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2014年1月16日 (木)

歌会始2014、今後の行方

いつもさびしい皇族席

 昨日のNHKの「歌会始」中継は、初めて最初から終わりまで見た。やはりあの「披講」という読み方には生理的についていけず、画面を見ながら、太極拳の八段錦とラジオ体操第一を繰り返していた。1時間20分丸々というわけにも行かず、きつかった。

 それにしても、いつも気になるのが、平成に入って、出席する皇族方が少ないことである。今年は天皇・皇后以外は、向かって左には皇太子と秋篠宮の二人、右には、女性の秋篠宮の紀子さん、常陸宮の華子さん、三笠宮の彬子さん、高円宮の久子さんともうひとりの五人であった。雅子さんの欠席についてNHKの説明では一言触れていたが、あとは、だれが出詠し、誰が欠席なのかも明言しない。夕刊などで確かめると出詠者のみは分かる。三笠宮の信子さんが7年ぶりで出詠していることを報じている新聞もあった。高齢の三笠宮夫妻は歌会始に姿を見せなくなって久しいが、最近は常陸宮も参加していない。あと、秋篠宮、三笠宮、高円宮家の若い女性たちは、出詠はするものの参加するかどうかは、年によっていろいろのようでもある。出詠者は、宮内庁の発表で分かり、今年に至る5年間の実績は、12141512人、今年が14人であり、出席は、写真などにより、近年は、天皇・皇后と合わせて9人どまりである。

 今年の選者は、昨年に引き続き、岡井隆、篠弘、三枝昻之、永田和宏、内藤明、召人は芳賀徹。陪聴者は、各界から選ばれて招待されるらしい。歌壇からも何人かいて、ああそうか、あれ、あの人も・・・というような顔も見えた。有効な応募歌数21680首、去年・一昨年は、東日本大震災のためか18千首台であったから、直前の状況に回復したと言えるのだろう。入選者は15歳から83歳の10首、佳作に高齢者が多いのは、入選者全員が出席できるような配慮なのだろうか。

 国民と皇室の文化的な架け橋というより、いまは数少ない皇室と一部歌人との懸け橋に過ぎなくなってしまっていないか。

 

こんな風に進められていた

 これまで、あんまり関心が向かなかったが、披講の順序は、10人の入選者の年齢の若い順、その後に召人、選者では、今年は篠弘の歌であった。皇族からは、今年は三笠宮の彬子さんで、皇太子、皇太子妃、皇后、天皇という順は毎年同じなのだろう。「伝統にのっとた節回し」の披講だけでは、もちろん短歌は聞き取れないので、NHKの放送では、披講のさなかに作品が分かち書きされた画面がしばらく映しだされる。一首一首の披講の後半に作者の紹介や作品の解説がアナウンスされる。入選者の発表は、年末になされるが、入選作品は、当日までけして口外してはならないということで、事前に明らかにされることはない。しかし、NHKは、入選者の紹介と共に、入選作一首にまつわる作歌動機やエピソードなど周到に用意された原稿が読まれるのである。入選作、選者、召人と天皇・皇后を含む皇族方の作品解説は、報道関係者にはいつ配られているのだろう。少なくとも、NHKは、作品にまつわる解説や映像を用意していることからも、早くに伝わっているはずである。

 披講は、いずれの歌も1回だが、皇后が2回、天皇が3回で、披講されている作者だけが起立しているが、天皇の歌のときは天皇着席のまま、全員が起立ということになる。「歌会始の儀」の本旨からは、当然の成り行きなのかもしれないが、ここには、序列や男女の格差が当然のように前提として成り立っている儀式で、憲法を守りたいとするメッセージを発信している天皇の意向との整合性はどうなのだろう、などと考えてしまう。短歌人口からしたら、圧倒的に女性が多いし、活躍する歌人も女性が多い中で、選者という「特別席」は、女性には回ってこないのだろう。せいぜい一人というのが実績でもあり今後もそんなものかもしれない。入選作も男女比は微妙にバランスを取っているのではないか。

 

 

歌一首はもっと自由なはず・・・

 とくに、入選作のNHKの解説は、誰が原稿を書いているのかわからないが、むしろ不要にも思えたのである。以下、若い順の入選作四首だが、いずれも口語的な発想で、「俵万智」風の雰囲気を漂わせ、どこかで読んだような気もするような「相聞」に聞こえ、それはそれで「いまどきの」青春なのかな、と思ったりした。しかし、「解説」を聞いていて興味が半減してしまった。というのは、作者の説明だったのかもしれないが、どれも、はぐらかされたような感じで、作者の周辺を慮ったように思えてならなかったのだ。必ずしも恋人同士というわけでもなく、中学時代の思い出だったり、「大切な人」であったり、たんなる友人であったり、といった、当たり障りのない、優等生的な解説がなされたのである。

 

・吾の名をきみが小さく呼捨てて静かに胸は揺らいでしまふ

 福島県 冨塚真紀子さん(32

・静けさを大事にできる君となら何でもできる気がした真夏

 東京都 樋口盛一さん(29

・二人分焼いてしまつた食パンと静かな朝の濃いコロンビア

 東京都 中島梨那さん(20

・続かない話題と話題のすきまには君との距離が静かにあつた

 新潟県 加藤光一さん(16 

皇族方の短歌の解説は、以下の宮内庁の資料で分かる。しかし、宮内庁の「お墨付き」の解説や鑑賞が果たして必要なのだろうか、という疑問も去らない。

http://www.kunaicho.go.jp/culture/utakai/pdf/utakai-h26.pdf

 

歌一首は、もっと自由なはずではなかったか。

 

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