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2011年11月 4日 (金)

羽田空港の国際化から1年、佐倉上空の騒音は

 羽田空港にD滑走路が増設され、国際化の一歩を踏み出したのが昨年1021日、ちょうど一年が経つ。今年の春頃から、佐倉市、とくに志津地区の上空の航空機騒音が顕著になった。窓を開けていると、騒音でテレビの音声が途切れることもしばしば。また、夜10時を過ぎても赤い灯をともした機影が幾度となく爆音を響かせる。騒音が気になって寝つけないという友人もいる。私は、佐倉市の担当部署である企画政策課に、まず佐倉市における航空機騒音の実態を調査するよう要望したが、騒音という認識を拒もうとする。それでも苦情が多くなったせいか、822日「航空機(飛行ルート等)について」というお知らせをホームページ上に掲載した。ここでは、昨年10月の「羽田空港再拡張」後の飛行ルートの変更や再拡張に伴う近隣市町村と国交省との交渉経過などの概略をまとめているが、佐倉市上空における飛行実態や騒音についての独自の調査は一切おこなっていない。類似地区の「うるささ指数」を流用し、70デシベルという基準以下だという説明があるだけである。これもどこかで見てきたような役所仕事の構造である。放射能汚染問題の佐倉市の対応と似ている。

 すでに、この航空機騒音については、本ブログでも2回ほど書いている 。その記事へのアクセスは日ごとに増えているのは、騒音に対する住民からの苦情が殺到、千葉市などの自治体がようやく動き出したという報道がされるようになったからだろうか(『読売新聞』2011104日、21日、『朝日新聞』1021日、『毎日新聞』106日、21日『東京新聞』1022日などいずれも千葉版)。111日の朝、NHKテレビでも千葉市上空の騒音被害が報じられていたそうだ。9月末、私は、国交省東京空港事務所の環境・地域振興課に月別・時間別(毎月1日を当方から指定)の飛行便数調査を依頼していた。2週間たって届いた結果が千葉県から入手した数字と一部異なっていたので、再調査を依頼している。千葉県の数字がおかしいという。その調査の結果で、佐倉市上空の飛行便数や高度などの飛行状況の全貌がかなりつかめそうだ。

先の「航空機について」の説明にあるように、発着容量は現在の30.3万回/年から、3年後には44.7万回/年と1.5倍となる予定である。そもそも、羽田の再拡張が決まったのは、首都圏の第三空港建設案が「羽田空港再拡張」の方針に変更された20009月にさかのぼる。その後、国交省と周辺自治体との協議が続けられ、現在のような飛行ルートが決められた。この経過については、以下を参照してください。

http://www.city.sakura.lg.jp/010325000_kikakuseisaku/900kobetsu/030kotsu/index.html (佐倉市ホームページ「航空機について」2011822日)

 また、羽田空港のハブ化による便利さ・経済の国際競争力強化と住民の受忍限度とのバランスが問題だと思ったのだが、それだけではなく、飛行の安全性と日米の安全保障問題とも深くかかわっていることがわかってきた。住民がただ我慢すればいいという問題ではなかったのだ。

 昨年1021日の前日放送されたNHK時論公論「羽田国際化 安全の課題」(松本浩司解説委員)によると、新しくD滑走路ができて、図のように「狭い敷地に4本の滑走路が<井げた状>に並び、周辺に自由に飛べる空域も限られるため<世界でも例を見ない複雑な航空管制>つまり交通整理が求められている」ということで、南風仕様での着陸、離陸便が交差することが多くなり、300mの高度差の確保が求められているが、着陸のし直しなどでの若干の狂いで、ニアミスの危険性が増し、管制には高度な技術が要求されているというのだ。

 なぜ、そのような複雑な飛行になってしまったのかといえば、松本解説委員は、次のように述べている。

http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/63273.html

(NHKホームページ「時論公論・羽田国際化、安全の課題」20111020)

ふたつの理由があります。「空域」と「騒音」の問題です。羽田空港の西側にはアメリカ軍横田基地が使う広い空域があります。終戦後、連合軍が航空管制を掌握したのが始まりで、今も日米地位協定に基づいて米軍が管理し、民間航空機は事前に申請しなければ通ることができません。今回の羽田発着枠拡大に備えて2年前に全体の4割が返還され、民間機の飛行の自由度が大幅に高まりました。それでも伊豆半島から新潟県にまたがる広大な空域が残り、羽田を出発した航空機は東京湾で急上昇して、この空域の上を乗り越えて目的地に向かっています。着陸機は多くが東の千葉県側から進入していて、そもそも飛行コースを選択する幅が制約されているのです。

騒音の問題については、次のようにコメントする。

横田空域があることで航空機がはるか上空を通過するため、東京や神奈川などは影響が少なくて済んでいるという見方もできます。しかし着陸のコースにあたり騒音の多くを引き受けさせられてきた千葉県側の自治体は、発着回数が増えればさらに被害が大きくなるとして強く反対しました。千葉県などは国と10年に及ぶ協議を重ね、新しい滑走路の方向をずらしたり、上空を通過する際の高度をあげたり、さらに夜間は上空を通らないなどの騒音対策をとることを条件に、受け入れを決断しました。

 10年間、千葉県民は、このような経過は知らされないまま、過ごしてきたのではなかったか。少なくとも、上記各メディアの羽田空港拡張による騒音被害報道で、横田基地まで言及しているものは、NHK「時論公論」を除いては見当たらなかった。

 千葉県としては関係市町村の力を背景に国と交渉して、技術的に可能な限り通過高度を上げること、夜間海上ルート飛行枠を時間・便数とも拡大すること、そしてさらに横田基地全面返還を目指してほしいと思う。上空の飛行便数が確実に増加した佐倉市も、ぜひ独自にでも国と交渉をしてほしい。千葉市は少なくともそれを始めようとしている。しかし、佐倉市は、その前提として、まず、佐倉市上空通過の便数並びに高度・騒音の実態調査をした上で、現在は午後11時から朝6時までの夜間海上ルート飛行の時間帯の延長、便数の拡大を図ってほしい。そして、千葉県と言わず、国は、飛行ルートを分散するためにも、日米の安全保障関係を見直し、横田基地の全面返還を目指すための努力をすべきで、となると、佐倉市、市民としてなすべきこともおのずから明らかになってくると思う。

  これからの季節は、北風仕様が多くなり、高度は南風仕様の4000フィートから6000~8000フィートに上がるから、騒音は緩和されるが、この夏の騒音を忘れてはならない。

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