おかしいぞ、山万!~企業城下町で市民の自立が問われている
開発業者が全戸にお米1.5キロを配布~被災者支援の在り方
自治会の班長さんを通じて、1.5キロのお米が全戸に配られるという。今回の大震災被害の見舞い?として、この町の開発業者がユーカリが丘地区26自治会の各戸に、自治会を通じて配るというのだ。地震直後、山万社員が拙宅にも「お宅に被害はありませんでしたか」とまわってきた。これも開発業者の仕事と言えるかも知れない。ご苦労さんと声をかけた。 だが、震災1週間後、自治会を通じての、このお米配布の1件には、いささか驚くとともに、山万の要請を受け入れた自治会にも納得がいかないでいる。千葉県内の旭の津波被害、ようやく鎮火したというコスモ石油の火災、あまり報じられていないが各地での液状化被害、佐倉市でも倒壊や断水があった。ユーカリが丘地域では、ともかく広域の被害はなかったようだ。そんな中でのお米配りである。
このブログの記事でも何回か触れているが、私たちの町の開発は、「山万」という開発業者がほぼ一手に引き受けてきた。我が家が転居してきて22年になるのだから、開発はさらに10年ほどさかのぼるだろう。当初は1社の開発に拠ったが、この10年は、二つの土地区画整理組合を立ち上げ、開発を進めている。組合方式をとった区域の3分の2以上はすでに山万が所有していたので、当然のように2組合の業務代行となった。組合方式のメリットたる「公的支援」などを何度か受けている実態、その開発手法の強引さ、行政の放任ぶりを指摘してきた。
「余計なお世話」と片付けられるか
私の住む佐倉市ユーカリが丘地区の全世帯に配られるお米の正体はなんなのだろう。被災地以外でも食料品や生活用品が品薄となり、政府が買い占めを戒めているこの時期に1万キロにもなるお米をどこから調達したのだろう。もし、備蓄していたのなら、ほんとうに一合のお米、一個のおにぎりにも困っている被災地、避難所の被害者に届けられなかったのだろうか。私たちの町でも、現に、山万の子会社のいくつかが地震の被害を受けた家々の修理に追われている状況なのだから、それらの世帯で、お米に困っている人がいるのだったら、山万の社員が配布するのもよいだろう。しかし、自治会を通じて一律に1.5キロのお米配りって、なんなのだろう。一私企業が、自治会の班長を手足のごとく使ってのことである。少し前の内閣の交付金や現内閣の子ども手当が「ばらまき」「選挙目当て」と悪評高かったことを思い起こしてほしい。「ただほど高いものはない」の言いもある。
隣接で進行中の井野東土地区画整理組合工区内の新しい14階建てのマンションに住む友人は、最上階ではなかったものの、外出先から帰ったら棚やテレビが倒れ、飼い犬が家具の隙間に閉じ込められていたそうだ。また、私の住まいと同じ町内でログハウス風の家が立ち並ぶしゃれた戸建ての一帯でも、下水管が壊れて、トイレに汚物が溢れたお宅があったそうだ。そのあたりは、私たちが転居してきた頃にはすでに造成されていたはずだし、この2~3年に建造された建売住宅である。地元の農家の方の話では、かなりの埋め立てをしたところだとのことだった。確かに屋根瓦が落ちたり、ビルの外壁がはがれたりしているのは、私も目撃している。こうした被害の実態も、行政や自治会の集約がないまま、開発業者の聞き取りが先行しているようなのだ。ということは、被害状況の情報が、業者によって管理されていることを意味しないか。少し恐ろしい気がした。そして、お米無料配布の1件である。これが「カンブリア宮殿」で絶賛された開発業者のすることであった。いま、地元の開発業者として何をなすべきかの空気が読めず、逆に品不足の風評を高め、自治会に余分な仕事を強いたのではなかったか。
あてにならない行政・自治会
全国の自治体で盛んに進められている「まちづくり協議会」、このユーカリが丘地域でも、準備会の時期を経て、この3月27日に設立総会が開かれるそうだ。佐倉市の「市民協働の推進に関する条例」(2007年1月1日施行)に基づく「地域まちづくり協議会」の発想自体に、私はかなりの疑問を持っている。これまで私もかかわったことのある自治会協議会の例でいえば、こうした協議会という組織が、ともすれば市民の声をつなぎ、行政にその声を届けるときのバリアにさえなってしまうのだ。市民の声を束ねるはずが、行政のたんなる情報伝達機関になったり、開発業者の営業宣伝の受け皿になったりしていたことはゆがめなかった。
「ユーカリが丘地域まちづくり協議会」の準備会資料によれば、市民自治の本来の在り方を目指して、地域の連帯意識やご近所の助け合いが薄れているなか「防犯・防災・教育・環境・福祉などの課題解決のために家庭・自治会・社協・民生児童委員・学校・商店会・NPO・ボランテイア団体・企業・事業者・行政らが、それぞれの目的を尊重し合い、ともに穏やかに連帯・協力」するのが目的だという。組織概念図によれば、「自治会協議会・地区社協・商店会・防犯防災団体・民生児童委員・事業者企業・学校PTAが各団体の長が意見集約を図る」ことになっている。さらに、「協議会の基本的な考え方について」の7項目目に「ユーカリが丘を造成した山万(株)の開発理念と住民の期待との整合性を図り、協調したまちづくりを行う」とある。そして、案の定、今回のこの地域の災害対策本部は「山万」社屋に置かれ、事務局機能を担うことになったという。さらに言えば、予定されている市議会選挙において、この企業が全面的にバックアップしている候補者がいるのは、公然の事実だ。この候補者の選挙事務所開きでは、候補者の「山万」絶賛の声が聞かれた、とのことだ。
ユーカリが丘地区を走り、直近の私鉄駅への足である「新交通システム・ユーカリが丘線」(モノレール)が、11日の地震以降不通となってしまった。“環境にやさしい”山万自慢のモノレールが止まってしまって、その後の情報が全くない。本数が少ない代替バスが走り出したものの、ガソリン不足で、各戸の車が十分に利用できない中で、このインフラの復旧の見込みがない方が住民にとってはよほど深刻であろう。1.5キロのお米よりもこちらが先と思うのだが。
さらに残念ながら、ふだん防災訓練に熱心な自治会内の「自主防災会」の声がとどいてこない。地震後、余震が恐ろしく、指定避難場所の中学校に駆け付けた友人によれば、防災委員の一人も待機していなかったそうだ。
お米1.5キロと侮ってはいけない。企業城下町で、市民の自立が問われている。
*ちなみに、先ほど配布された自治会資料によると、670戸分計1000キロ余のお米が自治会館に届けられ、いま、小分けにして配布中である。そして、山万社長から自治会会長あての文書には「弊社といたしましては、平素よりユーカリが丘の街づくりにご理解とご支援を頂戴してまいりました皆様とこの困難を乗り越え、さらにより良い街づくりを進めさせて戴く決意を新たにしているところであります」とあり、配ったお米は、山形の生産者の某氏から分けてもらった「庄内産はえぬき」とのことで、「些少ではありますが、アクアユーカリ特別招待券(2枚)とともにお使いいただきたくご案内申し上げます」とあった。当自治会の班長会議では多数決で配布が決まり、不要の世帯は返してもいいということになったそうだ。
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コメント
全く同感です。ユーカリが丘駅のエスカレーターは止まっておりますが、今朝、歩道陸橋へのエスカレーターは無人なのに動き続けていました。山万へ連絡しておこうと思います。市民目線で頑張ってほしいものです。
投稿: 2525 | 2011年3月29日 (火) 09時04分
gardenさんへ
この地区にも、お身内や友人が被災されて、すでに引き取られた家庭や物資の送付・訪問など支援に苦慮されている方々の情報が日に日に増えています。そういう中での一律「米配布」をする山万の企業センスへの不信感が募ります。
そしておっしゃるように、これに協力した各自治会にも同様に義憤を感じます。年度替わりの一番忙しい時期に引き受けた役員、それに班長さんたちにはもう少し頑張って断ってほしかったです。
自治会は、こういう時こそ、地域の被害状況を即座に調べ、買い物や移動などに困っている方々を支援する態勢を整えるべきでしょう。ご近所でできること、ただちに市役所や企業にに実施してもらうべきこと、県や国に動いてもらわねばならぬことだってあるというのに、動いている気配がありません。鳴り物入りで立ち上げ、訓練には嬉々として立ち働く自主防災会が今回の震災で機能を果たしている様子が見えないのは残念です。いまは個人的にできる支援を細々としながら、この状況を越えていきたいです。
投稿: 内野 | 2011年3月25日 (金) 11時25分
初めてこちらに伺いました。
私も同じ地区に住んでいますが、たまたま20日と21日に留守をしていたので、22日に班長さんがお米を持って我が家にいらしたときは、とても驚きました。
お米1.5キロを頂く理由が分からなかったし、被災地の悲惨さを日々テレビで目にしているのに、どうして私たちがお米給付を受けなければいけないか、理解に苦しみました。
私はいただきませんでした。
いただく理由がないし、(山万さんのやり方は)筋が違うと思ったので。
大量のそのお米があったら、被災地に送るべきです。
後で電話で理由を伺いましたが、被災地には別途お米を送るという、山万さんの説明でした。
それでもおかしいです。全部送るべき。
米を買うお金があるなら、募金としてすべて寄付すべき。
「住民の中でお米に困っている方がいらっしゃったので、一部の人だけだと不公平になるので、すべての方に配布させていただいた」とそういうお返事を山万さんからいただきましたが、間違ってるとしか思えませんでした。
さらに情けないことは、私が班長さんに返したお米を、その班長さんが嬉しそうにもらっていったことです。平気で3キロを食べるんだって、とても驚きました。
一軒ずつ配って歩いて大変だったとは思います。
でも、浅ましくて泣けてきました。
皆さんがそうだとは思ってないけど、あんなに悲惨な状態の現地の様子を毎日テレビで見ていても、目の前のお米には手が出るんだ、と本当に情けなかったです。
配布に賛成した町内会にも不信感が残っています。お米は山万さんに返せることへの詳しい説明は、班長さんからは受けていません。
私の弟は宮城の海辺に住んでいて、被災しています。高台だったので津波の被害はかろうじて免れ家は残りました。でも、水も食べ物もなくてずっと苦しかったみたいです。お嫁さんの姉妹とご両親は津波で家すべて流されました。
今、母と姉妹たちとで手助けをしています。
今週から荷物が宅配業者さんのセンターまで届けられるようになり、本当に命をつなげられました。
水はどこでも手に入らず、水道水でもいいから送って、と言われています。
投稿: garden | 2011年3月25日 (金) 09時00分
グリ猫のママさんへ 班長さんはお気の毒です。ついでの時に山万に直接返却し、その真意を確認し、ご自分の意見を伝えるべきでしょう。佐倉市・ユーカリが丘地区のディベロッパーとして、いま何を優先してなすべきかを考えてほしいと思います。当地の関係物件の被害状況を明らかにし、修復に力を入れ、同時に市外・他県の被災者支援にも目を向けてほしいですね。
投稿: 内野 | 2011年3月24日 (木) 13時56分
丁度 重たいお米を持ってきてくれた班長さんと
『何でもらえるのかしら?』 空き部屋に被災者を招待する事が筋なのにと話していました。
その後のポストに 全戸配布の『見舞い品返却可能』欄を発見して・・・せっかく重たい米を配布してくれた
班長さんに返品は・・・・と・・・・玄関先にまだおいたままの状態です。
投稿: グリ猫のママ | 2011年3月24日 (木) 11時17分