「公平な選挙報道」って~各党への時間配分の基準とは
議席数で割り振るということは
いつも不思議に思っていたことがある。NHKの国会討論会、党首討論会、そして、昨日、選挙前日のNHK「ニュース7」(午後7時~7時30分)「参院選特集9党首選挙戦に密着」(午後8時~9時15分)を見ていて、これっておかしくないかの思いが、また頭をもたげる。ちなみに、以下は、昨夜の党首密着番組における、私が部屋の壁時計によってはかった大雑把な時間配分である。番組では、前半と後半で同じ順序で二順した。分数は、あくまでも目安としたい(合計すると72分にしかならないし、放送終了後、番組担当者に問い合わせたところによると、1順目の安倍党首は9分55秒だったという)。だが、微妙な配分の違いはわかるだろう。下記のPDFをご覧ください。
各党首の映像放送時間(2013年7月20日「参院選特集9党首選挙戦に密着」 http://dmituko.cocolog-nifty.com/kakutousyunohousoujikann.pdf
上記番組の終了後、NHKコールセンターに電話した。オペレーターに「各党首についての放送時間が異なるのはなぜか。時間配分は何を基準にしているのか」と質問すると、「ちょっと待ってください、資料?を見てみます」としばらく待たされた。「番組担当の者に替わりますから、お待ちください」とのこと、珍しいことだ。コールセンターは、番組担当者につなぐことはしない、意見として必ず伝えますから、というスタンスなので、本来ならば当然のことながら、いささか驚いた。替わって、Iと名乗る担当者に同じ質問をする。
Q: どうして各党首についての放送時間が異なるのか。
A: NHKの判断だ。
Q: 何を基準に判断するのか。
A: 先ずは「衆参両院の議席数」、あわせて「国政参加の状況」などを基準に決める。
Q: 「国政参加状況」って、具体的にいうと・・・。
A: 大臣経験者の数、予算委員会への委員選出の数などだ。
Q: その基準でいくと、与党への放送時間配分が、あきらかに多くなるが、それで
も公平と言えるか。
A: それが公平だと思っている。
この時間配分の基準については、NHKが明言したのを初めて聞いた様な気がする。これまでの申入書などへの回答では、公職選挙法あるいはNHKのガイドラインに沿って中立・公正・公平に対処している、程度の抽象的な文言であることがほとんどであった。かなりストレートに回答したな、という思いがよぎる。このあと、私からは、二つの基準と言っても要は議席数配分に集約されるから、現有の議席数のみが二重にも何重にも、放送時間を縛ることになるのは、選挙報道として公平と言えるか疑問であると。それに加えて 、受信料によって成り立つ公共放送NHKが、各政党への放送時間の配分を独自の基準で決めているなら、その旨、判断の基準を番組内で堂々と放送すべきではないのか、と話した。「コールセンターにお問い合わせがあった場合に応えています」とのことだ。放送時間については、「与党や多数党に他党と等分の時間しか与えないことこそ不公平であるというご意見も頂いているので、不公平とは言えない」とも答えた。後者については、意見として伺っておく、との回答だった。
放送時間の配分もさることながら、選挙報道番組の中身も大いに問題なのである。各党の公約、選挙の争点、争点隠しなどを選挙民に提示するのが、選挙報道のカナメではないのか。 視聴者としては、党首がどんなジュースを飲んでいるか、昼食が讃岐うどんなのか、回転ずしなのか、サンドイッチなのかよりも知りたいことが沢山ある。投票日の直前にこそ、「党首密着」、個別の「党首に聴く」の類ではなく、一堂に会しての、党首の「討論」が必要なのではないか、と思う。ディベイトにさらされることで明らかになることも多いはずである。
選挙報道、メディアを質す
選挙報道の公平性について、偏向報道については、昨年の12月の総選挙の折も、すでに、いくつかのジャーナリストや市民の団体が、報道機関に申し入れをしている。
・NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ(2012年11月27日)
「総選挙にあたって争点提示型の公平な放送を要望します」
(NHK会長 松本正之、NHK放送総局長 石田研一あて)
・放送を語る会・日本ジャーナリスト会議(2012年11月28日)
「有権者の判断に役立つ公正、公平で充実した選挙報道を求めます」
(NHK、民間放送局各社、新聞社各社 報道・編集責任者あて)
また、昨年12月の選挙報道の実態調査を踏まえて、今回の参院選挙向けに出されて質問書、申入れ書もある。
・「選挙誘導やめてんか!」市民集会実行委員会(2013年5月31日)*京都の市民団体
「<選挙誘導やめてんか!>市民集会へのご出席のお願いと宣教報道に関する質問」(全国紙各社、通信社、京都新聞、NHK、民放各社、KBS京都放送、関西テレビあて)
・放送を語る会・日本ジャーナリスト会議(2013年7月2日)
「参議院選挙に際し、公正、公平で充実した選挙報道を求めます」
(NHK、民間放送各社、報道・編集責任者あて)
なお、今回の9党首の中には、「緑の党」党首は、新党大地、幸福実現党と共に入っていなかった。売名的な「泡沫」政党、候補者という言い方があるが、この判断はかなり難しい。緑の党は、つぎのような声明を出している。
・緑の党グリーンズジャパン(2013年7月14日)
「参院選比例区報道における<政党>の取り扱いについて」(報道各位)
相変わらずのNHK「ニュース7」
投票日前日、7月20日の「ニュース7」を見ていて、やはり驚いてしまった。オープニングの映像は、参院選と夏休みの子どもたちであった。ニュースの第1項目が参院選で、追込みの9党首の映像が流れた。9党首の順序は、8時から放送の9党首密着番組と同じだった。あとからの問い合わせで確認したところによれば、全体的に短い時間の中(5分)、数十秒単位で、各党首の放送時間が異なっていたのだ。そして、次が、夏休み最初の週末ということで、田んぼの中で泥だらけになって綱引きをしたり、北国から運んできた氷で遊んだりしている子供たちの映像が流された(2分30秒)。「タノシカッタ!」という子どもの顔のアップで終るワンパターンの映像である。それに続いたのが「オリガミの原理が科学的にさまざまな場面で活用されている実態」(4分)さらに、続いたのが「ブルース・リーの没後40周年追悼」(3分)であった。ブルース・リーに至っては、念入りな挌闘場面が続き、顔面から血を流すシーンまで夕食時に放映していたことになる。「オリガミ」と「ブルース・リー」は、いわゆる「ヒマネタ」で、この日に流さなければならない必然性がまったく見当たらない。
今回の参院選について、選挙前日にふさわしい各党の政策や争点をテーマにしないのであろう。意図的に、他の話題に振ったとしか考えられなかったのだ。公共放送のなすべきことをなさずに、無関心を助長し、挙句の果て多数党へのすり寄りを明確にした報道ではなかったか。
日常的にも、政治への関心を高め、政治活動の多様性を引き出し、少数政党の活動にも着目しながら、投票行動への参加を呼び掛けるのも公共放送の大事な仕事の一つと考えられる。にもかかわらず、NHKは、目前の与党・政府への大いなる加担を正当化しようとしているとしか思えない。ひいては、政府広報に甘んじている報道には、目を覆うものがある現状である。
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コメント
同感です。昨晩(2017年10月21日9時からのNHK特番)の放送も完全に安倍に有利な内容でした。時間は長い、さも国民のためにきちんと仕事をしているというような演出でした。
NHKの抗議のメールをすると現状の議席数を勘案しているとの回答。これが受信料をとっている公共放送の方針とはおかしな話。投票日の前日にこんな番組が許されるのでしょうか。是非問題提起してください。
投稿: 田中 完三 | 2017年10月22日 (日) 15時03分
NHKは(他のマスコミも)完全に国民をなめきっている。私は7/21日20:00での当確情報は、不正選挙と連動しているとにらんでいます。その事で現在NHKと議論を始めました。もちろん例えそうであったとしても白状するわけがありません。でも回答の中からNHKの体質、疑惑度を引き出せば成功だと思っています。FBでその経緯を投稿しています。ご覧いただければ幸いです。木村康一
投稿: 木村康一 | 2013年8月 7日 (水) 13時13分
記事を見て同感!と思わず頷いていました。
公共放送と言う割には与党寄りの姿勢に疑問を感じます。
本当に公共放送としての意識を持って報道しているとは思えません。
投稿: チベットのトマト | 2013年7月22日 (月) 21時09分