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2015年1月 7日 (水)

村岡花子、ドラマの出来事があたかも史実のようにひとり歩きして(1)まずその展示会の多さにびっくり!、その中身は?

  旧聞に属するが、昨年9月に終了したNHK朝の連続ドラマ「花子とアン」の話である。当ブログでも、放送終了の前後に4回にわたって記事を書き、ドラマが大きく史実を歪め、間違った人物像を定着させていることに疑問を呈した(後掲の記事一覧参照、ブログ記事が読めます)。NHKや脚本家は、ドラマはドラマであって、身内の書いた評伝を原案として、登場人物も、実在人物とは名前を変えたりしてモデルにしているに過ぎないとするスタンスなのであろう。しかし、まったくのフィクションと言い切るわけではなく、いわゆるいくつかの番組の宣伝番組では、当然のように「村岡花子」の肖像写真や作品、身内の証言、キャストのエピソードなどの相乗効果を利用していた。そして、多くの視聴者には、ドラマの中で村岡花子の家族関係、生い立ち、人間関係など事実と異なるさまざまな設定とともに歴史的事件に際して言動は、あたかも現実であったかのように刷り込まれていった。そのドラマ発信の「事実」が一人歩きし、増幅され、定着させてしまった効用が大きい。現実の村岡花子、柳原白蓮などとは全く異なる人物像を流布させた結果の「ブーム」ではなかったかと思う。 展示会も多かったが いまの時代に、村岡花子の生き方や文学的な業績、社会的な活動を見直すこと自体は、とても意義があることだと思う。しかし、その情報源や評価が余りにも偏り過ぎていて、というより、見直すどころか、不都合な事実は素通りしてしまうという手法が横行していることに危惧を覚えたのだ。「ブーム」というのは怖い側面を持っている。たとえば、関連の展示会が、私が確認できたものだけでも以下のように目白押しだった。東洋英和の「村岡花子と東洋英和Ⅱ」となっているが、「パートⅠ」に当たる展示会が開催されたのか否か、確認できなかった。村岡花子の最初の就職先は、山梨の英和女学校だったが、ドラマでは、実家近くの小学校になっていた。そのあたりをどう説明していたのだろうか。山梨県立文学館の展示においては、展示やそのカタログの年譜においても太平洋戦争開戦から終結までの活動が空白であったという。
猫の後ろ姿 1337 村岡花子展 山梨県立文学館(飯野正仁のブログ 2014年4月19日)
 山梨県立文学館の入館者がいつになく3万人を越える盛況であったというだけ、その展示方針が問われるだろう。こ うした年表の欠落については、私も、かつて藤田嗣治の展覧会で経験したことがあった。
上野の森美術館「レオナール・フジタ展」<欠落年表>の不思議(内野光子のブログ 2008年12月13日) http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2008/12/post-13fc.html

「赤毛のアン」・村岡花子関連展示会一覧(内野光子作成、1月6日現在,未完

赤毛のアン記念館・村岡花子文庫(東京都大田区大森) 1989年~ (現在休館中)http://club.pep.ne.jp/~r.miki/house_j.htm

大田区HPhttps://www.youtube.com/watch?v=hyq6lDLfbLE&app=desktop

「村岡花子と東洋英和Ⅱ」 東洋英和女学院本部大学院棟(東京都港区六本木) 2014年3月11日~9月27日

赤毛のアン翻訳者の村岡花子の住んだまち 大森(動画) シティニュースおおた 2014年4月1日~4月30日http://m.youtube.com/watch?v=hyq6lDLfbLE
*このニュース映像によれば、太田区郷土博物館(2014年1月~3月)、大田文化の森情報館(4月1日30日)、六郷(4月1日~5月31日)、大森南(4月11日~5月7日)、久ヶ原(4月18日~5月14日)の各図書館で( )の日程で関連展示コーナーが設置されていた

「村岡花子展~ことばの虹を架ける~山梨からアンの世界へ」山梨県立文学館(甲府市)  2014年4月12日~6月29日

「モンゴメリと花子の赤毛のアン展 ~カナダと日本をつないだ運命の一冊~」 (日加修好85周年記念)日本橋三越(東京都中央区)(2015年にかけて全国各地デパート巡回)  2014年5月21日~6月2日 

  「花子とアンへの道 村岡花子 出会いとはじまりの教文館」教文館(東京都中央区銀座) 2014年5月31日~7月14日

「村岡花子と『赤毛のアン』の世界展 ~本を道しるべに、少女たちのために」弥生美術館(東京都文京区) 2014年7月4日~9月28日

「村岡花子と教文館」 教文館(銀座)2014年7月25日~9月7日

「連続テレビ小説『花子とアン』花子が残したラジオ番組」 NHK放送博物館(東京都港区愛宕) 2014年8月1日~9月28日  

 上記、大田区では、従来から馬込文士村の広報は盛んだったが、今回の「花子とアン」放送を機に“村岡花子の住んだまち大森”を「まちおこし」の目玉にしたかったようで「大田区『花子とアン』推進委員会」まで立ち上げている。ドラマ放映と同時にいくつかの区立図書館で関連イベントが開催されていた。またモンゴメリの母国カナダの観光局でも、この機会をとらえての広報を展開、その一環として「モンゴメリと花子の赤毛のアン展」を全国の巡回展を開始した。展示会主催者によって、花子とのかかわりが強調されるのは当然であるが、山梨県立文学館の展示は、いわば村岡花子の総論的な展示会としての役割が大きかったと思うが、ここでも、前述のような<欠落>を生んでしまったことは残念なことだった。

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コメント

小市民様 ご丁寧なコメントをありがとうございます。事実との違いといえば、花子には7人の妹弟がいましたが、妹二人以外は養子に出され、両親は、花子の進学直後には、地元での折り合いが悪く、東京に転居して、甲府に戻ることはありませんでした。これは、当時の貧困の深刻さと出身の山梨県との関係に波及することをNHKは避けたのではないかと思います。あくまでもこのドラマは、村岡花子伝を原案として、モデルにするのであれば、それを明確にして、実在の人物から離れて「想像の翼を」広げればいいのだと思います。実在の人物名を存分に使い、事実とフィクションをないまぜに、都合の良いところどりが問題なのだと思います。歴史上の不都合な事実を隠蔽したり無視をしたいならばまったくのフィクションにすべきで、それはそれとしての歴史認識や評価が問われていくと思います。「坂の上の雲」の時もそうでしたが、視聴者の意見を「担当者に伝えます」との対応しかありません。

投稿: 内野 | 2015年1月 7日 (水) 23時24分

確かに脚本のお花畑感や演出の粗さが目に
つきましたが、それでも「『花子とアン』はいい」
と思う人が一定数いたことは事実です。
もしあの内容で刷り込まれる人がいるとすれば、
公共放送・NHKを何の疑いもなく見ているという
証拠です。
本件は「多くの視聴者」がホンモノを見抜く目を
持っていないことが問題なのではないでしょうか。

また、あくまで素人の推測にすぎませんが、
「花子の最初の就職先」の件は脚本家とNHKの
都合ではないかと思われます。
連続テレビ小説(朝ドラ)の撮影は長期で
スケジュールがきついというのはよく出演者から
聞かれる声ではありますが、
山梨の英和女学校に相当する場所でのロケ
(+それに見合ったセットを建てること)は
このドラマ全体から見れば投資してもペイしない
わけで、朝市との兼ね合いも考えると実家近くの
小学校のほうがドラマとしての出来が良くなる
という判断があったのではないかと考えます。

それに史実どおりというなら、モデルがいない
とされているキャストが出るのはどうなんだ?
ということになって話に深みが生まれませんし、
それを劇中で説明しないといけないというなら、
出演者の台詞が説明口調になってドラマの
風合いを損ねることにもなりかねません。

いずれにしても
「ドラマの出来事があたかも史実のようにひとり歩きして」
とお感じになったことは直接NHKにご意見として
仰ったほうが今後の番組作りの参考になるのでは
ないでしょうか。
NHKが変われるかどうかという問題は別として。

投稿: 小市民 | 2015年1月 7日 (水) 09時05分

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