二つの番組を見て~「坂の上の雲」第3部と「NHKスペシャル・日本人の戦争」と
「坂の上の雲」第3部が始まったが~忍耐の限度を超えた
だったら見なきゃいいのに、と言われるが、1部・2部を見ていろいろ注文をしてきたこともあって、ともかくチャンネルを合わせた。12月4日の第3部第10回「旅順総攻撃」だったが、3・11を経た後だけに、あの物々しい、司馬遼太郎とNHKのコラボによる「日本の明治再評価」 にどれほどの意味を見いだせるか、かなりの疑問とむなしさが予想された。「まことに小さな国が開化期を迎えようとしていた」という渡辺謙の声の押しつけがましい演出がやりきれない。今回は戦地前線の場面が多く、参謀会議や作戦会議の場面が多い。最大の難点は、年配の役者のセリフが妙に聞きとりにくかったのだ。軍人たちの押し殺したような声に出身地の方言とされる、ぎごちないイントネーションが加わるので一層その感が強い。さらに、いかにも時代を考証して作りましたみたいなセット、ロケによるお金のかかった大掛かりな戦闘場面にも、ああ、受信料がもったいない、という思いが先に立ってしまう。戦記物が好きだったり、軍事オタクだったりの男性には面白いのだろうか。戦争って作戦の問題ではないだろうと。小さな国ががむしゃらに植民地を拡大していった時代の、国の在り方を全肯定する物語としか受け取れないのだ。とくに、司馬の歴史認識が、経済危機の上に重なった津波・原発事故のもたらした恐怖と不安が渦巻く日本に、どんな形であるにせよ、受け入れられるものなのだろうか。いまさらながら、説得力のない無用の長物のように思えた。
NHKスペシャル「証言記録・日本人の戦争 第2回 太平洋 絶望の戦場」
12月4日、「坂の上の雲」第3部の第1回の放送後、9時からの15分間のニュースを挟んで「証言記録・日本人の戦争 第2回 太平洋 絶望の戦場」と題する「NHKスペシャル」が放映された。これは、ニューギニア、ニューブリテン島など過酷な状況から生還した、すでに80代後半から90代になられた元兵士たちの証言の実写と資料映像によって構成された番組だった。証言者の複数の方が証言後、時を経ずに亡くなれているのもショックだった。
NHKアーカイブの戦争証言の証言者別の幾本かは断片的に見たこともあった。これらの証言を核に、「兵士たちの戦争」「市民たちの戦争」「日本人の戦争」として、視点を変え、戦地を変え、主題を変えなどして、さまざまな角度から再構成している番組だが、今回の番組に登場する証言は初めて見るものだった。録画での検証はまだだが、次の4点が印象に残った。
②複数の証言者が「人肉事件」「共食い」という言葉でなまなましく語られた事実は当時の戦地では決して異常な事件ではなかったこと
③竹永(正治中佐)事件という集団投降の経過と捕虜への評価
④岩手県旧藤根村の小学校教師高橋峯次郎の軍国教育と戦地の教え子たちに送った「真友」と教え子たちからの軍事郵便の果たした役割
②③については、放送後、NHKアーカイブで検索、閲覧した「証言記録 兵士たちの戦争 東部ニューギニア 絶望の密林戦~宇都宮歩兵第239連隊」(2009年3月28日)の方がより詳しかったことがわかった。② については、「週刊新潮」の証言捏造疑惑記事に対するNHKの抗議文が「お知らせ」として掲載されていた。
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