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2013年10月24日 (木)

赤い羽根募金、社協の会費って、個人の自由ですよね!「希望ヶ丘自治会、募金等の自治会費上乗せ決議無効判決」勉強会に参加して

 10月に入ると、しばらく、このささやかなブログにも、アクセスが少しずつ増えてきます。例年のことながら、街頭や自治会で赤い羽根の共同募金が始まったからだと思います。私は、ブログ開設の2006年以降、自治会における寄付・募金の在り方、自治会員において、募金等が強制ないし事実上強制に近い状況で集められていることの違法性について書いてきました。それらの記事へのコメントも読んでいただきますとわかるように、多くの意見や実践記録が寄せられています。
 
それに先立ち、私自身は、自治会役員時代に、会員の皆さんと日赤の社資と社協会員募集・集金について、少しでも募金の任意性を担保するための改善を図り、定着して10年余になります。近年は、市内の有志で、各自及び近隣の自治会の集金実態調査、佐倉市や佐倉市社会福祉協議会と意見交換や申入れなどをしてきました。そうした活動の励みになったのは、個人的には、私のブログ記事への全国各地からのアクセスやコメント、さまざまなサイトでリンクをしていただいたことでした。さらに、大きく背中を押されたのは、2007824日の大阪高裁の判決、翌2008年年43日の最高裁による上告棄却、大阪高裁判決の確定判決でした。

 では、その判決の内容とは何であったのか。概略は、新聞報道やネット上で知ることができましたが、件の高裁判決文自体がオフィシャルな判決集に登載されないこともあって、全貌がわかりにくかったのです。私たちの市民有志の間からも、じっくり勉強してみようということになって、10月初め、勉強会が開かれました。その時の、私のレポートのレジメを少し書き直し、その一部を記録にとどめておきたいと思います。内容的には、これまでの記事とほとんど重なりますが、参照すべき原資料のURL も付しましたので、あわせて、ぜひ原文にあたってほしいと思います。

 滋賀県甲賀市希望ヶ丘自治会のケースの実態、訴えた会員5名の主張、訴えられた自治会(役員)の主張、大阪高裁の結論に至った理論構成、判決を受けての全国社会福祉協議会の通知の内容、をぜひ確かめていただきたいと思います。私たちは、この判決後の佐倉市役所と社協の対応についていくつかの疑問点を指摘してきました。わずかながら、私たちの意見を取り入れられた部分もありますが、基本的な姿勢の改善が見えてこないのが現状です。

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「<希望ヶ丘自治会>の募金等の自治会費上乗せ決議の無効判決」について

1.事実の経過:

20063月:希望ヶ丘自治会(940世帯、加入率89%)は定期総会において、自治会費を年6000円から8000円に増額を賛成多数で決議、2000円分は日赤・社協・小中学校後援会などの会費に充てるとした。

・その後の役員総務会で、増額分の支払いをしない者は、自治会離脱届の提出を求め、市からの配布物を配布しない、災害・葬儀等に協力しない、ごみステーションを利用させない、など決議した。

・会員5人(原告)が、思想及び良心の自由を侵害し公序良俗に反するから、決議は無効と自治会(被告)を訴えた。

2200843日最高裁確定判決までの経過:

20061127日(一審)大津地裁判決  会員5名の請求を却下、会員控訴

2007824 (控訴審)大阪高裁判決 一審判決を破棄、自治会決議無効の判決*

200795日  自治会が最高裁に上告

200843日 (最高裁)上告を棄却、控訴審・大阪高裁判決確定

*全文収録http://www.kcat.zaq.ne.jp/iranet-hirakata/text-070824akaihane-osakakouhan.htm

http://bkref.web.fc2.com/ok070824.htmlなどにもあり)

 

3.判決の内容のポイント        

 

会員5人(控訴人)

 
 

 自治会(被控訴人)

 
 

①各会は自治会とは別個のもので、寄付や加入は個人自由で憲法19条思想信条の自由、21条結社の自由を侵害する。

 

②当自治会は地方自治法の「地縁による団体」の認可を得ている。住民の加入の自由、民主的運営、差別的扱いの禁止を定める。増額分を支払わない者への差別は同法違反。

 

憲法22条①居住の自由に違反  

 

よって、諸人権規定違反は、民法90条の公序良俗に違反し無効。

 

 

 

①各会への寄付金支出は自治会の目的の範囲内で、会員は決議による会費負担の義務を負う。

 

②自治会は、会員総意による運営をしており、各会は地域社会に資する団体で、そこへの寄付は地域社会や会員の福祉にかない、自治会の目的に沿う。

 

③自治会費上乗せによる募金・寄付金の徴収方法は、住民の高齢化・集金業務の負担大に伴い、住民の強い要望により決議したもので、全国的に見ても一般的で合理性、必要性がある

 

<判決理由>

①募金及び寄付金は、その性格から、その使途如何を問わず、すべて任意になされ、強制されるべきではない。それは決議以前の自治会員の募金及び寄付金への対応が多様で、さまざまな価値観、思想信条は十分尊重されなければならない。

②その支払いを事実上強制され、社会的に許容される限度を超えるときには、思想・信条の自由を侵害するものとして民法90条の公序良俗違反によりその効力が否定される場合もありうる。

③本件自治会決議は、強制を伴うとき、会員の任意の意思決定の機会を奪うものとなる。

④地域住民の日常生活に支障をきたすような差別が、自治会未加入者になされることは、会員の脱退の自由は事実上制限されているものと言わざるを得ない。

⑤規約上の脱退を求めない会費不納付者扱いでなく、増額分を支払わない会員に対して会費全額の保留扱いとしているからといって、将来も脱退を余儀なくされる恐れがないとは言えない。 

<結論>

本件決議に基づく増額会費名目の募金及び寄付金の徴収は,募金及び寄付金に応じるか否か,どの団体等になすべきか等について,会員の任意の態度,決定を十分に尊重すべきであるにもかかわらず,会員の生活上不可欠な存在である地縁団体により,会員の意思,決定とは関係なく一律に,事実上の強制をもってなされるものであり,その強制は社会的に許容される限度を超えるものというべきである。

したがって,このような内容を有する本件決議は,被控訴人の会員の思想,信条の自由を侵害するものであって,公序良俗に反し無効というべきである。

 

4.判決後の全国社会福祉協議会の対応

①社協会費等の納入方法に関する考え方について(2007927日、全社地発第231号)

 (都道府県及び指定都市社会福祉協議会あて通知)

「自治会の決定による社協等の会費や共同募金会への寄付金の一括徴収について違法と判断を下したものではなく自治会の意思決定を行うにあたって『募金及び寄付金に応じるか否か、どの団体等になすべきか等』について各会員に任意の態度、決定を十分尊重すべきことを求めたものである。

*全文http://dmituko.cocolog-nifty.com/zensyakyo2007.pdf

②社協会費等の納入方法に関する考え方について(2008430日、全社地発第25号)

(都道府県及び指定都市社会福祉協議会あて通知)*

「・・・確定した判決は、自治会として社協会費納入の協力や、社協会費を含めて自治会費を集めることが違法であるとの判断を下したものではなく、自治会がその意思決定を行うにあたって、本件決議が『募金及び寄付金に応じるか否か、どの団体等になすべきか等』について『会員の意思、決定とは関係なく一律に、事実上強制をもってなされるものであり、その強制は社会的に許容される範囲を越えるもの」であったことが問題とされたものであり、・・・」

「自治会費と一括して会費を集める場合・・・、社協会費の納入が任意であることを明示したり、社協会費専用の封筒を用意するなどの工夫が必要になる。・・・」

*全文http://dmituko.cocolog-nifty.com/zensyakyo2008.pdf

 

5.最近の佐倉市社協・佐倉市役所の対応

①佐倉市社会福祉協議会

「佐倉市の地域福祉を推進するために皆様に会員募集をお願いしています」(2013420日 佐社福第31号)(各地区代表者各位あて通知の付属)(地区代表者への説明会資料『佐倉市社会福祉協議会平成25年度会員募集関係資料』20134月所収)

「佐倉市社会福祉協議会の会員の募集にあたり、下記の点につきまして、特段のご配慮をいただきたくよろしくお願いいたします。

 (1)全世帯の皆様にぜひ会員になっていただき、地域福祉を推進する一員としてご参加をお願いいたします。

 (2)会員は自由意志によりご参加いただくことを尊重してください。

 (3)集金の際、市民の皆様が強制的に徴収されているような印象を受けないようご配慮をお願いいたします。

②佐倉市役所(自治人権推進課)

『自治会・町内会・区役員の手引き・平成25年度版 自治会・町内会・区活動Q&A』5

「Q:自治会等業務委託契約とはどのようなものですか

A:委託契約に基づく業務…①②③④()

⑤その他市長が必要と認める事項(日本赤十字社社資募集、愛の一円募金)

○社会福祉協議会が行う業務(会費・赤い羽根募金)は委託業務に含まれません。

○募金等は、個人の自由意思に基づくものです募金等を自治会費に上乗せして徴収するとした総会決議は無効であるとの判例(*H19.824大阪高裁)もございますので、自治会等におかれましても、募金等の取扱についてご配慮いただきますようお願いいたします。」 

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直近の以下二つのブログ記事もあわせて参照いただければと思います。

2013223 ()

社協会費の集め方、皆さんの自治会では??「自治会の自由」ではなく、「市民の自由」をこそ

http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2013/02/post-5d4d.html

2013429 ()

自治会は、いま、総会の季節~社協や日赤への募金はどうなっていますか~佐倉市の場合

http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2013/04/post-74bc.html

 

 レジメでの参照資料を精査していただくと、全社協の2回にわたる通知が、大坂高裁の判決を意図的に曲解しているのがわかります。佐倉市社協が発信する文書自体に矛盾があるのが分かると思います。「自由意思」をうたいながら「全世帯」の会員加入を依頼している点、また、配布資料には、各自治会等の500円×世帯数の目標額をかかげ、昨年度の納入額の実績一覧を付している点こそ整合性がないことを露呈しています。さらに、佐倉市社協は、上記の判決が出たことさえも、各自治会に通知することはありませんでした。佐倉市自治人権推進課による手引きに、注として書かれた太字の部分は、今年度の手引きに初めて書き加えられたものです。これは市民に発せられたと同時に、社協への指導方針でもあるはずです。社協が進める会費徴収の方法を黙認するのでなく、少なくとも、判決の主旨を周知徹底すべきだと思います。

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コメント

今年4月1日から自治会長になったものです。
なんと4月9日には日赤の協賛委員選出(自治会長)として、地区の日赤へ市長名で報告されていました(笑)

で、協賛委員ってなに?
わからないので調べました。
いもづる式に、日赤教の信者(協賛委員)にもされていました。
我市では、市の業務を滞りなく効率的に進めるのが最優先事項のようで、個人の思想信条信教の自由は建前のようです。

憤りのあまり唖然として、人権啓発の語源を知る機会を得ることができました。

インターネットを見ると、同じような視点で問題を見られている方がいることに安心しました(私は変人かと思っていた) パワーをもらったのでこれから関係先に突っ込みをいれてみます。

なにが言いたかったのか分からん内容かと思いますが、
当方はおおいに元気づけられました。
ありがとうございます。


投稿: 小女子 | 2015年9月 1日 (火) 22時57分

今年から自治会長になった者です。自治会の収支の1つ1つについては、そのつど書いています。年度終わりには、決算を公表します。「温一隅」でブログを検索してください。

投稿: きしずえ | 2015年5月14日 (木) 13時03分

自治会の予算書や決算書をブログなどで公表しませんか?

投稿: javatea | 2015年5月13日 (水) 18時47分

お訪ねくださりありがとうございます。お答えになるのかはわかりませんが、わずかな体験ながら、お伝えしたいと思います。日赤、社協などへの加入、赤い羽根募金、神社などへの寄付は、本来住民の自由であって、「自治会の自由」ではないはずです。
①自治会内でいまの方式を変えるのは、お一人ではなく数人で要望書を出して、自治会内で検討してもらい、会員全体の問題とすることではないでしょうか。
②市役所の自治会担当課に要望書や質問書を出すなり、出かけるなりして、上記のような寄付を自治会会計から支出すること、ないしは会費に上乗せして徴収することは、違法だし、判例にも反すること伝え、市内の自治会全体に、「寄付が個人(住民・会員)のに自由であること、自治会の自由ではないこと」を文書や説明会などで周知徹底してもらうこと
③日赤の市の支会、市の社協、神社の責任者宛に直接、②と同様のことを要望すること
などが考えられますが、とても根気のいる、難しいことにはなるかと思います。①②③は同時進行で、お一人ではなく、同じ考え方のが相寄って複数でなさることが重要ではないかと思っています。厄介なことですが、どうか、頑張ってくださいますよう。

投稿: 内野 | 2015年4月 2日 (木) 21時17分

こんにちは。はじめまして。三豊市住民と言います、最近、当自治会で隣自治会の神社の老築化による改修費の寄付を自治会に要請した件があり、そのおかしさにインターネットを調べていたところこちらにたどり着きました。総会で自治会費から数十万の寄付金を捻出しようとしていたので、強く抗議反対しましたが、結果多数決と言う事で数十万の寄付金を自治会費から出すことになりました。はっきり言って納得できません。
この様な場合、どの様な対策が適切なのでしょうか?ちなみに赤い羽募金や赤十字、社会福祉協議会の費用など、半強制的に会費にねじ込まれています。

投稿: 香川県三豊市の住民 | 2015年4月 2日 (木) 11時19分

現代の日本はおかしいこと、間違っていることを「昔から続いている」としてやめようとしないですね。
各地の町内会は未だに最高裁判決すら無視する始末です。

日本が落ち目なのも悪しき習慣を是正しようとしないからでしょう。
日本の中でも悪しき習慣が色濃く残っている地方(田舎)ほど崩壊が進んでいるのも当然だと思います。

投稿: カオタロウ | 2014年3月18日 (火) 17時19分

小市民さん、ほんとうにおっしゃる通りですね。その自由な選択ができない、しにくい状況を自治会などを利用することによって作り出し、自治体は見て見ぬふりをしているか、もっと積極的に加担しているのではないかと思います。寄付の募集団体、自治体に、いまの集金方法の違法性を訴えながら、少しの勇気で、別途の集金、寄付の上乗せ分、いずれにしても意に沿わないならば、拒否することが大事なのではと思っています。

投稿: 内野 | 2013年11月15日 (金) 11時27分

初めてコメントします。

寄付は任意で行われるべきものなので、
個人的には「どの団体に」「いくら」寄付しても
各自の自由だと思っています。
例えば赤い羽根共同募金じゃなくてもいいし、
目標額より多くても少なくてもいい。
生活が苦しければゴメンナサイしてもいいし、
信条に合わないと思えば断固拒否したっていい。
もちろんそれを他人に知らせる必要もないし、
上意下達で決められることでもないと思います。

でも町内会・自治会での現実は違います。
私の実家のある自治会の場合は、
「目標額×世帯数」の金額を昔から予算に
組み込んでいます。

もしかしたら当方の自治会の人々は
「<希望ヶ丘自治会>の募金等の自治会費上乗せ決議の無効判決」
の存在を知らない恐れすらあります。
自治会の中には民生委員や社協関係者もいて、
誰一人知らないわけはないはずですが、
彼らは自分たちに不利になりそうな情報を自ら
わざわざ発信するはずがありません。

これまで私自身が自治会の総会に参加したわけでは
ないので、無効判決の前か後かさえ不明ですが、
当家以外の自治会会員から共同募金に関する
質疑が出るたびに、
「今までこれでやってきたんだから
このまま変えなくていい」
と自治会の執行部が握りつぶしていた模様。

本来、この問題は自治会費の増額を伴うかどうか
ではなく、自治会予算で各世帯の意思を反映
せずに一律で「目標額×世帯数」を支出して
いることが思想・信条の自由に反していて
問題となっているのであって、決議が無効であるはず。

それにもかかわらず、社協関係者の住民は目標額
達成が自分たちのステータスに関わるのか当方は
知りませんが、とにかく必死になっています。
「戸別徴収」の代用だから各世帯の意思確認が
必要になるなら、「戸別徴収」の代用にならない
ように自治会予算から支出させる方法
(思いついても具体的な方法をここには
書けませんが)
を彼らが模索していても、仮にすでに実施して
いたとしても何の不思議もありません。

長文失礼いたしました。

投稿: 小市民 | 2013年11月15日 (金) 08時00分

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