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2013年4月29日 (月)

自治会は、いま、総会の季節~社協や日赤への募金はどうなっていますか~佐倉市の場合

  自治会や町内会は、いま、総会の季節が終わろうとしている。全国で、多くの自治会や町内会(以下、自治会と省略する)が、社会福祉協議会会費、日本赤十字社社資など自治会が徴集する募金や寄付について苦慮しているようで、私のようなブログにも、アクセスが急増している。
去る2月、私たち佐倉市の市民有志が市内の自治会の社会福祉協議会の会費徴収の実態について調査した結果とこれまでの関係判例を携え、佐倉市の社会福祉協議会と市の自治会担当の自治人権推進課を訪ね、社協会費の集め方についての申入れをした。http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2013/02/post-5d4d.html (2013223日「社協会費の集め方、皆さんの自治会では??〈自治会の自由〉ではなく、〈市民の自由〉をこそ」参照) 
 

市内自治会での実態  

佐倉市内自治会での実態は、前記事の繰り返しになるが、おおよそ3つのパターンに分かれる。私たちが調べた22自治会の中、①が9、②が4、③が8、その他が1自治会という結果が出て、③が意外と多かったのに驚いた。ということは、会費制度の維持は実質的に崩れているという結果でありながら、依然として、自治会員個人の意思は全く無視されているのが実態ではないかと思う。  

①一律に500円と書き込んだ領収書をもって自治会の役員・班長が各戸を回り集金し、拠出している  

②各戸集金はせず、自治会費に500円分を上乗せして徴収、500円×会員数分を一括、自治会予算から拠出している  

③当自治会の世帯数にかかわらず、毎年一定額を寄付金ないし一定世帯分会費として、減額して自治会予算から拠出している

 

佐倉市と社協への申し入れと回答  

申入れの主旨は、言うまでもなく、社協に対しては、以下の通り。 

 

「(前略)本来、市民の自由意思で納めるべき会費が、自治会・町内会による徴集に委ねられることにより、どんな手続きを経たとしても、大きく個人の自由意思が損なわれることになりかねません。社協が自治会・町内会に安易に会員募集、会費納入についての協力依頼をすること自体、多様なボランテイア活動、多岐にわたる寄付文化が浸透しつつある現代にあって、おおきな疑問であります。さらに、ご承知のように、滋賀県希望ヶ丘自治会役員が、自治会総会の決議の下で、自治会費に募金などを上乗せして徴集したことを違憲とする最高裁決定の主旨に照らしても、上記のような徴集が、各会員に任意性が確保されていないことは明らかです。そこで以下について申し入れをします。 

1.社協は、自治会・町内会に対する会費徴収の協力依頼を早急に中止すること  

2.もしそれが直ちに実現できない場合でも、協力依頼をする際には、社協会員の会費徴収に際して、自治会・町内会の各会員の自由意思を尊重するような方法を例示するなど、万全の配慮をし、上記①②③のような方法をとることのないように、周知徹底すること」

 

 自治人権推進課に対しては以下の通りである。 

「①②③などのような集め方をしている以上、会員の自由意思が大きく阻害され、人権侵害にもなります。これらの方法は、滋賀県内希望ヶ丘自治会役員に対する最高裁決定(大阪高裁判決の確定)の判例の主旨からも、思想・信条の自由を侵し、公序良俗に反する疑いがあります。担当課におかれましては、上記のような徴収方法を黙認することなく、社会福祉協議会が会費や寄付の徴集に際しては、上記のような安易な方法をとることを戒め、会員の自由意思がより尊重される方法や工夫について、各自治会・町内会にどんな指導や説明をしているのかを確認してください。現実にはあらたまる方向が見えていません。今後とも、よろしく指導を強化するよう、お願いします。」

 

 1か月ほどして、双方から届いた回答は、以下のように素っ気ないものだった。 

社協からは:  

「1.佐倉市社会福祉協議会会員募集に際しましては、自治会、町内会、区のみなさまへ会費納入についてご依頼するにあたり、みなさまの自由意志を尊重し、強制的にならないようお願いをいたします。  

2.集金方法の説明の際は、書面にて配慮すべき事項を明記し、書面に添って集金していただけるようご依頼をいたします。  

3.会費の使い方につきましてもどのような事業や活動につかわれているかについて、納得いただけるよう説明に努めて参ります。」  

(「社会福祉法人佐倉市社会福祉協議会会長左奈田雄一」名による)

 

佐倉市からは:  

「市では、市内の自治会等と「自治会等業務委託契約」を締結し、行政文書の回覧や配布、国等の行政機関からの依頼業務等についての依頼の他、各種委員等の推薦、日本赤十字社資募集、愛の一円募金等の業務を委託しております。募金等は、個人の自由意志に基づくものでありますので、市といたしましては、25年度の「自治会・町内会・区役員の手引き」の中の「自治会等業務委託契約とはどのようなものですか?」に、募金等徴収についての取扱いを記載し、自治会等に周知を図る方向で進めてまいります。なお、社会福祉法人佐倉市社会福祉協議会の会費等に関する業務は、当該委託契約には含まれておりません」(「佐倉市長蕨和雄」名による) 

 市と社協の地区代表者への説明会を傍聴
 日赤の社資募集などを「自治会に業務委託する契約」自体にも大きな疑問があるが、市の担当課からは、年度初めに、新年度の地区代表者を集めて、上記回答にもあった「自治会・町内会・区役員の手引き」をテキストに説明会を開くと聞いた。市からの説明が終わると同じ会場で引き続き社協からの説明会もあるという。そこで、私たち市民有志は、市内を4地区に分けての説明会に、各自の地区の説明会の傍聴に出かけることにした。 4月20日~21日の週末に4会場で開催された。

佐倉市は  

傍聴にあたっては、佐倉市は「募金等は個人の自由意思に基づくものである」ということを「手引き」でどのように表現しているか、それをどのように説明するか、に着目することにした。 

市が配布した「手引き」の5頁の「自治会等業務委託契約とはどのようなものですか?」の回答として、委託契約に基づく業務5つが列挙されている中、つぎのように記されていた。しかし、口頭では、参照18頁(「募金は、個人の自由な意思、判断によるところでありますので、ご配慮いただきますようお願いしたします」の一文がある)を見るようにとの指示しかなかった。

  

⑤その他市長が必要と認める事項(日本赤十字社社資募集、愛の一円募集、18頁参照)  

〇社会福祉協議会が行う業務(会費・赤い羽根募金)は、委託業務に含まれてません。 

〇募金等は、個人の自由意志に基づくものです。募金等を自治会費に上乗せして徴収するとした追う会決議は『無効であるとの判例(*H19.824 大阪高等裁判所)もございますので、自治会等におかれましても募金等の取扱についてご配慮いただきますようお願いいたします。

 

社協は  

社協からの説明は、もっぱら「会費納入のお願い」と「納入方法」に終始した。上記、私たちの申し入れへの回答にある「2」の「書面」というのは、配布資料1頁のつぎの部分なのだろうか。とくに、口頭での説明はなかった。それどころか、この文面とは裏腹に、数頁を使って、市内全自治会名と世帯数及び目標額(500円×世帯数)を記した一覧表が付され、さらに、前年度の納入額(実績)一覧表まで添付されていた。

 

 (1)全世帯の皆様にぜひ会員になっていただき、地域福祉を推進する一員としてご参加をお願いいたします。 

 (2)会員は自由意志によりご参加いただくことを尊重してください。 

 (3)集金の際、市民の皆様が強制的に徴収されているような印象を受けないようご配慮をお願いいたします。

 

 大方の代表者は、初めて自治会長になった人たちであろう。佐倉市と社協の募金等の「個人の自由意思」によるという主旨は、伝わったのだろうか。口頭での説明は、皆無に等しかった。たしかに「書面」にはしたためられていたが、素通りだったことが分かった。また、他の地区の有志が傍聴した説明会では、「自由意思」と言いながら「目標額」が設定されるのは矛盾ではないか、といった質問が出たとのことであったが、回答は不明確であったらしい。  

それでも、佐倉市が「手引き」に、大阪高裁の判決に触れたこと、社協がともかく「書面」を付したことを、改善の一歩としなければいけないのだろうか。まだまだ、先は長いなあ。

 

 

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2013年4月11日 (木)

「雪よりも、雪よりも、白くなし給え、君がみめぐみに」~「吉田隆子の世界」聴きにいきました

 この2月に、NHKのETV特集「吉田隆子を知っていますか」の再放送を見て、このブログでも吉田隆子に触れた。410日は、「吉田隆子の世界」を聴きにルーテル市ヶ谷センターまで出かけた。

参照:2月10日記事
 ETV特集「吉田隆子を知っていますか―戦争・音楽・女性」(2013年2月2日再放送

  http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2013/02/etv201322-6f37.html

 開演まで30分近くあるというのに、満席に近く補助椅子まで用意されていた。 作曲家、隆子のデビュー作は2分弱の小品「カノーネ」(1931年。ピアノ:山田武彦)の軽快なカノンで開幕した。あとは作曲の暦年順に演奏されてゆく。ものがなしい旋律の「ポンチポンチの皿回し」(1929年、1931年改作。ソプラノ:波多野睦美、山田)、「青年の歌」(1933年。バイオリン:大谷康子、中川直子)は、二つのバイオリンだけの演奏で前半後半の躍動と静寂のコントラストが際立っていた。戦前は演奏されることがなかった混声合唱曲「小林多喜二追悼の歌」(1933年。山田、大谷、中川)は、男性パートがピアノ、女性パートが2本のバイオリンという見立てで、沈痛な中の力強さ、ラストのバイオリンが強烈であった。ゲーテ『ファウスト』から「蚤の唄」、シラー『群盗』より「ヘクトールの別れの歌」、いずれも、吉田隆子の伴侶、久保栄による訳詩を山田のピアノで波多野が歌い上げた。一部の締めくくりの『組曲・道』(1948年)で、歌われた竹内てるよ「頬」(『花とまごころ』1933年)は、「生まれて何も知らぬ吾子の頬に/母よ 悲しみの涙をおとすな」で始まる。「母よ 絶望の涙をおとすな」で終る詩は、竹内てるよの貧困と病による過酷な人生とも重なり、2002年美智子皇后のスイスでのIBBY(国際児童図書評議会)大会での講演で紹介された作品としても知られる。 

 第2部は、戦後に作曲された大塚楠緒子「お百度詣」(1953年)と与謝野晶子「君死にたもうことなかれ」(1953年)から始まった。いずれも反戦詩と言えるものだが、前者は、独唱用、合唱用に作曲されたものをピアノとバイオリンで演奏され、後者のソプラノの力強さとピアノの連打は圧巻であった。与謝野晶子の詩の強いメッセージ性が胸に迫る。最後の「ソナタ・ニ調」は、演奏時間も長く、落ち着いて聴き入ることが出来た。 

なお、プログラムの演目が終わると、各演奏者が、吉田隆子との出会いや演奏の感想などを語るコーナーもあった。全員が、彼女の曲の力強い、突き動かされるようなメッセージ性に触れていた。アンコールの最後は、オペラ「君死にたもうことなかれ」から、吉田隆子の詩、讃美歌「雪よりも」が演奏者全員で演じられ、幕は降りた。詩も曲もとても分かりやすく、すがしい思いで会場を後にするのだった。

下は、当日のプログラムの表紙です。↓
http://dmituko.cocolog-nifty.com/yosidatakako.pdf

<追記>

なお、今回のコンサートの主催者の前代表、小林緑さんの「顛末記」が下記に掲載されています。(JNP通信2013年5月6日)

http://www.news-pj.net/npj/kobayashi-midori/20130506.html

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