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2012年8月 7日 (火)

消費税率引き上げ法案は、廃案に~中央公聴会、公述人随行記

 消費税率引き上げ法案をなぜ急ぐ? 

87日の午後になっても、参議院での消費税率値上げ法案(以下消費税法案)採決と内閣不信任案提出の行方が見えない。ネット上のニュースサイトを時系列で追ってみても、情報が入り乱れている。自民党が採決の日付にこだわって、お盆の後では遅い、810日だ、8日だ、と言えば、野田首相は、まるで、バナナのたたき売りみたいに、その日付をのんで行く。そして採決後に、自民党は、内閣の不信任案を提出するというのだから、わけがわからない。さらに、自民党は、「遅きに失した」からと解散の確約を迫る。それに先立ち、自公を除く7野党が共同で内閣不信任案を採決直前に提出するといい、小泉ジュニアは、3党合意を破棄せよと自民党執行部に迫っている。 

国民生活を直撃する大事な消費税法案の基本的な部分の論議をなおざりにして、不透明部分をあちこちに抱えながら、3党合意したという法案を1日早く通したからどうなのか。迷惑するのは国民だ。 

テレビや新聞が、オリンピックにうつつを抜かしている間に、ことはどう進んでいくのか。3つの全国紙、87日の社説は揃いもそろって、「合意の破棄は許されない」(毎日)「改革つぶしは許されない」(朝日)「一体改革法案 党首会談で事態を打開せよ」(読売)と、大合唱である。参院の公聴会がまだ終わってもいないのに。

 

きびしい日程の公聴会

 

消費税法案の採決をお盆過ぎの820日頃にしたい民主党、それでは遅いなどという自民党の政局がらみのニュースが飛び交うなか、7月末日になって、採決の前提となる「参議院での公聴会」が867日になるらしいとのニュースも聞いた。「採決前のセレモニーだもの、むなしいね」などと話していた矢先、82日、連れ合いに参院の事務局から電話があって、その「社会保障と税の一体改革に関する特別委員会」の公聴会の公述人にという話が舞い込んだ。先月『消費増税の大罪~会計学者が明かす財源の対案』(柏書房)を出版したばかりだったこともあって、「消費増税反対」の立場での公述をということらしい。最初は迷っているようだったが、「この際言わねばならないことは言っておこう」と腰を上げた。当日まで4日しかない、それからが大変。 

もちろん、本を出したばかりだし、公述の骨子はもちろんできていると思われるが、公述時間15分とタイトだし、資料は83日の夜まで提出ということであった。その直前だったか、A4の関連資料が積み上げて30㎝ほどが段ボールで届く。連れ合いは、15分で話せる内容のまとめと資料作りに没頭、蒸し暑い夜は一層苦しくなった。傍聴できるの?の私の声に、問い合わせたところ公述人の「随行者」としてなら可能とのこと。ただし、委員会室の出入りが自由というわけにはいかないらしい。この間、老犬だけの留守番になるので、なるべく早く帰りたいのだが、公述・質疑が終わるのが5時近くなるはずだ。 

私は、指定の集合時間1時、参議院面会所に向かう。国会議事堂前下車、金曜日ではない官邸前や議事堂周辺はいたって静かである。それでも、悪名高い「過剰警備」の警官たちが立ち並ぶ。面会所で手続きを済ませ、リボンの記章をつけ、公述人控室へ。 議事堂の内部は、天井も高く、古色蒼然とした階段やエレベーター、どんなホテルよりも格調が高く、私は好きだ。しかし、そこを行き来する政治家たち、その中身が問われるのだ。控室では、すでに公述人たちが、静かに資料を繰っていた。 

130分直前、テレビなどで見慣れた様相の委員会室、議長席側に委員たちと相対しての公述人席、その後方の席に案内される。5人の公述人が着席するや否や、議員たちが近づいてきての名刺交換が始まる。こんな光景は想定外だった。記者席やカメラは委員長席に向かって左側の中二階である。 

公述人意見の概要は、下記の NHK NEWS Webでご覧いただける。全国紙では、朝日新聞、毎日新聞の87日(朝刊)に関係記事が掲載されている。http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120806/k10014111131000.html(注1) 

全容は、下記「参議院インターネット審議中継」で録画を見ることができる。 

http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php

 

公述始まる

 

 経団連の中村氏は、財政健全化のために消費増税の必要性と法人税引き下げを強調した。長谷川中央大学教授は、消費税率引き上げにあたってはEUなどにならった軽減税率の必要性を繰り返した。飯田駒沢大学準教授は、デフレ下の消費税率引き上げは、財政再建には寄与しないので反対、金融緩和策により税収を増やすべきだという。植草氏は、民主党の明らかな公約違反、世代間格差の増長・構造的な不景気・財政的な危機に直面していると国民を煽るばかりで、とりやすいところから取る消費税には反対。議長の高橋千秋委員長、もっぱらタイムキーパーだ。公述最後の連れ合いは、増税を逆進性の強い、転嫁の困難な消費税に依拠するのでなく、先送りされた所得税・相続税などの見直しの必要性と税以外による増収を強調した。今回の法案の附則で社会保障の財源の確保を目的とする消費税引き上げ増収分が防災・減災など他の財源にもなる文言を付している矛盾を突いた。

 

学級崩壊?

 

公述人の随行者というのは、公述人の補佐人的な役回りらしく、経団連の中村氏には二人の随行者が座席の後方からメモを渡したり、公述人が手招きしてひそひそ話をしたりと忙しそうだった。 

 それにしても、この特別委員会の公聴会は、怒号が飛ぶわけではないが、委員会室の出入りがはげしく、隣席同士の私語や席を立っての後方での情報交換は当たり前、中には、机の下の携帯電話を見続ける委員もいる。委員長が咎めるでもなく、議事は進んでいくのだ。 

公聴会終了後、出がけに降り出した雨も止んでいた。連れ合いの随行はここまでと、私は、老犬の待つ家へ急いだ。ともかくビールでお疲れさまの、遅めの夕食が終わって、テレビをつけても、ニュース番組はなく「たけしのTVタックル」にぶつかった。公聴会で途中議長席にも着いた桜井議員の顔も見えた。自民党、民主党議員の出演者は、みなバラバラなことを言っていて、どこが3党合意かとあきれるほどの無責任さだけが印象に残るのだった。

 

(注1)中央公聴会 消費税などで意見 (86 1832分) 

社会保障と税の一体改革を巡る参議院の特別委員会は、6日、午前に引き続いて午後も中央公聴会を開き、消費税率の引き上げを巡って、各党が推薦した5人の公述人が意見を述べました。 

このうち、経団連・税制委員会の中村豊明企画部会長は、「社会保障と税の一体改革は、持続可能な社会保障制度の確立と、中長期的な財政健全化の実現、それに、わが国の成長基盤の創出に極めて重要だ。速やかに成立することを強く期待している」と述べました。駒澤大学の飯田泰之准教授は、「デフレのなかで増税すると、中小企業が価格転嫁できず、地域経済にとって大きな負担となることが予想される。雇用情勢の悪化に直結し、社会保障負担の増大を招くので、消費増税による財政再建は難しい」と述べました。
 
中央大学の長谷川聰哲教授は、「これまでの消費税導入や引き上げにあたっての弱者への救済策は、いささか臨時的な措置に頼りがちだった。食料品などの消費税率を低くする『軽減税率』を適用し、低所得者層の負担軽減を長期の税制改革の柱に取り込むべきだ」と述べました。
 
株式会社のスリーネーションズリサーチの植草一秀代表取締役は、「政府は財政再建待ったなしと言うが、日本経済は債務だけでなく資産の規模も大きく、ヨーロッパのような債務危機が起こる可能性は極めて低い。現時点で巨大増税を決めるべきではない」と述べました。
 
東京大学の醍醐聰名誉教授は、「3党合意を経た修正案で、所得税や相続税の極めて僅かな改革すら、すべてが削除されてしまった。税の再分配機能などを劣化させており、消費税オンリーの増税を図るということは、税制の正義にもとるものだ」と述べました

 

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コメント

片野様 ご無沙汰しています。拙歌集『一樹の声』からの1首、取り上げていただき、ありがとうがとうございます。女性宮家問題については、『皇后の近代』(講談社 2003年)の著書を持つ片野様のお話をゆっくり伺いたいです。

投稿: 内野 | 2012年8月11日 (土) 21時51分

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