また、共同募金の季節がやってきた
本ブログの社会福祉協議会の在り方や自治会での募金や寄付の是非を問う記事に、アクセスが日ごとに増し、そして、いくつかのコメントや個別にご意見を頂くことが多くなった。その一部は公開している。自治会費に上乗せするのはどこが悪いのか、班長さんが集めるのはどこが問題なのか、問題にするような額なのか、一括徴収は集金の負担軽減できる望ましい方法ではないか・・・・などの意見も耳に入るが、私の基本的な考え方は、下記のいくつかの記事に示してきた。私の考え方は、寄付や募金は、自治会においても基本的に自由でなければならないから、少しでもそれを損なう要素が入る方式での集金や徴収をすべきではないというスタンスに拠って立つ。
・私の基本的な考え方:<2010年6月4日住んでいる町の「社会福祉協議会」の実態を調べてみませんか>他
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/cat20187440/index.html
(内野光子のブログのカテゴリー<寄付・募金>)
私たちの自治会でも、今年、これまでの慣例を破って、社会福祉協議会の会員募集は、回覧によって意思表示が問われ、班長が後で集金する方式だった。赤い羽根募金も班長が後期の自治会費と一緒に戸別訪問の集金方式となったのだ。私たちの自治会では、当初は総会決議によったが、7・8年前から、社会福祉協議会の会費、赤い羽根募金のみならず、日本赤十字社の社資、歳末助け合い募金も、募金袋の手渡し回覧が慣例となっていた。募金の意思、募金金額の自由を担保し、定着してきたところで、会員からの不満も聞いたことがなかった。
なぜ変更したのか、自治会役員会に問い合わせたところ、市の社会福祉協議会の年度初めの説明会で「募金は会費500円による方式のみの実施」と聞いてきたといい、赤い羽根募金は「自治会費徴収と同時の方がより安全で都合もよい」(回覧による事故について会員は報告を受けてはいない)という自治会判断で、過去の慣例やいきさつについては無関心なまま、班長会議で決めてしまったらしいのだ。これまでの事情を知っていた班長さんから質問が出たというのに、男性役員の多くは、これまでの募金方式などには関心が薄く、その意味するところが理解できなかったかもしれない。というより、各世帯にあって、自治会の募金などは、多くは主婦たちが対応しているので、知る由もないまま過ごしてきたのだと思う。自治会の対応としては、とても残念なことになったので、私は、役員会に班長会議でよく検討の上、募金自体の趣旨をよく理解して、少なくとも従来通りの任意性が維持できる方式に戻してほしい旨、申し入れた。
社協加入者氏名が回覧で近所にわかってしまう方式や班長による集金方式がなぜ望ましくないのかについて、私がこだわるのには、いくつか理由がある。上記のブログ記事と重なるところもあるが、簡単に述べたい。
自治会や町内会への募金要請は当然のことなのか
そもそも、各市町村に置かれた「一社会福祉法人にすぎない」社会福祉協議会が、自らの会員募集や寄付集めをはじめ、各都道府県の中央募金会が各市町村に置く支会・日本赤十字社支社などの募金を請け負い、さらに当然のようにして、各自治体と連携して自治会・町内会に募金協力を要請し、募金実務を丸投げしている事実である。社協の法的根拠は社会福祉法109条~111条にあり、共同募金については同法112条~124条、赤い羽根については日本赤十字社法などに根拠があるとされている。
自治会の募金協力の妥当性を、上記の法律と募金の一部の地域福祉への還元に求め、地域の住民が協力するのは当然である、という一点を強調する。
社協の会費収入の6割が地区社協に配分され、赤い羽根募金は都道府県の中央募金会からやはり6割が還元されているにすぎない。しかも、還元するための、配分するための人件費、事務費などが経費としてどれほど消えていることか。その実態を見てみよう。
たとえば、私が住む佐倉市の社会福祉協議会(2009年度)の場合、介護保険などの事業を行う公益事業、葬祭場などの収益事業を除いた、社会福祉事業における主な収支の概算は次の通り(『社協さくら』159号 2010年7月15日 平成21年度事業・決算報告より作成)。22年度の予算もほぼ踏襲しているといっていい。勘定科目の表現、まるめ方は異なるが、佐倉市社会福祉協議会のHPに掲載されている。
平成21年度社会福祉事業財政状況
(単位円、万以下切捨)
(収入) (支出)
勘定科目 |
(万以下切捨て)
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勘定科目
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(万以下切捨て) |
会費
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2195万
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人件費
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1億3668万
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市からの補助金
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9588万
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事務費
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776万
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共同募金配分金
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2591万
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事業費
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5141万
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委託金
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2845万
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助成金
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1765万
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他事業からの繰入金
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1240万
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投資有価証券取得
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3397万
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投資有価証券売却
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3400万
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(以下略)
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(以下略)
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合計
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2億7111万
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合計
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2億7091万
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収入の3本柱は、市からの補助金と会費、共同募金配分金である。市からの補助金は人件費への補助で、さらに加算されて1億3668万円が支出されていることがわかる。社協の主な事業は、地区社協支援、ボランテイア・市民活動支援、在宅サービス充実、災害時対策の構築と合わせて、社協会員拡大や共同募金への協力を自治会・町内会などへの説明会を開催、理解を求める、とある。しかし、支出の2分の1以上を人件費とし、5000万円の事業を行うというのでは、主客転倒ではないのか。その中で、毎年、有価証券の売却や投資を行っているが、こんな投資が社会福祉法人に必要なのか。貸借対照表によれば、現在1億4000万近い有価証券を保有し、2億4150万円の福祉基金、多額の退職給与引当金を留保している。その一方で、会費や募金の拡大とは、社会福祉法人の事業を逸脱してはいないのか。人口17.6万、市職員1000人規模において、さらに30人近い社協職員・嘱託職員を擁するための組織になってはいないか。たとえば、介護の現場で働いている人々と社協職員の待遇のかい離は何を意味するのだろうか。市民の税金や募金が直接福祉の現場に届くような仕組みに変えてゆく必要があると思う。
また、中央共同募金会から千葉県中央共同募金会を通じて佐倉市支会での配分は2002年以降は中央共同募金会の「はねっと」というサイトで分かるようにはなった。その内実については、私もすでに本ブログに書いているように(上記、私の基本的な考え方<赤い羽根共同募金の行方~使い道を知らずに納めていませんか1~3、2009年12月7日~9日)、数字的にも曖昧なことが多く、その配分先も恒例化した機械的なばらまきの部分も多い。それにもまして、中央共同募金会の財務についても人件費や事務費などの経費に着目してほしい。
このように、自治会や町内会を手足のように利用して集められた募金の使い方を調べてみると、自治会や町内会への募金要請に応じること自体、非常に疑問が多いといわざるを得ない。
自治会や町内会が集める募金は、ほんとうに任意と言えるのか
2008年4月3日、最高裁は上告棄却をし、大阪高裁判決の決定をみた。当時の新聞は次のように伝えた。
「赤い羽根共同募金」や小中学校への寄付金などを自治会費に上乗せして徴収するのは思想・信条の自由を保障した憲法に違反するとして、滋賀県甲賀市甲南町の「希望ヶ丘自治会」の会員5人が、同自治会を相手取り、会費の増額決議の無効を求めた訴訟で、最高裁第1小法廷(横尾和子裁判長)は3日、自治会の上告を棄却する決定をした。
自治会側の敗訴が確定した。
1、2審判決によると、同自治会は2006年3月、年会費を6000円から8000円に値上げし、増額分を寄付金に充てることを決議したが、原告側は「寄付は個人の意思に委ねられるべきだ」と主張していた。
1審・大津地裁は請求を棄却したが、2審・大阪高裁は「増額した会費の徴収は事実上の強制で、社会的に許される限度を超えている。増額決議は思想・信条の自由を侵害し、公序良俗に反する」と、増額は違法と判断していた。
(2008年4月3日20時25分 読売新聞)」
最高裁の決定となった大阪高裁判決文は以下の通りである(私は通常の判例検索では見出せず、以下のサイト他で入手した)。
・大阪高裁判決:
http://www3.shakyo.or.jp/cdvc/shiryo/detail_f.asp?category_name_text=&page=&category_id=7&unique_filename=&filename=&path_type=data&data_id=1387
(地域社会・ボランティア情報ネットワーク 全社協・地域福祉推進委員会)
この決定を受けて、全国社会福祉協議会と中央共同募金会はQ&A付の文書を都道府県の社協や募金会に下していた。これがさらに各市町村の社協や支会にも流されていた。
・「社協会費などの納入方法に関する考え方について」(2008年4月30日):
http://www3.shakyo.or.jp/cdvc/data/files/DD_01111455202620.pdf
(全国社会福祉協議会)
中央共同募金会の文書は、佐倉市の社会福祉協議会から入手したが、中央共同募金会のホームページからはいまだ見出せないでいる。文書は次のような形式をとる。
・滋賀県甲賀市「希望ヶ丘自治会」における自治会費の増額決議を無効とする大阪高等裁判所判決の確定について
平成20年4月8日
各都道府県共同募金会事務局長殿
社会福祉法人中央共同募金会事務局長本田章博
(本文)
担当・お問合わせ先 中央共同募金会企画広報部企画課
(別紙)自治会費の増額決議を無効とする判決について
全社協と中央共同募金会の本文の中身は、ほとんど同じなのだが、前者は上記サイトで読んでもらうとして、中央共同募金会の文書の中身について要約しておきたい。
本文(1枚目)の「…判決の確定について」では
(前略)確定した判決は、自治会として共同募金に協力することや、募金を含めて自治会費を集めることが違法であるとの判断を下したものではなく、自治会での意思決定を行うにあたって、本件決議が「募金および寄付金に応じるか否か、どの団体になすべきか等」について、「会員の意思、決定とは関係なく一律に、事実上の強制をもってなされるものであり、その強制は社会的に許容される限度を超えるもの」であったことが問題とされたものです。そのため、自治会には、寄付者の自発的な意思を十分尊重するよう一層のご配慮を頂くとともに、共同募金の趣旨や意義にご理解を賜り、今後ともご協力を頂きたいと考えます。(後略)
別紙においては、裁判の簡単な経過と4つのQ&Aが示されている。その一部を要約で示すと
Q:最高裁の決定により、自治会で共同募金を集めたり、自治会が一括で集めることとはできないのではないか。
A:共同募金に自治会のご協力を頂くこと自体は法的に問題ありません。(中略)会員が増額に応じない場合には、生活上不可欠な自治会からの脱退を強制されたことが問題とされた、あくまでも当該自治会固有のものであって自治会による共同募金への協力や会費と一括で集めること自体を否定したわけではありません。
Q:自治会の総会等で自治会から強度募金を拠出することを承認してもらっているが、取り止めるべきか。
A:自治会の総会などで同意が得られ会員に周知されているのであれば、取り止める必要はありません。
いずれの回答の末尾にも、共同募金への協力は任意であることを十分説明せよ、と繰り返し、しるされていた。
判決当時、私が、判決をどのように受けとめるかを質したとき、中央共同募金会や佐倉市の社協は、「あれは滋賀県のある自治会の個別の事例にすぎません」「自治会総会の決議の無効を判断したもので、自治会が集金することは何ら問題ありません」との断片的な説明を受けていた。当時、私は、この文書の存在は知らなかったが、ちゃんとマニュアルがあったのである。しかし、その中身は、上記の判決の趣旨を恣意的に、都合よく解釈したもので、曲解といってもよいだろう。
自治会や町内会という地縁団体で、募金や寄付を、会費上乗せ、会費と一括、会費と同時などの方法で集めること自体が、事実上の強制や半強制を伴うもので、任意性とは両立しないし、総会等での決議や承認によって任意性が不問に付されることも論理的ではなく、無理な「考え方」ではないか。
次の判決の末尾の結論部分をあらためて読み直せば自明のことと思われる。
本件決議に基づく増額会費名目の募金及び寄付金の徴収は,募金及び寄付金に応じるか否か,どの団体等になすべきか等について,会員の任意の態度,決定を十分に尊重すべきであるにもかかわらず,会員の生活上不可欠な存在である地縁団体により,会員の意思,決定とは関係なく一律に,事実上の強制をもってなされるものであり,その強制は社会的に許容される限度を超えるものというべきである。
したがって,このような内容を有する本件決議は,被控訴人の会員の思想,信条の自由を侵害するものであって,公序良俗に反し無効というべきである。
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