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2013年1月14日 (月)

NHKはオリンピック東京招致委の広報か~年末年始の東京招致報道について

  この年末・年始、事情あって、テレビニュース、新聞など丁寧に見ることはできていない。しかし、そんな中でNHKテレビのニュースに接していたかぎりで、顕著なことがあった。安倍政権の経済対策、尖閣列島近辺の中国の動きについては、必要以上に、大げさに報道するのは、NHKの常ではある。前者では財源に言及することはほとんどなく、公共事業などによる大判ふるまいを強調し、後者では領土侵略の危機を煽るのが定番でもある。何やら会議の再開や立ち上げで景気回復がすぐにでも実現するような政府の広報に徹しているように見える。 多くの情報と多様な意見を提供し、論点整理することによって国民の議論に資するという公共放送の役割、その中立性をすでに投げうってしまったのだろうか。

 こうした傾向の中で、この年始のNHKの東京オリンピック招致報道の過剰さには、いささかうんざりした。 私が、実際に視聴したニュースなどを中心に一覧にしてみた。実際に視聴したニュースは網掛けをし、参考のためにNHKWebニュースから関連記事をピックアップした。その他の記録は、オンデマンドサイトの1週間分のニュース項目から拾った。また、昨年分については、分かる限りオリンピック東京招致関連ニュースを記したが、網羅的ではない。 

http://dmituko.cocolog-nifty.com/gorinsyoutihoudou.pdf

 ここから見えてくるものは、今年は少なくとも元旦から110日まで、間断なく、東京オリンピック招致関連のニュースを流し続けていることだ。(5日については未確認)ニュースのワイド番組だけでも、ほかに「おはよう日本」、午前零時からウェブ・ニュースあり、一時間ごとに定時のニュースもある。私は、どれほど関連ニュースが流れたかは確認できないが、1日に何度も繰り返し放映されたのではないかと推測できる。 

 私は、6日、表にあるとおり、昼の「NHKニュース」と夕方の610分からの「首都圏ニュース」、7時からの「ニュース7」を見ている。まず昼は、「立候補ファイル」を提出するために出発したという招致委員と澤選手らメダリストの映像とコメント、3人の街の声が流された。いずれも東京オリンピックへの期待と支援の声だった。そして招致委員会会長の猪瀬都知事は「日本人のやる気を起こすためにも・・・」とおよそ内容のない、無責任なコメントだった。夕方の「首都圏ニュース」では、昼の映像を再び繰り返した後さらに、「招致成功の鍵」を力説、ほかの候補2都市に比べて支持率が低いのをいかにアップさせるかを詳しく報道、「ニュース7」では、それに加えて、男女人気メダリストたちが晴れ着で都知事と一緒に神社に祈願したり、絵馬を奉納したりする画面が登場する。神社?どこの神社?知事が公務で神社へ出向いていいのか、と思ったのだが、後でほかの記事などを見て丸の内の商業施設に特設の期間限定の?「東京五輪招致神社」?を設置したとある。その鳥居の前で、都知事と人気メダリストがにっこり笑っている写真におさまる光景が放映されたのである。わけのわからない神社と振袖のメダリスト戦略に見事に乗せられているメディアが情けなく思えた。 

 私は、1月7日、「ニュース7」を視聴した後、NHKふれあいセンターに苦情の電話をした。「その内容もわからない〈立候補ファイル〉を提出するために出発した云々の報道を、しかも招致に疑問を投ずる意見があるにもかかわらず、一方的に招致を前面に打ち出した報道をするのは、公共放送の理念に違反するのではないか。街の声も、なぜ賛成意見だけなのか。なぜ、同じ映像を使って、何度も何度も繰り返し報道するのか。その方針はどこで決まったのか」と質問した。「NHKは、五輪招致支援をどこでも決めたことはない。今日はたまたま〈立候補ファイル〉を提出するために出発したので、それを報じたまでで、現場の判断による。そういう意見があったことは現場に伝える」とのことだった。 

 1月8日は、JOC竹田会長が安倍首相に招致要請、ようやくの「立候補ファイル」公表の報道が続く。Web ニュース夜の757分においては、「5輪招致に賛否、無関心も」の見出しで、五輪招致への疑問の声が伝えられている。これはどこかのニュースで放映したのか不明ながら、「ニュース7」では、「立候補ファイル」の詳細を報じて、東京のメリットを強調していたし、疑問の声の映像やコメントを私は見ていない。ふれあいセンターなどへの苦情は私ひとりではなかったのだろう。ともかく1月8日の夜になってのwebニュース、web特集では記者の署名つきで、ともに、招致への問題点が少し浮き彫りになったことは確かである。テレビでの放映はあったのだろうか。少なくとも、プライムタイムでのニュースでは放映しなかったことである。

 

 この間、新聞は、どう報じたか。ちなみに、社説を一覧しておこう。

 

東京新聞 201319日「東京五輪招致 足もとの支持を広げたい」 

朝日新聞 2013110日「東京五輪招致 成熟都市を誇るなら」 

サンケイ新聞2013111日「オリンピックを東京へ “なぜ招致”大義求め」 

日本経済新聞2013111日「五輪の開催で日本を元気に」 

読売新聞 2013113日 「東京五輪招致 日本の総合力で 実現したい」

 

こうしてみると、マス・メデイアは、すべてが五輪招致の大合唱である。しかし、選択の余地なく受信料で成り立つNHKには、より中立性が求められるのではないか。「サンケイ」の次のクダリが、むしろ、問題点を提供しているよう思った。 

~一昨年3月の東日本大震災を契機に、「復興五輪」を高らかに掲げていたが、ジレンマに陥った。「世界に対して『復興』は説得力に欠ける」という指摘に加え、IOC委員に震災を想起させ、地震や津波、さらには原発事故に伴う放射能漏れの不安をあおることになりかねない-。昨年5月のIOCの評価報告書で「電力不足の懸念」を指摘されたことは東京が誇った「安全神話」に疑問符がつけられたことを物語る。立候補ファイルで「復興」がトーンダウンし、「世界のスポーツ界への貢献」などを打ち出した背景には「残り8カ月は国際的なメッセージの勝負」(招致関係者)という建前以外の事情も大きい。~ 

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