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2013年10月27日 (日)

文化功労者はどのように決まるのか~歌人岡野弘彦の受章に思う

 1025日、文部科学省から文化勲章・文化功労者の発表があった。その日の夕刊では、報道資料が配布されているのか否か不明だが、受章者の略歴を載せる新聞と載せない新聞があった。正式な発令は113日、例年、文科省からその名簿は発表されるが、受章理由の記述はない。肩書、専攻分野、顔写真のみである。文化勲章も文化功労者も、特定の著作、作品、演目その他の活動などを受章対象とはせず、総合的な評価ということになろう。

◇岡野弘彦氏(おかの・ひろひこ)89歳。歌人。国学院大在学中に折口信夫氏が指導する短歌結社「鳥船」に参加し、創作活動を開始。以後、常に第一線で活躍して戦後短歌史に大きな足跡を残す。83年から07年まで、宮内庁御用掛(御歌)を務めた。静岡県。(『毎日新聞』夕刊20131025日)

◇岡野弘彦氏(おかの・ひろひこ)89歳 歌人。折口信夫に学び、戦争体験と民俗的視点を生かした作風で、戦後短歌史に足跡を残した。歌会始選者などを務めた。98年日本芸術院賞、06年現代短歌大賞。(『朝日新聞』20131026日)

文化勲章は、前年までの文化功労者から選考されるが、文化功労者はどのように決まるのだろう。文科省に委員30人以内で設置される文化審議会の、国語、著作権、文化財分科会と並ぶ文化功労者選考分科会で選考される。選考委員は年度によって異なり7~10人で、多分野から候補者15人程度を選考する。「選考分科会で選考 => 答申 => 文部科学大臣 => 決定 => 発令」のような流れになるのだが、分科会の委員名の一覧は文科省のホームページではみられない。おそらく事前には発表しないのだろうけれど、過去の分もすべてネット上で閲覧できることにはなっていない。今年度の91日発令で次の10名が委員となった(http://www.art-annual.jp/news-exhibition/news/26326/)。

 内田伸子・漆原秀子・栗木京子・近藤信司・多田一臣・建畠哲・永井良三・中沢正隆・野沢美穂子・松浦寿輝

 肩書は、上記サイトで見てほしいが、文学関係では、栗木京子(歌人、現代歌人協会理事)と松浦寿輝(小説家、詩人)であった。

 今年の文化功労者は、15人で、

 日本画・文化財保護の上村淳之(80)、短歌の岡野弘彦(89)、邦楽の山勢松韻(80)、国文学の久保田淳(80)、ゲノム科学・国際貢献の榊佳之(71)、洋楽・文化振興の堤剛(71)、評論・翻訳の中井久夫(79)、細胞分子生物学の広川信隆(67)、建築の槙文彦(85)、半導体工学・電子産業技術の舛岡富士雄(70)、比較認知科学の松沢哲郎(63)、生物物理学の柳田敏雄(67)、社会心理学の山岸俊男(65)、中国思想史・中国史・国際貢献の吉川忠夫(76)、詩の吉増剛造(74

 

  多分野に及ぶ。文学関係の受章者は、短歌の岡野、国文学の久保田、詩の吉増ということになるが、全分野にわたり、委員10人の手におえる範囲ではない。当然のことながら、文科省サイドから提出される候補者名簿による選考になるが、その詳細はもちろん不明である。数多ある省庁の審議会の運営の例にもれず、意見を聞かれる程度であろう。今年の選考委員に、珍しく歌人の栗木が参加している。歌人が文化功労者となったのは、1996年の近藤芳美以来である。 歌人では、文化勲章の斎藤茂吉、佐佐木信綱(1951年)土屋文明(1986年)の3人を含め、窪田空穂(1958年)と近藤に続く岡野ということになる。

 

 先ごろの拙著『天皇の短歌は何を語るのか』(20138月)の「勲章が欲しい歌人たち」(初出『風景』20029月)では、これらの5人に「岡野が続くことになるのだろうか。たしかに<国家への貢献度>は高いが、過去の受章者たちに比べて歌人として、あるいは研究者として過去の業績にどれほどの説得力があるかが問われることになろう」と記したのだった(73頁)。

 

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