シンポジウム「このまま進めて大丈夫なの?TPP交渉」に参加しました
15日未明からは、関東地方も台風の影響を受けるという。14日は朝から蒸し暑い一日だったが、午後から下記のようなシンポジウムに参加してきた。留守番の老犬が心配で、やや端折って会場を後にした。会場は、補助席を入れても350席、消防法上入室できなかった方々は別室での中継があり、400名を超えたという。配布資料が足りず、スタッフは、近くのコンビニのコピー機まで走ったそうだ。
これまでも、各分野からのTPPへの疑問や反対の意見は、断片的に見たり聞いたりしていたが、この日は、短い時間ながら、TPP参加後の各界が深刻な状況になることが報告された。
日本医師会の中川さんからは、日本の医療の「規制緩和」は、医療の質的低下と医療費の高額化をもたらす。「国民皆保険」を維持するという政府の言い分は「保険外併用療養制度」によって、保険診療対象を狭め、保険外診療の拡大と高額化を前提にしての維持に過ぎない。「規制改革会議」は2013年7月26日、当面の最優先課題を「保険診療と保険外診療の併用療養制度」をあげている。保険外診療が増えれば全額自己負担だから、富裕層しか受診できない。保険の需要は拡大し、しかも外国の保険会社の参入がさらに緩和される。7月26日、アフラックのがん保険が日本郵政に導入され、郵政からは単品のがん保険を売り出せないことになるという事態にまで進んだ。「アフラックのがん保険」にはそういう意味があったのだ。冷静で分かりやすい説明に納得することが多かった。
「保険外診療の併用療養制度」のリスクを力説する中川さん(右)
パネリストの冒頭発言に続いて、関税分野と非関税分野とに大きく分けて、パネネリスト同士の議論や会場からの質問に答えながら、進行した。以下は、その辺をまとめて、私の印象の限りでまとめたので、詳しくは、つぎの映像で全貌を見てほしい。
■ IWJによる動画中継:
【Ch6】13:30~「シンポジウム『このまま進めて大丈夫なの?TPP交渉』」
視聴URL:http://ustre.am/uy8q
■全国農業協同組合が独自に手配した業者に動画中継
サイトURL: http://www.ustream.tv/channel/tppsymposium
(いずれも冒頭、CMがかぶりますが、CMが終わったら、カーソルをスタートまで戻すと、CMなしで視聴でき ます。
十勝の高橋さんからは、TPPによる十勝への影響試算において、小麦・ビート・ジャガイモ・酪農・肉用牛・豚において、5037億のマイナスとなり、4万人の雇用喪失となることが報告された。これは十勝ばかりでなく北海道全域の経済にも壊滅的な影響を与えることを示す試算だ。決してあきらめることなく子供たちのためにも、TPPから地域自体、経済、生活を守る決意と全国的な連帯を訴えた。
農協中央会の小林さんからは、TPPはアジアの農業の多様性を維持できない、食料については、関税撤廃の前にやるべきことは種々あるはずである。日本は農産物の輸入国であるが、工業製品輸出拡大のしわ寄せを農業が背負うことになってはならない。重要品目といったところで、いわゆる「調整品」という名の関税逃れの輸入が横行することにもあるだろう、と。「調整品」の意味も初めて知った。
大学教員の会の鈴木さんは、なかなか威勢のいい発言がとび出し、会場を湧かせる。政府発信のうそと密室交渉の現実を鋭く指摘し、10年先すら見据えることなく目先の利益だけに左右される推進派を糾弾する。
主婦連の山根さんは、消費者の立場から、食品の安全・安心対策の後退、自給率の急激な低下をもたらし、サービス・制度の規制緩和・撤廃は、医療や教育の質の低下をもたらし、TPP参加に断固 反対してきた経過が報告された。
弁護士のネットワークの杉島さんからは、TPPの目的は、多国籍企業の活動を最大限に保障するところから、物品・サービスへの規制緩和により、労働・消費者・環境を守るための経済活動への規制や伝統文化・地域経済の保護が、差別的として排除され、社会的立法がすべてTPPルールの制約を受ける。ISD条項によって訴えられ、日本の司法は機能しなくなる。日本国憲法の国際協調主義は、条約の上位性認めているから、法律・条例はTPPルールの範囲内にとどまり、立法権の侵害は明らかで、国民主権は多国籍企業主権にとってかわられる。実にショッキングな指摘でとなった。
いずれの発言からも、ISD条項と秘密裏交渉への危機感が訴えられていたと思う。多くを知らされなかった国民が開かねばならない扉は重いが、力を合わせたい。
コーディネーターはじめスタッフの皆さま、ほんとうにお疲れ様でした。
=======================
シンポジウムの概要
1. 名 称: シンポジウム「このまま進めて大丈夫なの?TPP交渉」
2. 日 時: 2013年9月14日(土)13時30分~16時30分
3. 場 所: 文京シビックホ-ル・小ホ-ル 東京都文京区春日1-16-21
4. 主 催: TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会
TPPに反対する弁護士ネットワ-ク
主婦連合会
5. <特別スピーチと質疑>
中川俊男さん(日本医師会・副会長)「TPPと医療」
<パネル討論>
・小林寛史さん(全国農業協同組合中央会・農政部長)
・山根香織さん(主婦連合会・会長)
・杉島幸生さん(TPPに反対する弁護士ネットワ-ク)
・鈴木宣弘さん(TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会、
東京大学大学院教授)
・高橋正夫さん(TPP問題を考える十勝管内関係団体連絡会議代表、
十勝町村会長・本別町長)
<特別報告>
内田聖子さん(アジア太平洋資料センタ-PARC事務局長)
<コ-ディネ-タ->
醍醐聰さん(東京大学名誉教授)
6.賛同団体: 市民・消費者・婦人・医療関係団体、労働組合、
生活協同組合、 農協関連団体など31団体
=======================
①「私の食の安全も考えてね」
②十勝からいらした高橋さん(中央)
③十勝、今年3月の4300人集会
④報道関係者は40人程来られたが
(時事通信社ニュース速報2013年9月14日)
http://news.nicovideo.jp/watch/np649999
(「十勝毎日新聞」2013年9月15日、13時46分)
http://www.tokachi.co.jp/news/201309/20130915-0016625.php
(新聞「赤旗」2013年9月15日3面)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-09-15/2013091503_01_1.html
(「日本農業新聞」2013年9月18日)
| 固定リンク
コメント