2013年、歌会始、あれから20年、岡井隆は何を変えたのか
今年も1月16日、皇居での歌会始が開催され、新聞では、16日の夕刊、17日の朝刊で報じられた。皇族と入選者の作品が公開される。どの新聞も、記事の大半は、宮内庁(ホームページ)発表の皇族方と選者・入選者の短歌作品と天皇夫妻、皇太子夫妻の作品解説を引用し、最年長、最年少の入選者やその作品を紹介する程度である。今年は、史上最年少、12歳の中学生のカエルの歌が注目されているようだったが、ワンパターンと言ってもいい、恒例の記事であった。NHKは、毎年歌会始の中継を放映しているが、今年、私が見たのは、「ニュース7」で放映されたその一部であった。それにしても、映像を見る限り、天皇夫妻を真ん中に、皇族方の男女が分かれて着席していたが、男性は、天皇、皇太子、秋篠宮の3人で、なんとなく寂しげな空間であった。
歌は発表されているが、雅子皇太子妃と常陸宮は歌会には欠席。高齢の三笠宮、かねてより静養中の桂宮、信子寬仁妃と若い彬子さん、眞子さんの歌はない。静養中の二人の作品は、近年発表されたことがない。歌会始ですらこんな風だから、毎月という月次歌会は開かれているのだろうか。こうした皇室の「文化的な伝統行事である歌会始」が、国民と皇室の架け橋の役割を果しているという「大義名分」は成り立っているのだろうか。
応募者の数も、近年、2010年2万3346首、2011年2万0802首、2012年1万8802首、今年が1万8398首であり、1989年来、平成に入って、2万首前後を推移、2万7000首を超えたのが、2004年・2005年の2年のみだった。一方、1月21日発表のNHK全国短歌大会(平成23年度)には、一般の部2万3839首、ジュニアの部1万7222首の応募があり、1月15日発表の東洋大学現代学生百人一首(第26回)には、5万4107首の応募があった。
かつて、岡井隆が歌会始の選者入りをした時のインタビューで「民衆の参加する短歌コンクールとしては本邦最大で、知名度も高い。従って国民各層からの応募が期待できます」と応え、昭和生まれの初めての選者だった。また、「体制順応ではなくて、体制内で存分に活躍するという心構えですか」の質問には「相手あってのことですから、どこまでできるか、すべてこれからのことです」と答えていた(『朝日新聞(夕刊 西部版)』1992年9月4日)。あれからすでに20年、選者に留まり続け、現代短歌の中堅・若手歌人リーダーたち?とのエール交換に余念がない。ものをいわない中堅・若手の責任も重いが、歌会始は、現代短歌は、何が変わったのか。皇室自体への関心は薄れ、もはや最大でもなく、知名度が高いわけでもなく、応募者の減少、高齢化が顕著な中で、著名歌人の選者たちが、若ければ若いほどいいみたいな歌を選び続ける、その物欲しげな態度だけを持続しているかのように。
天皇制と現代短歌を云々する前に、皇統の継続、皇室の存続すら危ぶまれる矛盾を抱えている天皇制自体についての論議を避けて通る政治、そこにこそ、ひたすら護持しようとする一部の人々の温床があるような気がする。
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