疑問の多い「まちづくり協議会」(2)市民協働推進委員会の事業申請審議から見えてくるもの
千葉県佐倉市は、いま、小学校の校区を単位に自治会や、社会福祉協議会、PTA,商店会などの諸団体を束ねて「まちづくり協議会」という団体を行政指導で作らせ、補助金を給付してその促進を進めている。間があいてしまったが、下記の記事では、補助金検討委員会の議論から見えてくる「まち協」への数々の疑問について書いているので、一覧の上、読み進めていただくとありがたい。なお、10月28日には、佐倉市のホームページに「補助金検討委員会の意見書」が公表されたので、あわせてご覧ください。
・2014年10月19日
疑問の多い「まちづくり協議会」(1)補助金検討委員会の議論から見えてくるもの
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2014/10/post-cedc.html
・2014年10月28日
補助金の在り方に関する意見書(平成26年10月 補助金検討委員会)
http://www.city.sakura.lg.jp/cmsfiles/contents/0000010/10496/25_00_ikensyo.pdf
我が家が属する自治会は、当小学校区に設立した「まちづくり協議会」には参加しないことになったが、市長が出席して設立総会が開催され、2014年7月に発足した。その後、佐倉市長により認証された「まちづくり協議会」の事業のための補助金申請に対して、市民協働推進委員会は、審議し、その可否を決定した。この委員会は、いずれの「まちづくり協議会」についても、「認証」した以上は、「今後の協議会の発展という観点も含めて前向きなご意見を頂きたい」(「平成26年度第3回市民協働推進委員会会議概要」2014年7月20日)、「まちづくり協議会の今後発展していくためにも委員の皆さんのご意見やアドバイスをお願いしたい」(「平成26年度第4回市民協働推進委員会会議概要」2014年9月21日)というスタンスである。しかし、引用した、この「会議概要」は、佐倉市のホームページで読めるのだが、肝心の申請書類として提出されている「事業内容」が示されないまま、委員たちの発言と質疑のみが採録されているに過ぎない。この「会議概要」を読んだ限り、何が議論・審議の対象になっているのか分からないまま、委員と当該まち協代表者との質疑が続くのである。もっとも会議の席上では、当然のことながら、申請書類の提供と事務局からの事業申請概要が口頭で説明されている。その口頭説明部分も省略されているのである。これって、会議録の役割を果たしているのだろうか。各まち協の事業内容は、非公開にすべき内容でもないし、なぜ公開しないのだろう。もし、個人情報が含まれるとしたらそこだけを非公開にすれば済むことである。どんな事業に補助金が出されるのかが、皆目見当がつかないのである。それが、私の疑問の一つであった。
また、私の住む小学校校区のまち協の事業申請について補助の可否を審議した市民協働推進委員会の会議概要を読んでみた。まえの関係記事でも書いたように、私たちの小学校校区の自治会の中で、二つの自治会が不参加である。「不参加の理由」を委員から質された、「まち協」代表者は一つは世帯数も少ない高齢者の多い旧集落で、もう一つは「新興住宅街で様々な考えを持つ住民が多い地区」だからと説明しているではないか。これが「理由」なの?よその自治会は一律の考えを持つ住民だとも言いたげである。旧集落の不参加の理由は、もっともなことだと思う。これ以上自治会の仕事を増やしたくないとの思いだろうと思う。新興住宅街の地区の自治会の不参加の理由は、別にあったはずであるが、それを聴く謙虚さがない。少なくとも現在の自治会や社協、自主防災会などが、それぞれ個別の役割を全うすれば、自治会の屋上に屋を重ねるような「まち協」は不要で、そればかりでなく各自治会の結束や機能を弱めることになる、というのが最大の不参加の理由であった。広域で対処しなければならないときは、その都度対応すればよいし、市役所が何かと強調する「共助」は、小学校校区単位ではなく、少なくとも自治会単位の、もっと狭い、顔が見える「ご近所」同志の助け合いではないのか。
蕨佐倉市長は、私たちの小学校校区の「まち協」設立総会に出席した、その日のブログに「まち協」の役割について「市役所からは眼が行き届かない地域課題について、地域の皆さんが、意見を出し合いながら、それぞれのノウハウを生かして、解決策を見出していく場を、制度として整備したもの」と書き込んでいる(2014年7月5日)。これって「市役所は地域のことはやりたくないので、補助金を出すから、そこをなんとかうまくやって・・・」ということ?補助金を出すことによって、本来の自治体行政のなすべき仕事を、「まち協」やその構成団体へ丸投げしているのではないか。また、補助金をタテに、それらの団体の事業や活動への介入を意味しないのか。補助金検討委員会でも議論されたように、従来からの自治会や地区自治会協議会、地区社協などへの補助金や助成金との整合性を考えると、二重行政になりかねず、たんなるバラマキに終わる可能性が見え隠れする。今の政府の「地方創生」とかと共通するものがあるのではないか。
<参考>
佐倉市市民協働の推進に関する条例(平成18年9月29日 35号)
http://www.city.sakura.lg.jp/cmsfiles/contents/0000004/4988/jourei.pdf
佐倉市市民協働の推進に関する条例施行規則(平成19年1月1日 77号)
http://www.city.sakura.lg.jp/cmsfiles/contents/0000004/4988/kisoku.pdf
| 固定リンク
コメント
旧来の町内会・自治会にしろ、まちづくり協議会にしろ、
地方公共団体の補助金をあてにしているかぎり、
住民の任意によって成立する自主自立の住民自治組織とは
名ばかりで、戦前と大して変わらない行政の末端組織の域を
抜け出せないと思います。
例えば防災という観点で考えた場合、あたかも現在の自治会
や社会福祉協議会、自主防災組織が役に立つかのように彼ら
は喧伝していますが、残念ながら現在のままそれらの組織に
任せるだけでは自然災害に対応しきれないというのが
私が目の当たりにした広島土砂災害の現実です。
確かに向こう三軒両隣の近所づきあいは大切ですし、
災害報道においては自治会や社会福祉協議会、自主防災組織
が防災の役に立った、ボランティアに助けられたという話が
美談として報じられることは多かったでしょう。
ところが広島土砂災害では、避難したといっても夜が明けて
ようやく隣近所で声をかけ合って避難所へ向かった例も
ありますし、避難している間に空き巣が横行していました。
本来ならそこにあったはずの「顔が見える『ご近所』同士の
助け合い」など名ばかりで、近隣住民が畑に不法侵入して
作物を盗んだり、私有地にわが物顔で車を駐車し続けていて
(現在進行形)、本当の敵は身近にいた、災害が「ご近所」
の本性を暴いてくれた、というのが現実です。
また自治会役員宅に設置した防災行政無線が雑音で役に立た
ず、自治会の緊急連絡網は機能せず、実際の災害の前では
年に一度の防災訓練などその成果を発揮することは
ありませんでした。
それに社会福祉協議会が運営したボランティアセンターは
対応能力が低く、ボランティアの皆さんの活動時間より
ボランティアの登録にかかった時間の方が長かったという話
もあるくらいです。
さらに自主防災組織の区域内にあったはずのサイレンは
誰が鳴らすのかさえ決まっておらず、サイレンが鳴らされる
ことはありませんでした。
勿論、災害の経験を糧に今後は改善の方向に向かうはずだと
思いたいですが、さすがに私にばかり災害が降りかかって
くることはないでしょうし、おそらく私が感じた思いが
抜本的に変わることはもうないでしょう。
よく「自助」「共助」「公助」などと言いますが、
上記のとおり「共助」などあてにしたら負けですし、
「公助」については行政の懐具合の問題が付きまといます。
そもそもいくら住み慣れた土地だからといって、地形的に
居住するのにリスクが高い土地に住み続ける人たち、災害に
遭っても懲りずに同じ場所に住み続ける人たちに対して、
たとえ心情的にはその思いに寄り添いたいと思っても、
行政がそれをどこまでも「公助」し続けなければならない
のかということについてはそろそろ考える必要があると
思います。
したがって自分で何とかなるかもしれないのは「自助」だけ
であり、昨今の災害が地域ごと飲み込むほど巨大なもので
あることを考えれば、自力でどうにもならない事態は
地域内ばかりではなく、地域外からどうやって迅速に支援を
受けるのかを考え、相互に助け合う強い関係を構築する必要
があると思いますし、お年を召した方であれば自分ブレーン
に福祉の専門家を入れておくなど各自に合った人間関係の
構築が不可欠であると考えます。
ブログが書けそうなくらい長文のコメントになってしまい、
申し訳ありません。
投稿: 小市民 | 2014年12月24日 (水) 03時32分