佐倉市の航空機騒音、その後
猛暑とともに、航空機騒音がやりきれない夏。佐倉市の上空を通過する航空機の数は基 本的に増加していることがわかる。佐倉市上空と言っても、その着陸便航路から志津地区に限られる。以下<第1表>が、2010年10月、羽田空港拡張の前と後の6か月単位の佐倉市上空を通過した可能性のある便数の推移及び最近2か月の現況である。 これまでの記事の繰り返しになるが、夏季に多い、南風好天のときは、約4000フィート(1200m)前後の高度で北から南へ千葉市方面に飛ぶ。南風悪天候のときのみ、佐倉市上空の飛行方向は逆の南から北に向かい旋回する。この夏季、4月~9月までの南風天候における低空飛行が、市内、志津地区の住宅街に騒音をもたらす。井野中学校付近の我が家で、夏、戸を開けていると、テレビの音が聞こえなくなる。夏季の半年間、2010年も2011年も約6割が低空飛行で、騒音の元凶であったことがわかる。
<第1表>佐倉市上空通過航空機(羽田空港着陸)便数
(2010年4月~2012年3月)
<第2表>夏季5月1日の時間帯別便数(2010~2012年)
http://dmituko.cocolog-nifty.com/kokukisoon.pdf
<第2表>は、3年間のデータがある、5月1日分を一覧表とした。ゴールデンウィーク中ではあるが、時間帯における推移は、2010年、2012年については平均的な数字となっている。2011年5月1日は、南南西の風が強かったらしく、欠航便が夜に集中したのではないか。台風や悪天候、強風などによる時間帯によって便数の偏向はたびたび発生するようだ。この日の夜間、1時間に26機が飛ぶということは、2分半に1機だから、夜空を見上げる、その視界に2機は眼に入るか、若干の高度を違えて同時に飛んでいることもありうる。要するに騒音としては、途絶えることがないという状況である。千葉市内は通常でもこの状態に近いのではないか。
年間を通して、1日で130便前後、便数の多い時間帯は、11時台、15時・16時台で、2ケタになり、1時間に12機とすると、5分に1機になる。そして、夜の9時台、10時台が必ず多くなり、3~4分に1機ということも稀ではない。この時間帯における住宅街上空の低空飛行による騒音は、かなり深刻ではないか。乳児・高齢者の睡眠時間帯に入る。とくに高齢者には寝入りばなであるだけに、つらいという訴えが多い。
こうした実態を、佐倉市はどれほど把握しているのだろうか。佐倉の志津地区は、羽田空港拡張、翌年2011年の春、南風仕様の低空飛行に突如見舞われ、住民にとっては、かなりの衝撃であった。市役所の「市民の声」にも、ある自治会からの質問が寄せられた。その後も問合わせや苦情が続いたと思われるが、市の反応は、他の自治体に比べきわめて鈍い。というより、国も県もそして佐倉市も、情報を意図的に操作していることが考えられる。以下の年表で例証したい。
<第3表>羽田空港着陸便騒音問題関係年表(国・千葉県・佐倉市の対応)
http://dmituko.cocolog-nifty.com/kokukisoon.pdf
2000年には、国土交通省の東京近郊の第3空港建設構想は消え、羽田空港の再拡張へと方針は転換し、佐倉の騒音問題もここに端を発する。2003年から、国と周辺関係自治体との協議会が発足するが、2004年2月からは、国は、千葉県と県下14市(千葉・市川・船橋・木更津・松戸・習志野・市原・流山・鎌ヶ谷・君津・富津・浦安・袖ヶ浦・白井)に再拡張後の飛行ルート案を示し、意見書の提出を受け、回答し、その修正案を5月25日に県と14市は了承する。6月29日にその全容が明示されたというが、この修正案が千葉県下の上記14市以外の周辺関係12市町村(佐倉・茂原・柏・八千代・我孫子・四街道・印西の各市及び沼南・大網白里・長柄・長南の各町、印旛村。現在は、町村合併により11市町)の助役に説明されたのは7月13日だった。
要するに、国と千葉県は、先の14市に限って、飛行ルート案を示し、その意見により修正した飛行ルート案を決定したものとして、同年7月になって、他の12市町村の助役・担当者への説明会を実施していることになる。そして、その直後に、今度は、県下の14+12=26市町村の協議会を発足させている。「飛行ルート」の大部分は既定の事実として、その後の年に2回ほどの協議会により、高度引き上げによる調整や深夜早朝などのルート調整に限った協議に終始し、内陸部における飛行ルートの分散化などは検討事項として掲げるにとどめている。
当初の協議にあずかった14市以外の12市町村は、まるで、だまし討ちに遭ったようなものではないか。国や県は、周辺関係市町村を分断することにより、市町村の意見の噴出を抑えているとしか思えない。よく使う官僚の手段である。佐倉市も唯々諾々として、素直に従うのみであったらしい。 こんな時、国交省などから、部長や副市長を送り込んで置けば、なおさらことは進めやすいだろう。
さらに、佐倉市は、こうした経過や2010年10月21日以降、佐倉市上空の飛行状況については、一切市民に伝えようとしなかった。市民からの問い合わせや自治会からの問い合わせについての回答は、以下のようにそっけない。すべて、上記「協議会」を通じてのみ意見を伝え、佐倉市内の騒音調査はせず、似たような高度での他市の調査で十分だというものであった。
http://www.city.sakura.lg.jp/0000001870.html
また、昨年の夏の騒音に市への問い合わせも多かったからか、8月になって、それまでの経過を「航空機について」と題してHPに掲載した。少なくとも「航空機騒音について」と題すべき情報ではなかったのか。こんなところにも佐倉市の姿勢がよくあらわれる。
さらに、驚いたことに、昨年8月、「市民の声」に寄せられた意見への回答は同年9月になされているのだが、なんとHP上に掲載されたのは9か月後の今年の6月であったのだ。これとて、上記の回答と同様、「協議会」を通じてのみ対処し、佐倉市内の騒音調査は類推できデータがあるから不要で、予定もない、というものであった。
http://www.city.sakura.lg.jp/0000001868.html
この回答がHPに掲載された6月24日は、国による騒音調査が、ともかくすでに佐倉市内志津浄水場で実施されていたのだ。その情報を付記するでもなく、9か月前の回答をそのまま載せている神経も理解しがたい。もっとも、この測定場所について、近くの知人が「国交省が佐倉市市内で騒音調査をすることになったそうだが、どこですか」と市の担当者に聞いたところ、教えられないとの一点張りだったそうだ。なぜかと言えば「教えたらそこへ市民が押し掛けて混乱するから」とのこと。まさに噴飯ものの珍解答だろう。私も、後になって国交省に聞いたところ「佐倉市とよく相談して決めた場所です」とのことだった。
なぜ「志津浄水場」だったのかと、市の担当者にたずねたところ「学校のチャイムが聞こえない、道路を走る自動車の音が聞こえない、飛行機騒音が採取しやすい、公の施設」だからということであったが・・・。9月には、その結果を市のHPに掲載するとのことだが、季節や場所を変えて、継続的に実施してほしい。それと同時に、騒音を訴えているし市民の住居に、市長や担当者がまず実態調査に出向くべきではないのか。少なくとも、千葉市市長は、騒音で眠れないという住宅街の市民の住まいを夜間に、視察に出かけている。また、浦安市の対応は、年表に見るように、早くより「広報うらやす」で何度も特集を組み、航空機騒音の重大性を市民に訴え、状況説明やアンケート調査を実施したりして、行政と市民が一体となって、取組んできた様子がわかる。
これまで、佐倉市の放射能汚染対策に見てきた構図が、ここでも繰り返されているようだ。こうした役所にしたのは市民も悪い、と言わざるを得ないのでは。
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コメント
本日5月6日は静かで昨日までの騒音は何だったのかなんて思います。静かになるとやはりリラックスして精神も落ち着いてきます。昨年の9月までは西志津もこのようだったのです。それが一転、昨日の6時頃は2分間隔、娘の家族が来ての団欒も時々水がさされる気がしました。内野さんの11年、12年の記録を見ると、佐倉市は国交省と県にいいようにやられている感じですね。あるいは同罪かもしれないけど。苦情は出ていたようですがネットを見ても志津からの対騒音投稿はほとんどないようです。佐倉市民もおとなしいのかもしれない。やはり皆で言って行かないといけない。何でもいいのです。眠れない。勉強ができない。ノイローゼになりそう。なんでもいい。理屈抜きで被害の実態を訴えてゆくことが必要だと思います。
投稿: 匿名 | 2014年5月 6日 (火) 21時04分
四街道の方ありがとうございます。西志津では連休に入って本当に騒音がひどい、昼間は4分間隔で真上を通過します。志津から、四街道にかけては国交省によって理不尽な飛行機騒音被害受けていると思います。昨年10月に騒音を感じ始めたときに飛行機の高度が異常に低いと感じました。現在志津から四街道にかけては高度1350メートルで飛んでいるのです、志津は1200メートルという説もあります。羽田からの距離は40キロくらいですから、通常の着陸ではこんなに低くする必要はない。南からのルートでは千葉市の緑区あたりで2100メートルもあります。1350メートルの高度に下げるのはおそらく羽田までの海上に出てからだと思います。ですから志津ー四街道のルートは異常に低い。陸上をこんなに低く飛んだら騒音音問題が起こるには当然です。理由は佐倉の北側を東西に飛ぶ飛行ルートがあるのです。志津からも見えます。高度はもっと高い。成田から飛ぶ国際線と聞いています。これと交差するので羽田行きが低くなる。もともと無理なルートなのです。ですから国交省は確信犯です。いま国交省官僚は羽田の増発、ハブ化につき進んでいますから何を言っても聞かない。地方や住民のことなど考えていない。日本の官僚は過去からこういうことやります。市の力も限界がある、議員連中など成果が上がらないから逃げ出してしまった。後は住民が声を上げるしかない。関係役所には一応苦情電話とかメールアドレスとかありますから無力だと思ってもしつこく苦情を入れましょう。
投稿: 匿名 | 2014年5月 4日 (日) 20時25分
四街道のかたへ 情報をありがとうございます。千葉市や四街道市は、佐倉市よりは対応策に熱心とみておりましたが、「ずらす」ことでは解決いたしませんね。房総の空全体の問題だと思います。やはり高度を上げることが対策と言えるのでしょうが、それも技術的に限界があると思います。問題の根っこには、日本の航空機が東京湾の西側の上空を飛べないことにあるのだと思います。羽田・成田の離発着の航路が房総半島上空に集中し、分散できないからだと思います。国交省は、横田や横須賀基地があるかぎり、日本の制空権が及ばないのは、日米の安全保障の問題であり、国と国との問題で、どうにもできないというのが国交省の答えでした。いま、日本では「防空識別圏」への関心が高まっていますが、むしろ、日本の空でありながら、日本の航空機が飛べない方が、問題は大きいのではないでしょうか。にもかかわらず、いまの国の方向は、米軍基地の固定化や「集団自衛権容認」など、逆に向かっています。今私たちができることもその辺から考え直さないといけないのではと思っています。とりあえずは、航空機騒音の測定による実態把握と高度化による騒音軽減を自治体に働きかけてゆくことなのでしょうか。国や自治体の航空行政の担当者は、便数を増やすという利便性には必ずリスクが伴うことを念頭に対応してほしいと思います。
投稿: 内野 | 2014年4月 8日 (火) 13時13分
2014年3月6日からの試行運用で南風好天時の飛行経路を東に数kmほど「ずらすだけ」というお粗末な対策がなされました
我が家は「旧」飛行ルートの直下からは2.5kmほど離れていたので
今まで航空機騒音を感じていませんでしたが、
現在はほぼ自宅の真上を高度4500フィートでかすめ飛ぶようになってしまい、この尋常でない騒音に困惑しております
音量もさることながら回数が異常ですね・・・・まるで空襲でもされているかの様な耐え難い苦痛です
投稿: 四街道市の人 | 2014年4月 8日 (火) 00時33分
3月31日日は朝6時から上空を通過、あまりの数の多さに数えたら9時11分から9時31分までの20分に12機通過、2分毎の通過です、前後数時間は同じ状態。騒音の程度は雨戸を閉めた寝室内でうるさいと感じる程度。これ異常ではないですか。風の強いときの飛行機のしわ寄せは志津の上空へなんて誰が認めた。2チャンネルに面白い書き込みあって「千葉は東京のゴミ箱だから騒音はあきらめろ。」。相変わらずの2チャンネルですがよくよく考えるとこれかなり的をえている。飛行機騒音は飛行機から出るゴミみたいのもで、人が生活すればゴミが出る。どこに捨てるかです。羽田への飛行機はゴミは千葉に捨ている。まさにゴミ箱。新聞に羽田増発なんて派手にニュースにでますが、騒音増大というゴミは全て千葉に落としておきますから東京は心配ありませんと書いておいたらといいたくなります。
投稿: 匿名 | 2014年3月30日 (日) 16時33分
内野 各地域において、実害のデータを添えて、自治会等を通じて、行政に訴えることが大切ではないかと思います。千葉市の住民や首長のその熱意を見習わうべきと。
佐倉市だけの問題ではないと、佐倉市は逃げるのですが、年2回ほどの周辺自治体と国交省の会議に出て、発言するだけではないでしょうか。個人にしても自治会を通すにしても、根気よく、まずは被害調査の要望することではないでしょうか。もちろん、羽田や成田への事務所に調査の依頼と要望を繰り返す必要があると思います。
投稿: 内野 | 2014年3月27日 (木) 22時11分
西志津の飛行機騒音はますますひどくなっていますが、もう何も書かないし、行動しないのですか?
投稿: 匿名 | 2014年3月27日 (木) 12時58分
佐倉市は、環境騒音町造りにすべて無頓着仕事も大変遅いような気がしますね。住んでみて何も変わったかんじがないです。市民に対して,真摯な対応は、できないのでしょうか。みんなが声を上げないとこのままでは、いけないような気がします。
投稿: はな | 2012年10月10日 (水) 15時47分