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2015年3月11日 (水)

桜は、まだ、かたい蕾の上野公園、「新印象派展」へ行ってきました

  久し振りの精養軒でランチを済ませ、連れ合いは、東京駅近くでの約束があるということで、韻松亭の前で別れ、私は、新聞の販売店から抽選で?頂戴した招待券で、「新印象派展」へ行ってきた。「新」がつく「印象派」、ピサロ、スーラ、シニャックらの点描派を指すらしい、というくらいの知識での入館、それほど混むこともなく、ゆっくり回ることができた。

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チケットの作品は、スーラ「セーヌ川、クールブヴォワにて」(1885)

1874年の第1回以来、8回の印象派展すべてに参加したピサロは、早くからスーラ(185991)、シニャック(18631935)らの新しい技法の可能性を認め、1885年頃には自らも点描技法を用いたとのこと。ピサロ(18301903 )は、スーラ、シニャックに、1886年に開催される最後の印象派展に参加するよう勧め、3人の運命的な出会いの場にもなったのがセーヌ川の中州「グランド・ジャット島」の由、スーラの代表作「グランド・ジャット島の日曜日の午後」の習作4作品(188486)が展示されている。この島は住宅街になっているそうだが、ゆったりとくつろぐ家族連れ、カップル、犬などを配した川岸の光景が描かれていた。

点描派と言えば、水面や空に映る光と影を微妙な色合いと筆致で描くやさしく穏やかな作品が多いといった先入観があった。

今回、私は、これまで、まったく気づかなかった一人の画家マクシミラン・リュス(18581941)と新印象派を理論的に支えたフェネオンという批評家の名前を知ることになった。とくにフェネオンについては、西洋美術史上では、新印象派の命名者であり、擁護者であった批評家、編集者、晩年は画商として著名で、何人かの研究者が言及する人物であった。

リュスの作品で、この日、見ることができたのは、つぎの11点ほどだ。

①モンマルトルからのパリの眺め(1887

②ルーブルとカルーゼル橋、夜の効果(1890

③若い女性と花束(1890

④城塞の丘、サン・トロペ (1892

⑤サン・トロペの港(1893

⑥墓地への道、サン・トロペ(1892)

⑦カマレの埠頭、フィニステール県(1894)

⑧海の岩(1893

⑨工場の煙突(189899

⑩シャルルロワの高炉(1896

⑪シャルルロワの工場(1903

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⑦カマレの埠頭

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⑩シャルルロワの高炉

①②は、パリ散策の思い出の地でもあり、そんな俗な関心もあったが、同じ点描でも、他の画家に比べて、荒々しさと力強さが感じられた。サン・トロペでの作品は、南仏サン・トロペに魅せられて移り住んだシニャックに招ばれた頃の作品である。⑦の岸に寄せられた幾隻かの小さな帆船の内外に動く人々のシルエットには、思わず引き寄せられた。フィニステール県は、フランスのブルターニュ半島の先端に位置し、その漁港でもあるのだろう。また、⑨以降は、ベルギー南部の工業都市シャルルロワの工場とそこに働く人々が描かれていて、その題材は、私には、想定外であり、いささか驚いたのである。さらに、リュスは、ピサロから親しく点描主義を学ぶのだが、会場の年表によって18944月、リュスは、フェネオンとともに、アナーキスト三十人事件で逮捕拘留されていたことを知る。リュスが、その後、工場や労働者を盛んに描いたのもうなづけることだった。フェネオン(18611944)の名は、今回の展覧会の「チラシ」の冒頭にも登場していた。

 「美術批評家フェリックス・フォネオンが「新印象派」と名付けたのは1886年のことです。この年の5月、最後となる印象派展が開催され、ここでジョルジュ・スーラ、ポール・シニャックらによって色彩を小さな点に分割する新しい技法の作品が初めて発表されました。観る人の目の中で混ざるように置かれた小さな点は、色彩の輝きと光の効果を高めるものでした。新印象派の作品は、翌18872月にはベルギーに出品され、すぐに国際的な広まりを見せます。」

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展示されていたシニャックのパレット

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コメント

dezire様
お訪ねいただき恐縮です。私の美術展めぐりは、脈絡がない、気ままな趣味の一つです。素のまま、作品に向かった時の思いを伝えることができればと思っています。でも、あとからいろいろなことを知って、見方が変わることもしばしばです。私も貴ブログに立ち寄らせていただきます。

投稿: 内野 | 2015年3月21日 (土) 12時02分

こんにちは。
私も、東京都美術館で、『新印象派』光と色のドラマ – を見てきましたので、ご丁寧なご説明、ご感想を興味深く読ませていただきました。スーラの『セーヌ川クールブヴォアにて』は不思議な清涼感の魅力を感じましたが、パリに思い出の多い方にはまた別の感慨もあったのですね。フェネオンという批評家が新印象派を理論的に支えたということは、私も初めて知りました。

私も新印象派の絵画の特徴や魅力を整理し、自分なりの新印象派に対する見解をまとめてみました。読んでいただけると嬉しいです。ご意見やご感想など何でも結構ですのでコメントいただけると感謝致します。

投稿: dezire | 2015年3月18日 (水) 15時48分

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