歌blog往来」のブログでみることができるが、やはり少なくとも最新の『短歌往来』各月号目次は更新しておいてほしい。
⑨短歌研究社
『短歌研究』の目次の一覧は1998年から見られるようなっているようなのだが、最近の2・3年はともかく少し古くなると特集一覧となり、さらに目次を開こうとすると、エラーだったり、リンク無効だったりで目次にたどり着けない。平成元年からのバックナンバーはすべて在庫があるそうだ。自社の短歌研究新人賞、現代短歌評論賞、短歌研究賞の受賞者一覧が収録されている。一覧ながら、賞の沿革が若干分かって興味深い。ただし、選考委員、応募数までの記録はない。むしろ個人運営の①短歌ポータルの方が詳細だ。他に、出版物リストがあるが、多分在庫目録なのだろう。著者別の索引も整備中というが、これも対象が不明確で、もちろん網羅性はない。『年鑑』誌上で続けている「結社誌・同人誌主要論文一覧・抄出集」などのデータは貴重だが、それをうまく活用できないか。あと少し手を加えることによって、国立国会図書館、国文学資料館などが書誌作成の対象としていない短歌総合誌、結社誌、同人誌などの記事・論文目録の作成ができないか、と思う。
⑩角川学芸出版
『短歌』の出版元である。最新号の目次は見られるが、バックナンバーは、同社共通のバックナンバーサイトで2006年以降分が表紙の画像と在庫の有無だけが分かる。力を入れているのは角川短歌賞と角川全国短歌大賞らしい。前者の受賞者一覧と現在の応募要項が示される。ここのメインは、『短歌』編集部杉岡中編集長の短歌をめぐるブログ「流れる日々」で、編集部に出入りする歌人たちや編集長が参加したイベントなどを中心とした写真入りの日誌である。『短歌』誌上のグラビア、座談会、選考会などに登場する歌人たちの動向が伝えられる。いわば著名歌人、今をときめく歌人たちの笑顔と楽屋話で綴られている。今回初めて閲覧したが、宣伝とはいえ、こういうものが喜ばれているのかもしれない。しかし、短歌総合誌のホームページなり、ブログだったら、もっとほかにやるべきことはないのかと、ちょっとがっかりした。一方では、かつて『短歌』も担っていた『年鑑』における「短歌年表」作成のような地味な書誌的作業を放棄してしまって久しい。先行研究文献に目を通さない、あえて無視する論文やエッセイの書き手たち、手近で間に合わせる不心得を助長することにももなりかねない。
⑪短歌新聞社
月刊の『短歌新聞』『短歌現代』の出版元で、最新号の収容記事タイトルを見ることができる。『現代』の方には特集名のみの、2年間ほどさかのぼっての一覧がある。出版の歌集歌書の内、文庫や双書などのシリーズものは一覧となっており、新刊本や全歌集、「好評本」「古き良き本」などフロントページに載っているものは、著者、書名索引の対象らしい。また、一部ながら、解題が付されているので便利で助かる。多くの単行の歌集歌書となると確認できず、埋没してしまっている。(続く)
(『ポトナム』2010年7月号所収)
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