「生協」の民主的な運営とは~生活クラブ生協で体験したこと~
私の生協歴
名古屋では、市民生協の日曜班に入っていた。千葉県に転居・転勤してからは、日曜配達は見受けられず、生協には加入できなかった。一駅先のスーパーまで、週に一回、自転車で買い物に出かけた時期が7年間。仕事を辞めてすぐに加入したのが、生活クラブ生協のご近所の班だった。1週間に1回、5・6人のお宅の持ち回りでガレージを提供し、購入品を分け合った。1か月に1回、これも持ち回りのメンバー宅で班購入の計画を立てながらおしゃべりしたものだった。そして、班長になったときは1か月に1回、近隣の班長が寄る班長会に出席、さらにその班長会の代表になると、支部の会議にも参加する。私は1年間その代表のサブを務め、理事も出席する支部の会議に出た。戸別配達が可能になると、いろいろな事情で班から一人抜け、二人抜けして、全員戸配に移動、班は解散した。
千葉県での生協歴15・6年になる。この間、直近の駅近くにスーパーができたり、近年歩いて5分のところに小さな生鮮品スーパーができたりしたが、客数が伸びず、したがって品ぞろえも今一つで、主流は生協での調達で落ち着いた。
ところが、支部の会議に出ていた頃からも感じていたのだが、安心な生鮮食品を共同購入するという、生協本来の原点から、だんだんと事業を拡大、「ゆりかごから墓場まで」の多様な事業展開の様相を帯びてきた。衣料・雑貨はまだしも、ジュエリー、サプルメント・書籍・旅行・チケット・葬祭などの斡旋、保険・介護事業への出資、そして今年はそれに風力発電への出資が加わったのだ。毎週届く膨大な宣伝チラシ、なんとかならないのかとチラシの選択制や印刷物の回収を提案したこともあったが、実現できていない。配達用の袋と指定のビン類の回収だけはほそぼそと続いているのが実態だ。他の生協では、回収に力を入れているところもある。
減資手続きから垣間見る、その閉鎖性
今年、私は必要があって、すでに20万円ほどになった積立て出資金の一部の返還を申し出た。ところが、「出資金10万円は残してもらうことになっているので、それを割り込む減資はできない」と、受理してもらえなかった。なるほど、定例で配布された「減資手続要綱」の一行目に「積立出資金10万円を残し1万円単位で減資を行うことが出来ます」とある。これまで減資の必要がなかったので、読み過ごしていたらしい。しかし、これっておかしくない?と思い、総代会の傍聴の折の資料に載っていた「定款」を見たが、そんな記述はない。あるのは脱退時に出資金全額返還(13条)とやむを得ない理由があれば1年に1回、90日前の予告によって年度末に1000円を残しての減資が可能であること(17条)しか書いていなかった。「10万円を残して」という根拠を尋ねると、1992年の総代会の決議に拠る、という。私が加入する以前の話である。そんな昔の決議が生きているのかも疑問だったが、「減資手続要項」にもその根拠は明記されていない。現在の「加入申込書」にも出資積立金が10万円に達するまでは減資できないとも書いていない。「10万円を残して」は組合員へのお願いのレベルで強制力はないのではと思い、支部の事務局員、理事ともやり取りをしたが、「ルールはルールだから、守っていただく」の繰り返しだった。「どうしても減資額に見合うお金が欲しいなら、引落口座をゼロにして、引落不能にすればこれまでの出資金から相殺されますよ、そうでなければ脱退したら全額戻りますよ」と、脱退の意思がない組合員には、ちょっと信じられないことをいうのだった。
1992年の決議というのであれば、当時の総代会議事録のコピーをとり寄せてみた。「資金結集活動」の一環として、自己資金不足分は銀行借り入れを行うが、配送センター建設のために、土地250坪、建物250坪、各坪単価100万円というラフな計算で、総計5億が別途必要なので、「減資の際の最低積み残し額を5万から10万円に引き上げる」という文言があった。その根拠は「5億÷関係組合員5000=10万」として示されていた。それから19年間、年々減資の際はこの「縛り」が維持されてきたらしい。
出資金の行方は
「生活クラブ生協千葉」は2010年度実績で、組合員は約38400人、供給高83億、出資金34億、自己資本率80.2%、短期・長期の借入金なしで超健全経営は維持されている。さらに、貸借対照表によれば、負債・純資産合計の中の出資金の割合は、68パーセントであって、純資産/負債(39億9600万/9億8600万)比率が4.05であった。が、これが組合員全体に還元されるのではなく、他の事業拡大にまわされている傾向が強いのだ。近年、関連法人の社会福祉法人生活クラブと生活サポートクラブなどへの短期・長期の貸付金が膨れ上がって4億を超え、2011年度からは、生活クラブ風車建設のため、一般社団法人「グリーンファンド秋田」に500万の出資と17年間で元本返済の4800万融資を行う計画だ。この風車建設は、新しいエネルギー政策として注目されているが、日本での実態としては補助金目当ての事業も多いと取りざたされ、低周波公害などの問題もあり、事業として成功するのはかなり難しい状況にあり、決してバラ色ではない。今回の首都圏生活クラブによる建設計画は、最後となる補助金制度にすべり込んだ形だ。ともかく、これだけのゆとりがある生活クラブ生協ながら、まだ、なぜ、最低積み残し金10万円をうたわなければならないのか。出資金を何が何でも確保して置きながら、事業拡大を手掛けるのは、やはり、生協本来の姿からは乖離するのではないか。しかも、手続き的に、当初の一時的な事情が変更しているにもかかわらず、毎年、明確な説明もないまま「最低積み残し金10万」を「3号議案」の末尾に当然のように提案しているのは、定款に違反するのではないかと思った。
支部の理事や本部事務局の担当者は、顧問弁護士にも相談したが、毎年、総代会で議決されているのだから定款違反とはならない、の一点張りなので、ちなみにその弁護士の名前を尋ねてみた。組合員と直接話すことはできないし、その氏名は教えられないともいう。何のことはない、総代会の来賓リストに顧問弁護士の名は明記されている。この対応には少々呆れてしまった。生協運営の基本は組合員への情報公開ではなかったのか。生協の事務局や幹部はしっかりと「役人」になってしまったらしい。
扉を開ける、少しは変わる
仕方なく、私は「定款」による減資を申出ると、初めてのケースなもので、まだ、その書式ができていない!?というではないか。え?いままで、定款による減資の前例がないということらしい。そういえば、「定款」も手続きも一切広報を受けた記憶がない。減資には定款による方法もあることを組合員に周知させるべきではないかと、私は提案した(9月9日)。すると、驚いたことに、その回答(9月20日)には、10万円を残す年度途中の減資は「組合員に有利な期中減資を認めるものである」とあった。さらに、「定款」の周知については「定款34条第1項(1)により定款は組合の事務所に備え置くことになっており、同条3項により、組合員から定款の閲覧謄写の請求があったときは、正当な理由のない限り、これを拒んではならないとされています。定款の周知方法としてはこれにより必要かつ十分と理解しております」というではないか。
しかし、10月15日付で、生活クラブ千葉(虹の街)の機関誌「コルザ」の別冊は、「定款」ほか総代会運営規約、総代選挙規約、エッコロ(共済)制度規約など諸規則集を収録し、保存版として発行された。これまで共済制度の規約と案内チラシは何度か見ているが、諸規則がまとまって見られるは初めてだ。それというのも、今年6月の総代会の折、総代の選出、議長の選出など運営についてかなりの緊急動議が出されたのを踏まえてなのだろうか。ともかく、こうした諸規則が全組合員に配布されたのは、総代会でもめたことの成果の一つであり、私の質問も、「定款」は事務所に備え置いて閲覧・謄写の請求に応えれば「必要かつ十分」としか回答しなかった固い扉を少しこじ開けるのに役立ったかな、とも思う。生協運営が当初の生協活動や組合員の初志を忘れ、まるで役所みたいな様相を帯びてきたのには、ただ、目先の便宜だけで、運営には無関心な組合員が多くなってきたことにも原因があるのではないかと思う。
11月になって、定款による減資の申請書が届いた。支部の機関誌の11月号の半頁に「出資金の減資について」という小さな「お知らせ」が載り、「定款」による減資も小さく報じられたのも、ひとつの成果か。それにしても、出資金をつかんで離さないばかりか、それをしっかりした説明や討議が曖昧なまま、事業拡大に使われるリスクは誰が負うのだろうか。
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コメント
突然失礼します。
私も生活クラブに入って15年ほどで、今年上限を超えたので希望があれば増資をやめる(または続ける)の選択ができる旨のハガキが届きました。
脱退する予定はないですが、減資をしたく手続きについて調べていて、こちらにたどり着きました。
生協は確か非営利の組織なので、一般会社のように売り上げで資金を増やしていくというより、組合員の出資金で事業を運営していると認識していますが、そういう視点で見ると、配達があったりホームページを作ったり、(チラシが多いから減らして欲しい意見には賛成です)などの運営に関わる費用は絶対必要で、私たちもその一端を担うと言ったら変ですが、それを承知で組合員になっていると考えれば、ある程度はしょうがないのでは…と思います。
事業拡大のリスクを心配されていますが、仮に組合員全員が出資金を全額戻して欲しいと言ってそれを受けてしまったら、事業が破綻してしまうリスクもあるのではないでしょうか。(私は生活クラブの食材が気に入っているので、事業を継続して欲しいと考えている一人ですので、そのリスクは回避して欲しいと思います)
とはいえ、脱退する時には全額返ってくるわけですし…。
組織の体制が嫌ということであれば、そこは出資金の仕組みとは分けて考えた方が良い気がしました。
難しいことはわかりませんが、読んで思った感想でした。失礼しました。
投稿: まりも | 2020年9月26日 (土) 12時19分
うえだ様 コメントありがとうございました。私は、ややあきらめた形で、組合員を続けています。ニュータウンも高齢化して、消費力が落ちたのか、近くに売り場だけは広いイオンタウンができ、コンビニやドラッグストアが増えたためか、地元の商店がどんどん閉店してしまって、車を持たない我が家は、かえって不便になってしまったこともあります。基本的な生鮮食材と食品、雑貨の一部だけを生活クラブから購入しています。間に合わせに、近くのマックスバリューに駆け込みますが、プライベートブランド?が大半を占め、欲しいものが買えないこともあります。昨年、オーケーができて、往復400円の交通費(モノレール)をかけ、あるいは自転車で出かけていますが、生協からは抜け出せないでいるのが現状です。
投稿: 内野 | 2018年8月 4日 (土) 02時32分
はじめまして。生活クラブのことについて調べていてこちらの投稿にたどり着きました。
まさに、理念から逸脱する役人のような運営に嫌気がさし、昨日脱退を申し出たところです。
ここまで調べられて事務局や理事に話を通していったのはすごいです。
いいものを読ませていただきました。
ありがとうございます。
投稿: うえだ | 2018年8月 3日 (金) 17時16分
私も生活クラブに入っています。
まだ加入して間もなく減資の手続きのことは全くわからないのですが、経営強化のため出資金の上限金額が今年からあがりました。(25万円になったはず。)
こちら神奈川は赤字運営と聞いています。
組合員数が減ったこと、一人あたりの購入金額減ったことが原因のようですが、風車に投資することは出来るんだとびっくりしました。
投稿: かながわ | 2012年5月 7日 (月) 17時34分