「雪よりも、雪よりも、白くなし給え、君がみめぐみに」~「吉田隆子の世界」聴きにいきました
この2月に、NHKのETV特集「吉田隆子を知っていますか」の再放送を見て、このブログでも吉田隆子に触れた。4月10日は、「吉田隆子の世界」を聴きにルーテル市ヶ谷センターまで出かけた。
参照:2月10日記事
ETV特集「吉田隆子を知っていますか―戦争・音楽・女性」(2013年2月2日再放送
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2013/02/etv201322-6f37.html
開演まで30分近くあるというのに、満席に近く補助椅子まで用意されていた。 作曲家、隆子のデビュー作は2分弱の小品「カノーネ」(1931年。ピアノ:山田武彦)の軽快なカノンで開幕した。あとは作曲の暦年順に演奏されてゆく。ものがなしい旋律の「ポンチポンチの皿回し」(1929年、1931年改作。ソプラノ:波多野睦美、山田)、「青年の歌」(1933年。バイオリン:大谷康子、中川直子)は、二つのバイオリンだけの演奏で前半後半の躍動と静寂のコントラストが際立っていた。戦前は演奏されることがなかった混声合唱曲「小林多喜二追悼の歌」(1933年。山田、大谷、中川)は、男性パートがピアノ、女性パートが2本のバイオリンという見立てで、沈痛な中の力強さ、ラストのバイオリンが強烈であった。ゲーテ『ファウスト』から「蚤の唄」、シラー『群盗』より「ヘクトールの別れの歌」、いずれも、吉田隆子の伴侶、久保栄による訳詩を山田のピアノで波多野が歌い上げた。一部の締めくくりの『組曲・道』(1948年)で、歌われた竹内てるよ「頬」(『花とまごころ』1933年)は、「生まれて何も知らぬ吾子の頬に/母よ 悲しみの涙をおとすな」で始まる。「母よ 絶望の涙をおとすな」で終る詩は、竹内てるよの貧困と病による過酷な人生とも重なり、2002年美智子皇后のスイスでのIBBY(国際児童図書評議会)大会での講演で紹介された作品としても知られる。
第2部は、戦後に作曲された大塚楠緒子「お百度詣」(1953年)と与謝野晶子「君死にたもうことなかれ」(1953年)から始まった。いずれも反戦詩と言えるものだが、前者は、独唱用、合唱用に作曲されたものをピアノとバイオリンで演奏され、後者のソプラノの力強さとピアノの連打は圧巻であった。与謝野晶子の詩の強いメッセージ性が胸に迫る。最後の「ソナタ・ニ調」は、演奏時間も長く、落ち着いて聴き入ることが出来た。
なお、プログラムの演目が終わると、各演奏者が、吉田隆子との出会いや演奏の感想などを語るコーナーもあった。全員が、彼女の曲の力強い、突き動かされるようなメッセージ性に触れていた。アンコールの最後は、オペラ「君死にたもうことなかれ」から、吉田隆子の詩、讃美歌「雪よりも」が演奏者全員で演じられ、幕は降りた。詩も曲もとても分かりやすく、すがしい思いで会場を後にするのだった。
下は、当日のプログラムの表紙です。↓
http://dmituko.cocolog-nifty.com/yosidatakako.pdf
<追記>
なお、今回のコンサートの主催者の前代表、小林緑さんの「顛末記」が下記に掲載されています。(JNP通信2013年5月6日)
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コメント
初めまして。
ブログ初めて拝見しました。
過去の記事から社協関連の記事を何点か読ませてもらいました。
僕は社協に入職したばかりです。ついこないだまでは民間で働いていたので、社協に入って民間とのいろいろなギャップにショックを受けながらこのブログを見つけました。今後も勉強として講読させていただきますのでよろしくお願いします。
投稿: 社協丸 | 2013年4月23日 (火) 16時18分