ジャン・ユンカーマンの「日本国憲法」を見る
連休明けに、ご近所の友人から、ジャン・ユンカーマンの「日本国憲法」が、今日までタダで見られますよ、とのファックスをいただいた。知らせてくれたURLで検索してみると、憲法記念日の3日から7日まで、無料で公開中というのだ。この6月20日からは、岩波ホールで公開されるという。そんな新しい作品ではないはずなのに・・・。ともかく、公開当時は見ていないので見ておかなくてはと、パソコンを開いてみる。「日本国憲法」の成立過程を内外の識者や活動家、市民たちの証言と種々のフィルムで綴られた映画だった。2005年の作品だから、登場の識者たちは十年ほどみな若い。監督のユンカーマン(1952生)高校時代日本への留学を経て、日米を根拠地として活動する映画作家で、画家の丸木位里・俊夫妻を取材した『劫火-ヒロシマからの旅』(1988生)、ノーム・チョムスキーにインタヴューした『チョムスキー9.11』(2002年)などがある。映画に登場する日本近代史専攻のジョン・ダワー(1938生)は、日本はアメリカと決別すべきであったが、少なくとも主権を取り戻し、アメリカのような軍国主義国家の道を歩んではならないとし、政治学専攻のダグラス・ラミス(1936生)は、沖縄での兵役後、日本で学び、津田塾大学教授を経て、2000年から沖縄に移住し、憲法は本来国民が政府の権力拡大を抑制するためのものであることを強調する。日本人では、日高六郎が登場、1917年生まれというから、かなりの年齢と思うが、言語明晰で、日本国憲法の制定過程と国際的な意義を語っていた。さらに、アジア政治史専攻のチャールズマン・ジョンソンは「武力行使の放棄を誓った第9条こそが、日本のアジア諸国に対する戦後謝罪だった」とし、中国や韓国、イスラム諸国の識者や市民たちは日本の平和憲法の貴重さを語るものだった。また、日本国憲法草案に、男女平等の条項を盛り込むよう努力した、GHQ職員だったベアテ・シロタ・ゴートン(1923~2012)も登場した。彼女については「ベアテの贈りもの」(藤原智子監督、2004)というドキュメンタリー映画で知ったことも多かった。
今回の「日本国憲法」公開後には、下記の当ブログ記事でも紹介したことがある、NHKETV特集「焼け跡から生まれた憲法草案」の放映や劇映画「日本の青空」の上映がつづき、ユンカーマンの趣旨が生かされた作品になっていたと思う。
・マイリスト「野の記憶―日記から」に「ETV特集<焼け跡から生まれた憲法草案>を見た!―”押し付け”ではなかった日本国憲法」を登載しました
http://dmituko.cocolog-nifty.com/eyvtokusyuyakaatokara.pdf(2007年2月20日)
・映画『日本の青空』を見て(2007年3月23日)
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2007/03/post_80f7.html
なお、折しも、5月8日朝刊の報道によれば、5月5日、米英豪日などの日本研究者たち187人が安倍晋三首相あての「戦後70年間の日本と近隣諸国との平和を称賛し、第2次世界大戦以前の<過ち>について全体的で偏見のない清算」を呼びかける声明を発表した。エズラ・ボーゲル、ノーマ・フィールド、アンドレ・ゴードン、入江昭らとジョン・ダワー教授の署名がなされているという。国内では衆議院憲法審査会が5月7日から実質審議が始まり、最初はハードルの低い災害時などの緊急事態感れ条項から改正に持ち込み、とりあえずは9条改正を回避する意向をあらわにしているというのだ。。
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コメント
安倍政権の暴走を止めることができるのか?それともアメリカの戦争に巻き込まれたり、中国と戦争になってしまうのか?止められなければ戦争という危機感は杞憂なのか?
「新党憲法9条」の天木直人に期待し、「世に倦む日々」に学ばせていただいています。政党、マスコミ、学者、すべてに不信感をもっています。
投稿: きしずえ | 2015年5月12日 (火) 22時55分