町内の防災訓練に参加して
「防災訓練」って「炊き出し」?
私たちの自治会では、連休最後の日に防災訓練を実施した。私も友人に誘われて、今年度から自主防災会の委員にもなり、準備を進めてきた。今年は、大震災の直後でもあり、大震災当時、自治会や自主防災会として動けなかった、動かなかった反省を込めて、地域と防災についてじっくり考えようということになった。そのためには、広域避難所の防災倉庫に備蓄している、賞味期限が迫るアルファ米400食の炊き出しは、別の機会にするとの事務局提案に私は賛成だったが、委員会の多数決で、急遽、「炊き出し」実施ということになった。事務局の趣旨は、3・11の現実を踏まえて、地域の防災について真摯に考えるチャンスが「炊き出し」によって散漫になり、お祭り的になるのを避けたいからだったと思うが、かなわなかった。
市民は何が知りたいか
AEDの講習会はすでに別途済んでいるということで、防災倉庫、防災井戸の見学・説明、起震車体験の前に、市役所の(交通)防災課から話を聞くことになった。数年前にも、市役所職員の話は聞いたことがあるが、役所としての備蓄食品はほんのわずかにすぎないから、水を含めて、数日の家族分はすべて各家庭で備えるべし、直後の「公助」はあると思うな、というのが基調であった。最近では、佐倉市はもともと干拓や造成地が多いのだから何が起こっても不思議はないみたいな話を付け加えているらしい。
そんな話は、いたずらに危機感をあおるだけで、自治体が責任逃れをしているようにしか思えない。市民が災害に対して、具体的に何をどう備えたらいいのかには、あまり役に立たない。それではということで、自主防災会では、市の担当者と事前の打ち合わせをし、今回の大震災を通じて、市民の関心や現実的な不安はこれまでとは若干変わったのではないか、自治体は、それにどのように対応できるのか、を中心に話してもらうことになる。①私たちの住んでいる町の、今回の大震災による被害状況について ②市民への情報伝達・提供の現況と今後の整備について、などを知った上で、自分たちのできることを明確にしておきたいと思ったからである。
佐倉市の被害は、たとえば、液状化について
佐倉市は、今回の大震災被害の規模は、千葉県内では、旭市、香取市、浦安市に次いで4番目に被害の多かった市だということを強調するが、実際の被害の全貌が明らかになっていない。今回の話で市が用意した資料でも、私たちの住む地域の住宅被害などは自己申告だといい、学校などの公共施設の被害は、提供されたデータにはカウントされていなかった。現実に、戸建ての屋根瓦崩落、小学校体育館やコミセンホールの天井崩落、モノレールの橋げた損壊、ビルの外壁崩落、マンションの断水などについて見たり、聞いたりしている者にとっては、この地域での被害の全貌、市内の他の地域の状況を知りたいと思ったのだが、今回とて、必ずしも明確ではなかった。
たとえば、市のホームページ上「東日本大震災における液状化等の地盤被害を伴う被害状況図」が、8月12日になって公開された。ホームページ上では、佐倉市の地図に液状化しやすい個所、液状化の可能性のある個所などが色分けして表示され、実際の被害家屋のあった個所が点で示されている。しかし拡大するとぼやけてしまい、正確な位置がわかりにくい。市役所には、大きな地図が設置されているという。こんな地図の掛け図でも持参の上、説明をしてほしかったのだが、かなわなかった。あるメディアは、千葉県の液状化被害世帯数を第1位の浦安市3万0985世帯、第2位4504世帯、第3位香取市2545世帯・・・第10位192世帯と報じている(朝日新聞2011年9月13日)。液状化ではないが、50ミリ以上の雨が降ると、冠水して側溝のふたが流されたり、車庫に水が入ったりすることがある交叉路付近の対策を何とかしてほしいという質問もあった。雑木林だった西側高台が土地区画整理事業による開発によって、数百区画の土地が造成された。開発前は、けっして発生しなかった災害だったと、古くからの住民である質問者は嘆く。そういえば、数年前の宅地造成中には、ある豪雨に見舞われた夜中に、その高台の盛り土が崩れ、濁流となって6m道路を下り、沿道の住宅や交叉路周辺のお宅に流れ込み、住民を驚かしたこともあった。質問に応えた市の職員は「開発要綱にのっとって認可された開発のはず。被害が発生したら連絡はしてほしいが、自分は担当でないので、今は何とも答えられない・・・」という。
放射能汚染は、災害ではない?
また、佐倉市の放射能汚染被害については、「防災課ではよく分からない」というのが打ち合わせの時の返事だったらしい。しかし、市はすでに6月以来6回も、空間放射線量や地表の放射線量を測定している。東葛の各市と同様のホットスポットである佐倉市は、8月下旬の国の基準値の変更に伴い、9月に入ってようやく除染の方針を明らかにした。その手立ても決まったというのに、防災担当が「わからない」で済むのだろうか。
防災井戸について
防災井戸については、今回の防災訓練で初めて、丁寧に説明された。というのも3・11以降、水道水のセシウム検出をきっかけに、放射能の影響を受けにくい防災井戸の存在がクローズアップされた。佐倉市も基準内ではあるが「念のため、乳児には、水道水の使用を控えるように」という広報をした。しかし、すぐに使用できなかった防災井戸が続出したが、現在は19か所が稼働、今年度中に7か所、近年中に広域避難所のある39か所すべてに設置されることが決まった。一つ掘るのに350万円もかかるが、この件については市長が熱心?なので、来年度中にはすべての設置が可能かもしれない、と、この日の担当職員は説明していた。一年に1回の水質検査のほか、3月下旬以降は、塩素消毒、たまり水の放水、常時給水などの体制が整ったという。多くの参加者が、冷たい井戸水にのどを潤していた。
防災訓練の帰り際、ある参加者が、「きょうの市役所の話は、知らないことも多かったし、聞いてよかった」「ホームページなんかでは、なかなか探し当てられないもの、そんな情報をもっと知りたい」などと、感想は様々であった。
またまた、「タダの水」を配るというのだが・・・
私たちの町内の防災訓練の日は、この街のデベロッパーである山万が、駅前のホテルで「防災・防犯フェア」を開催していた。懇親会もあって、その席には、この地区全体の自治会の会長たちが招待されているという。自主防災会の折に、自治会長がふともらしていた。「山万から2リットルの飲用水を2本全戸に配布したいので自治会に贈呈する」といってきているがどうしたものか、と。防災訓練の時に配ればとか、餅つき大会の時はどうなのとか、ボトル引き換え券だったらねとか、という意見も出ていたが、山万はあくまでも全世帯に配布するのが目的だといっているそうだ。どういうこと?自治会に持ち込み、班長さんに配布させた、あの地震直後の「お米2キロ配布」の再来である。今度は1世帯2リットルボトル2本である。そんなものを配布できないと、すでに断っている自治会もあるという。私たちの自治会でいえば、650世帯だから1300本のボトル、班長さんの負担はお米の比ではない。この時期に、いったいどういうつもりなのだろう、企業の趣旨が不明である。自治会が民間の寄付を受けていいものなのだろうか。どうしてもというなら、社員が全戸に配るべきだろう。
山万が地域に配布したチラシによれば、「住民皆様への災害時備蓄水の贈呈」となっており、9月14日の山万のホームページの「お知らせ」によれば、災害対策などの考え方を同じくする利根コカ・コーラボトリングとの提携により「ユーカリが丘自治会協議会に加盟する全自治会(27自治会、約8000世帯)を通じて」「対象地区全世帯に防災備蓄水を提供することになりましたのでお知らせします」とある。「自治会を通じて」なのである。また、プレスリリースによると「ユーカリが丘地区、約8000世帯に、防災備蓄水の無償・常時提供の開始」と銘打って、「年1回」「2ℓぺットボトル2本」と明記している。続けて「東日本大震災における山万グループ災害対策本部の活動状況」の一つとして「食糧不足不安へのお米の提供」と表示されているが、その実態は、自治会の班長さんを通じて、「お米2キロを配布」させた一件だった。こういうのをメデイア戦略というのであろうか。
「デベロッパーと住民は家族も同然、社長の気持ちからお米を配布させていただいた」と社員が答える山万が、今年から毎年、自治会を通じて住民に配るという水は、タダの「水」なのだろうか。
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