自力の「減染」宣言、佐倉市民からの投書に思う
3月10日の朝日新聞「声」欄に、佐倉市の40代の母親からの投書「この地で生きたいから《減染》」があった。家の周りの放射線量は「(国の基準の)0.23マイクロシーベルトなどという数字は簡単に超えてしまう」から、せめて「自宅の芝をはがしたりして、完全な《除染》は無理でも、子どもたちのためにできるだけ自力で《減染》しようと奮闘している」という主旨だった。悲痛な叫びのようにも聞こえるし、頼れない国や自治体への不信感の表れにのようにも思える。原発事故から一年経っても一向に進展しない、国の除染対策、いまだに放射性物質汚染の中間貯蔵施設が確保されず、それを理由に自治体は現地管理という形で放置に近い対策しか採れないでいる、いや採ろうとしない。
佐倉市は「汚染状況重点調査地域」に指定されながらも、測定結果の報告は第14報に及ぶが、実施しているはずの除染結果というのが5か所公表されただけである。そして、いま、進んでいると思われる除染工事。かつては看板すらも掲げず、立入禁止にもせず、除染工事を実施していた時期もあった。市は、工事の際には看板等で表示するようにだけ指導したというが、その表現がまちまちで、近くの小学校では「低減工事中」となっており、何の「低減」だか不明である。「除染」とて明確ではないのだが、「放射性物質除染」という意味が定着しつつあるので、まだわかるというものだろう。「除染」はできないから「低減」と謙虚なのだろうか。いや、なるべく放射線量の高さ、放射性物質の存在を、限りなく曖昧にしようという姿勢なのではないか。
除染、低減工事済みの施設や公園になぜ表示をしないのか、について市に問い合わせた折の回答は前回の記事にも記した。「2月の議会でも質問が出たので、これから検討する」とのことだった。表示することによる、メリットこそあれ、デメリットは考えられないと思うのだが、反応は鈍い。昨年、測定値が高い公園などはその旨の掲示が必要ではないかと尋ねたときは、公園緑地課では、公園のご近所が「イヤがる」「風評を怖れる」からということを強調していた。しかし、市民からの具体的な意見があったのかと問えば、まだそういうことはないということで、あくまでも行政の推測であったことも分かった。
何を怖れ、何に配慮してのことだろう。少なくとも、今回は「除染工事済み」掲示なのだから、早く実施してほしい。少しは安心して外遊びできる場所も増えるはずである。さらに、市民への貸出しが始まった測定器で、市民は除染の効果がどれほどなのか知ることもできるし、除染後の推移などを市民が確認できる手立てにもなろう。
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