「市民の声」のその後~地方自治の基本も情報公開から~
ごく当たり前のことなのだが、地方自治の根幹は「情報公開」だとつくづく思う。原発事故を語るにも「情報公開、じょうほうコウカイ」と念仏のように唱えるが、「原子力村」の隠ぺい体質や情報操作が今回の被害を大きくしたともいえる。身近であるはずの自治体の情報公開も進んでいない。
佐倉市における情報公開の不備の一端が「市民の声」の公開方法に如実に表れていることは、すでに報告した(2011年9月5日http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2011/09/post-ddc0.html)。
「市民の声」として、どんな意見や提案が、どれくらい届いているのかがまったく見えなかった。
佐倉市ホームページの右側「市民の声」 ⇒ 「今までに寄せられたご意見ご提案」 ⇒
「市民の方から寄せられた主なご意見・ご提案と回答の概要」 ⇒ 「分野別の件数」
ここでは、平成18年度(2006年)からの以下のように分野別の件数が記載され、
⇒ さらに「道路・交通」をはじめとする「分野」 ⇒意見・提案の表題と回答年月のリスト
⇒ 表題の意見提案と回答、にたどり着く。
最終更新日9月14日となっており、現在54件が見られる。それ以前は、52件であり、平成23年度に入って、すなわち、2011年4月以降、公開されたのは、8月27日更新の「航空機騒音について」1件(2011年4月回答)しかなかった。9月14日の更新で2件増えたことになる。半年たって3件追加といったペースなのである。こうした状況について、2010年、「『今まで寄せられたご意見ご提案』の即時公開」が「市民の声」に届き、同年9月に回答されている(受理日とホームページへの掲載の公開日は不明)。その回答は、次の通りであった。
「佐倉市では、市にお寄せいただいたご意見等のうち、市民の皆さまの関心が特に高いと思われるものについて、個人情報の保護を妨げない範囲内において、市のホームページ等においてその概要を公表するよう努めております。
市に寄せられるご意見等については、電子メールのほか、お手紙によるものも多いことから、内容の確認や編集作業が必要となり、即時あるいは短期間での公開は難しい状況です。
これまで、寄せられたご意見については、年度末に一括して編集作業等を行い、ホームページ上に公開しておりました。現在、市民の皆さまとの情報共有をさらに推進するため、更新期間の短縮も含め、情報提供のあり方について検討しているところです。」
「市民の皆さまの関心が特に高いと思われるものについて」とは、だれがそう判断するのかが問題であることは、先のブログ記事でも指摘した。今年の4月~7月に54件も寄せられたという「放射能問題」はいまだに1件も掲載公表されていないのは、「回答しにくい」から?か。9月の市議会で、国の基準も引き下げられ、いやおうなしに除染を迫られたので、その除染の補正予算が通ったところで、「回答」するのだろうか。
ただ、今回の更新で、新たなデータが公開された。最下段の「ご意見の処理状況一覧(平成23年7月末現在)」で、今年度に入って3件が公開と上述したが、この一覧によれば、4~7月の間に、合計282件受理したことになる。分野別の件数だから、味もそっけもない。どうして、こんな意見や提案が多かったと具体的に公表しないのだろう。「市民の声」に限っても、まだまだ、情報公開への道は遠い。しかし、以下の点が少なくとも改善された。いずれも、7月以来、市民の声担当者と秘書課長にしつこく要請していたことだった。
①一覧での内訳は、従来より細かい事項での分類となって、2011年4~7月の月別の件数のみが、公開された。
⇒受理総数は初めて公開されたが、従来の分野別と比べられないし、まだ、年間単位のデータを遡及して公表していない。
②従来は回答年月だけの記載が、回答の月日も記載された。
⇒一歩前進か、受理の月日、公開の月日の記述がない。
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今までに寄せられたご意見、ご提案
道路・交通 (5件)
公園・緑地 (6件)
防犯・防災 (3件)
子育て・福祉・健康 (10件)
教育・文化 (2件)
環境・ごみ (14件)
8月27日更新1件「航空機騒音について」(4月回答)
9月14日更新1件「自然エネルギーについて」(6月28日回答)
観光・産業 (2件)
税・届出 (3件)
その他 (9件)
9月14日更新1件「市民課にキッズコーナーを」(6月16日回答)
ご意見の処理状況一覧(平成23年7月末現在)
9月14日追加更新 (イタリックは、筆者の追記)
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上述のように、「市民の声」のホームページ上の公開の仕方に若干の改善が見られたほかに、「市民の声」の効用というか影響により、ホームページ上の情報公開が少し進んだ例がある。私は、7月以来、「航空機騒音」について、担当の企画政策課に問い合わせて、佐倉市上空を飛ぶ時間帯別機数など、いくつかの情報提供してもらい、7月27日、本ブログに「この夏、航空機騒音気になりませんか、佐倉市の上空は5分1機の低空着陸飛行」を掲載した。8月5日には、ご近所の友人たち3人で担当課に立ち寄り、騒音の現状と改善策を訴えた。8月16日には「市長への手紙」を提出した。状況は一つも変わらないけれど、次のような情報が、ホームページ上に公開されたのである。
① 7月27日、「市民の声」の「環境・ごみ」の欄に「航空機騒音について」という、ある自治会からの意見と2011年4月回答として掲載された。その回答の中身は、国と関係市町との協議会で改善の意見を述べていきます、というおざなりの回答と県や国交省の関係機関へのリンクであった。
② 8月22日、ホームページ左側「お知らせ」欄に「航空機について」が掲載され、現在の飛行ルート、問い合わせ先を掲載、「羽田再拡張事業の経緯」が平成12年(2000年)から現在に至るまでの経緯が年表風に記載された。現在の航空機騒音被害対策の遅れの弁解のようにも受け取れるが、それはそれで、市民にとっては重要な情報ではあった。こうした情報が、当初から関係自治体に流され、市民の関心を喚起すべきものではなかったか、と今にして思う。
数年前から航空機騒音について意見や質問が細々寄せられ、羽田空港が拡張された昨年10月からは徐々に増え、この春からの南風仕様の着陸に変更され、低空着陸飛行となってからぐんと増えている。 いくつかの「市民の声」が「市民の声」の情報公開への扉を少しでも押し開けたのではないかと思っている。
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