中学校教科書の中の短歌と昭和天皇と(2)「昭和天皇」の短歌も登場
自由社と育鵬社の中学校の「歴史」と「公民」は、展示会に一緒した友人たちが閲覧していて、なかなか見られなかったのだが、大急ぎで撮った写真をアップしておこう。
①「新しい歴史教科書」(自由社)「昭和天皇―国民とともに歩まれた生涯~立憲君主的な立場を貫きつつ、国民の安寧を祈り続けた 無私と献身の生涯とは」
②「新しい公民教科書」(自由社)「もっと知りたい・天皇のお仕事」という2頁のコラム。
①には、最晩年の「思はざる 病となりぬ 沖縄をたづねて果たさむ つとめありしを」(1987年)の昭和天皇の「御製」を引用し、「沖縄への思い」を強調する。
③「新しい日本の歴史」(育鵬社)「国民とともに歩んだ昭和天皇」
④「新しい日本の公民」(育鵬社)「第2章私たちの生活と政治~日本国憲法の基本原則」表題頁には「天皇による内閣総理大臣の任命」の写真。
③には、「身はいかに なるともいくさ とどめけり ただたふれゆく 民をおもひて」(1945年)の敗戦時における昭和天皇の短歌を引用し、「終戦を決断された時の御製ですが、ここにも天皇の覚悟が見てとれます」と説かれている。マッカーサーとの会見や東京裁判の過程で見せる天皇の動揺は、その後の歴史研究や側近の日記などからも明らかになっている現在、かなりの無理が「見て取れる」ではないか。
また、1941年9月の御前会議で昭和天皇が読み上げたという明治天皇の御製「四方の海 みな同朋(はらから)と 思ふ世に など波風の 立ちさわぐらん」(1904年、日露開戦時)も登場、「戦争より日米交渉を重臣たちに示唆」した証のように綴られている。
この2社の教科書の天皇に対する記述には「国民のことを思う平和主義者」としての天皇、昭和天皇を強調するばかりで、天皇の政治的発言や行動が政府や軍にとってどんな意味と役割があったかに着目していない。心情を吐露したとする「短歌」によって責任を回避しているに過ぎない、としか私には思えなかった。
↓左側が「新しい日本の公民」第2章
天皇から任命を受ける鳩山前首相の姿が見える
「国民とともに歩んだ昭和天皇」(③「新しい国民の歴史」育鵬社)
「昭和天皇~国民ともに歩まれた生涯」(①「新しい歴史教科書」自由社)
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