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2014年2月 1日 (土)

NHKの番組編集権とはなにか(2)1月30日「クローズアップ現代・東大紛争秘録」ラストの中断はなぜ

 「ニュース7」の流れでみていたが、また、何か、「幻のテープや記録が発見された」というパターンの番組だった。

いわゆる教養・ドキュメンタリー番組で、近現代史を扱うとき、発見された「記録」「証言」を辿って、当時の関係者や遺族の声を拾い、「苦渋の選択」であったというノスタルジックな結論と現代の私たちにも課題を投げかけているという、当たり障りのないメッセージで締めくくられるのが大方である。まさに、この現代の状況のなかに置きなおしたとき、何が問題なのか、差し迫って必要なことは何なのかの方向性を示すことは避けて、近現代史を扱うその姿勢に少々嫌気がさしている昨今である。「良心的な番組」と言われることも多いのだが・・・。

 いやこんな抽象的なことを言っていても、仕方がない。今回、NHKが入手したのは、「東大紛争」の収拾にあたった教授たち執行部の入試中止にいたった後の、反省を兼ねての座談会記録だという。その教授の一人の自宅の書庫にあったものである。実は、どの時点で開かれた座談会だったかの、誰が作成したのかも明らかにされていなかった。番組に沿って、各教授たちの発言を断片的に聞いていると、その焦点は、19691月の機動隊導入の経緯であり、入試中止の受け入れの是非であって、学生たちの当初の要求であった大学改革については、発言していたのかいなかったのか、番組では伝わってこなかった。結論的には、この収拾によって、以後、大学の自治は大きく変質し、後退していったことがわかる記録であった。ゲストは、松本健一であったが、この日の彼のコメントは、まっとうなものと思えた。資料に目を通した感想を問われて、つぎの2点を指摘した。資料や記録を残そうとしないのが権力者の常であるが、資料の検討や検証は今後の課題ながら、ともかくこういう形で、資料が出てきたことは貴重である。同時に、その内容に大学自治が守れなかったことと学生たちの問いかけたものへの考察は一切入っていないと述べていた。またコメントの最終盤で、「ちょうど東京オリンピックや大阪万博で、高度成長の真っただ中、世の中万々歳で進んでいくように見え、大学が、産業界の要請する人間を作るだけでいいのか、大学の役割が何なのかという疑問を投げかけた社会になったのは・・・」という主旨のことを述べていて、ゲストが「実は」と言いかけたところで、番組の音声も画像も突然打ち切られたのである。一瞬、緊急放送でもと思ったのだが、その後はなんと例の東日本大震災被災者への応援歌?「花は咲く」のメロディを流し続けたのである(画像は覚えていない)。「これって、何?!」松本さんは、何を言いかけて切られたのか、何を切られたのか、発言者への礼を欠くばかりか、視聴者もあっけにとられたのは私ばかりではなかったようだ。翌日、視聴者センターに電話をして確認すると、担当者からのお詫びと説明がありますと、電話口で読み始めた。すると、「実は」のあとは「われわれも」の5音であったと言うのである。

問「そのたった5音を切ったのはなぜか」

答「時間切れだった」

嘘のような本当の話、信じられますか。幾らストップウオッチで一秒が問われる世界ということであっても、まさに一秒あれば、切らずに済んだものを。しかも、後に重要な番組や緊急性の放送が控えているのでもなく、この硬直的な編成は、意図的なものさえ感じてしまう。

問「切ったことはミスだったのか、人為的なものだったのか」

答「時間が来たから」

問「お詫びと復元について、放送後、アナウンスはあったのか」

答「ない。深夜の再放送の時は、復元した」

 現場の担当者に確認や実情を聞きたいのだがと言ってみるが、「いたしません!」というのが相変わらずのセンターである。ほんとうに視聴者からの声が一方通行でいいのか。受信料払って、欠陥商品を買ったような気がしてくる。「お客様一人一人に応えられない」というのが視聴者対応の一貫した姿勢である。

 今日になって、NHKホームページで「クローズアップ現代」のサイトを見てみると、この番組が「丸ごとチェック」ということで、読み上げ原稿の再録がある。しかし、「実は、われわれも」の該当部分がない。これも不思議な話ではある。

 

追補(2014214日)

 

この「放送中断」については、ネット上でも、若干の指摘や抗議は見受けられたが、NHKの回答であった「時間切れ」以上の事実は分からなかった。マス・コミでは、この件について言及する記事は見当たらなかったが、きょう214日になって、東京新聞の【放送&芸能】コラム(「えきすとら~記者コラム」)に出会った。記事では、この番組のスクープ性と内容を好意的に紹介していた。「実は」で途切れたことに触れて、またも「番組改変」かと思いきや松本健一氏への取材を踏まえて、「単純な時間切れ」であったことを報じている。いずれにしても26分という番組の短さに触れ、松本氏の「言い尽くせなかったことは現代につながる問題を含め、いずれ明らかにします」との言葉とともに「東大など若者の氾濫は産業や体制に奉仕する学問を〈産官学共同〉として批判するなど、311大震災と原発事故を経た今、振り返るべき問題提起」があった番組だと評価していた。

まだ、素直に読めない私がいて、松本氏も、NHKとはもめずに、次につなげた感があった。大人の対応?というべきなのか。

 

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コメント

番組の音声も画像も突然打ち切られたのである。一瞬、緊急放送でもと思ったのだが、その後はなんと例の東日本大震災被害者への応援歌?「花は咲く」のメロディを流し続けたのである。

この部分に私もうすら寒いものを感じました。納得のゆく回答が得られなかったことは「大人の対応?というべきなのか」で終わらせてはならない問題であること以外の何物でもありません。NHKの誰かの故意によるカットとしか思えません。

投稿: | 2014年3月12日 (水) 11時00分

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