佐倉市社協への人権費補助は、大幅に減額されたのか~その背後を探る
市内の友人から、「ことし、社協の人件費補助が大幅に減額されている!」とのメールが入った。「ほんと?」との疑問から調べてみると、たしかに、千万単位で減額されているのがわかった。しかし、結論的に言えば、それは単なる費目の付け替えだったのである。
自治体は地方自治法により、毎年10月、財政援助団体などの監査結果報告とその報告に基づいて講じた措置を公表することになっている。いま、市のHPでは平成19~25年度の監査結果と措置結果を閲覧することができる。そこでは、佐倉市の社会福祉協議会への「人件費補助」については、毎回、毎回、法人経営の見直し、職員の意識改革の必要が指摘されながら、いっこうに変わる気配がなかったのである。以下の表には、社協への経常経費補助、人件費補助、事業費補助などのその他の補助金の額を時系列でたどってみた。
近年の佐倉市から佐倉市社会福祉協議会への人件費補助の推移
http://dmituko.cocolog-nifty.com/syakyojinnkennhisuii.pdf
佐倉市でも1996年、行財政改革という時代の流れにのって、7年後に補助金のすべてを白紙に戻すという「大綱」が決定されたものの、一年延長、その間、2001年には個々の補助金の価値性・公平性・効率性などのチェックシートによる全体的な再点検を行うことした。2003年から第三者委員会、補助金検討委員会が立ち上げられ、全136件についての審査が行われた。という流れの中でも、社協への人件費補助の一件は、相変わらず、抜本的な改善がみられないまま、社協内部での不透明感や他の福祉関係団体との不公平性が引き継がれていた。チェックシートも第三者委員会も機能せず、2013年度まで、ほぼ同じ状況が続いていた。監査委員による「監査結果」のポイントは表にも記しているが、もう少し、詳細にたどってみると、監査結果の報告を受けた市長名による「措置結果」の記述に大きな変化が見られるのがわかるだろうか。以下のとおりである。
平成19年年度(2007年)には、つぎのようなに監査結果が出た。
「事業運営については、人件費をはじめとする多額の市補助金が充てられています。(中略)昨年度も指摘しましたが、抜本的な法人経営の見直しと市および法人職員の意識改革をはじめとする体質改善が不可欠です。平成18年度においては『検討すべき案件がなかった』として経営検討委員会が一度も開催されませんでした。市民の負託にこたえるためにも、さらなる使命感および緊張感をもって経営を行ってください」
これに対して、市長名の措置結果は「平成19年度の5つの重点実施事項が着実に実施されるよう指導してまいります。また、経営検討委員会の開催により法人経営の見直しが図られるように併せて指導してまいります」といった、まるでオウム返しのような文面であった。
平成23年度(2011年)の監査結果に、つぎのように、先進他市に学べと付け加えられた。
「佐倉市は、市社会福祉協議会に対して、人件費をはじめとして多額の市補助金を充てています。また、自治会・町内会に頼る会費収入にも限界があります。このための抜本的な法人運営の見直し及び市社会福祉協議会役職員の意識改革をはじめとする体質改善が不可欠です。引き続き、先進市の社会福祉協議会の運営状況などを参考にして経営改善方策を検討し改善を進めてください。」
措置結果として「佐倉市と同等かそれ以上の規模の他市(県外)の先進市社会福祉協議会の運営状況を参考にして、人事考課制度の有効活用や役職員の意識改革等経営改善が図られるように指導してまいります」と応えている。
平成24年度(2012年)においては、つぎのように、やや具体的な監査結果が出された。
「佐倉市社会福祉協議会事業推進費補助金の人件費分については、市の関係部署等と協議し、さらに対象となる職務内容や社会情勢についても考慮した上で、検討してください。社会福祉協議会が行う社会福祉事業は、市民からの会費と市の補助金が主な財源です。『社協さくら』やホームページ等に、市からの補助金の内容や職員給与についても掲載するなど、一層の情報公開に努めてください。」
市長名による措置結果の文面が変わった。すなわち、「社会福祉協議会に対し、措置結果を照会したところ、次のとおり報告がありました」とあり、従来の文言の主語は市長であったのに反し、「・・・協議してまいります」「情報公開に・・・努めてまいります」の主語は社協に変わった。これは何を意味するのだろう。市長は、行政の長としての「指導」を放棄し、財政援助団体に「丸投げ」をしたことになったわけである。
最も新しい、平成25年度(2013年)では、さらに具体的に「人件費の算定資料には、委託事業に係る人件費も含まれていることから、対象経費の見直しに努めてください」と指摘している。
これに対して、市長名による措置結果では、つぎのように社協からの報告という形式は前年度を踏襲し、「佐倉市社会福祉協議会事業推進費補助金につきましては、委託事業に係る人件費も含まれていることから、市の関係部署と協議しながら、委託事業に人件費を含めるよう見直しを進めてまいります」
そして、平成26年度の(2014年)の予算に行き着き、前年度の予算における人件費補助の7415.7万が今年度予算では一気に3935.0万に減額されている。なぜ?人件費補助金はすべて正職員に充てられていたので、職員が半減?そんなわけはない。今年度予算が掲載された「社協さくら」5月号では、何の説明がないので、社協に問い合わせてわかったのだが、従来の人件費補助には、委託事業の人件費も含まれていたので、それを「受託金収入」に入れることにした、というのである。上記、平成25年度の「監査結果」に見るように、「人件費の算定資料には、委託事業に係る人件費も含まれていることから、対象経費の見直し」の指摘に従って、「措置結果」では、委託事業の人件費は「受託金収入」繰り入れたことになる。
ということは、受託金収入における人件費を算定しなければ、平成25年度以前の人件費補助金との比較はできないことになる。ちなみに、参考までに「委託金」(平成24年度以降は「受託金収入」)の額を付記しておく。市から社協への委託事業は、昨年度から一挙に増え、受託金収入は、昨年が1億4000万円、今年が2億0300万円となった。たしかに、佐倉市社協は、成年後見支援センター、昨年10月から生活困窮者自立促進支援モデル事業の受託をしている(参考「社説・生活困窮者支援 お役所仕事ではできぬ」『毎日新聞』2014年2月9日、「困窮者の自立・就労支援」『朝日新聞』2014年6月4日)。
「成年後見支援」も「生活困窮者支援」も、どちらも個人や家庭のプライバシーに最も深く立ち入らねばならぬ仕事である。いわゆる「お役所仕事」ではできないことはもちろんだが、本来ならば「役所」がしなければならない仕事ではないか。安倍政権は生活保護費を削減しているので、生活保護に至る手前の支援に重点を置こうというものだが、相談者は社協の相談窓口で、ほんとうのことが話せるだろうか。担当者は、社協の正規職員なのか、嘱託職員なのか、非正規の専門職なのか。プライバシーはほんとうに守れるのか。各地で問題になっている生活保護受給申請の回避や不正受給者というレッテル張りによる受給申請への抑止につながらなければいいと思っている。最近の補助金検討委員会(2014年2月19日)でも議論されていて、社協職員採用基準が佐倉市職員と違うのに同様の待遇を受けるのはおかしいのではないか、人件費補助と委託事業の人件費がどうなっているのか、5月のヒヤリングまでには資料を作成してほしいなどの素朴な疑問が相次いでいた。
上記の表でもわかるように、社協への人件費補助は、何十年来、問題を指摘されながら、まるで既得権のように手離そうとはしない様相が明らかだ。そして自治体の方は、委託事業、指定管理者制度などのもとに社協を勝手よく使いまわすことによって、他の社会福祉法人や多数のNPO法人との差別化を図り、福祉において最も丹念に対応しなければならない人々を遠ざけてはいないか、不安なのである。
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