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2015年9月 4日 (金)

DHCスラップ訴訟、澤藤弁護士勝利、東京地裁判決と報告集会に参加しました

   9月2日午後、東京地裁前は、人だかりがしていて、東京土建や JALの旗が目についた。私は、 6階の「DHCスラップ訴訟」の法廷へと急いでいた。1時15分が開廷とのことで、控室には、かなりの傍聴者が集まっていた。

「DHCスラップ訴訟」って何?
  「DHC」は、あの化粧品やサプリの会社で、叶姉妹はじめ人気タレントを使用しての派手なテレビCMなら知っている人も多い。それに、みんなの党の渡辺喜美がDHCの社長から8億円を借入れていたことが発覚したことは記憶に新しい。昨年の3月31日、澤藤統一郎弁護士が書き続けているブログ「憲法日記」に「DHC・渡辺事件」として、政治とカネの問題について書き始めた。数回に及んだところで、DHC社長が澤藤弁護士を名誉棄損による損害賠償2000万円の請求と5本の記事削除・謝罪請求の訴訟を提起したのである。澤藤弁護士は、その訴訟が、訴訟という脅かしで、相手の口や行動を封じ込めこめようとする、いわゆる「スラップ訴訟」であることを、ブログ記事で糾弾し始めた。すると、DHC社長はさらに、請求額6000万円とする「請求の拡大」を行ったのだが、弁論を経て、今年の7月1日に結審し、判決をむかえたのである。経過については、以下の「澤藤統一郎の憲法日記」に詳しい。

*全面勝訴・ご支援に感謝 「表現の自由が輝いた」ーー 「DHCスラップ訴訟」を許さない・第51弾(2015年9月2日)
http://article9.jp/wordpress/?p=5532

*9月2日司法記者クラブでの記者会見(動画)
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/261234

読みあげられた、たった一行の判決主文
   争点は、DHCが対象としている5本のブログの記事が名誉棄損に当たるかいなかであった。DHC側の弁護人は3人、澤藤弁護士には総勢111人の弁護人がついているが、弁護人の数もさることながら、傍聴席も弁護士と支援者で40人以上だろうか、席が足りないほどになった。全員起立して開廷、固唾をのむ思いで待った判決文だったが、「原告である吉田会長らの請求を棄却し、訴訟費用を原告負担とする」という主文のみの朗読でしかない。判決はこれでおしまい!そして閉廷なのだ。民事はこんな風だということは聞いていたよう気がするが、まさにこれが「慣例」なんだそうだ。素人の私には、何か腑に落ちない。なぜ判決理由の要旨くらいは読みあげてくれないのだろう。 報告集会で知らされた判決理由 場所を弁護士会館に移しての報告集会。ようやくコピーがとれたということで、弁護人代表の光前弁護士はじめ、複数の弁護人から判決についての報告・解説があった。   

「ブログ記事は、いずれも意見ないし論評の表明であり、公共の利害に関する事実に限り、その目的が専ら公益を図ることにあって、その前提事実の重要な部分については、吉田会長が発表した手記などをもとに書いていて、真実であることの証明がされており、前提事実と意見ないし論評との間に論理的関連性も認められ、人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものということはできないから違法性を欠く」

  事実にもとづいて書いた意見や論評を、名誉棄損などで訴えられるとしたら、もはや言論の自由はないも同然である。ところが、DHC社長を原告とする訴訟は、現在9件も継続中で、その内2件は、地裁で請求棄却、高裁で控訴棄却判決を受けながら、最高裁で係属中である。今回の地裁判決についても、DHCの広報は控訴すると言明しているという(弁護士ドットコムニュース)。

*弁護士ドットコムニュース
http://www.bengo4.com/internet/1071/n_3631/

横行するスラップ訴訟
  続いて、小園弁護士からは、「スラップ訴訟」のレクチャーもあった。いまの世の中では、さまざまな場面で、このスラップ訴訟が横行し、市民の表現の自由や活動の自由を萎縮させつつあることを、あらためて知るのだった。 そもそも、スラップとは、1984年にこうした形態の訴訟の研究を始めた、デンバー大学のジョージ・W・プリング教授とペネロペ・キャナン教授が作り出した造語で、Strategic Lawsuit Against Public Participation(直訳:市民の関与を排除するための訴訟戦術)のし略語だそうだ。「公に意見を表明したり、請願・陳情や提訴を起こしたり、政府・自治体の対応を求めて動いたりした人々を黙らせ、威圧し、苦痛を与えることを目的として起こされる 報復的な民事訴訟のこと」で、要するに、企業や行政など資金や人材のある強者が、弱者である個人や民間団体の些細なことをあげつらって、民事訴訟を起こし、相手に、金銭的にも時間的にも多大のダメージを与え、相手を黙らせるということを目的とし、勝訴することを目的としない訴訟のことである。訴えを起こすことにより相手方を黙らせる、従わせ、さらには、それを見せしめとして、他の同様の批判者に提訴の恐怖を与え、黙らせるという、萎縮、抑止の効果を上げることも目的としているのである。公益性の高い問題の論評を衰退させることにもなり、表現の自由が根底から揺らぐことになる。
  小園弁護士は、スラップ訴訟の今後の問題点として、民事訴訟は訴状さえ提出すれば簡単に提訴でき、受理も杜撰な場合が多く、それに比し、応訴の負担が大きいので、濫訴を予防する手立てが難しいこと、反訴を提起することもできるがそれに費やされるエネルギーも大きいこと、などがあげられる。立法による解決が必要だが、それには、世論、メデイア、与野党の議員を動かす運動の必要を説いていた。 これまでも、こうした裁判になった事件を聞いたことがある。研究論文として経営分析の対象となった企業が著者の大学教授を訴えた事例や沖縄県東村、高江ヘリパッド反対座り込み住民提訴の事例である。沖縄の事例は、今回初めて詳しく知ることになった。
  2008年、国は、高江の米軍のヘリコプター着陸帯建設着工反対の座り込み住民15人を通行妨害禁止で仮処分を申し立て、認められた2名について本訴訟を提起したが、1名地裁での棄却、1名控訴棄却・上告棄却となった事例である。高江の住民によるブログでのメッセージにも初めて接した。住民の方の生の声を以下のブログでぜひ聞いてほしいと思った次第である。

*YANBARU TAKAE
http://okinawa-takae.tumblr.com/

*やんばる東村高江の現状
http://takae.ti-da.net/

もし、訴えられたらどうするか 
  私も、ブログをはじめて10年になろうとしている。テーマは、勝手ながらいろいろであるが、ここではかなり率直な意見や論評を辞さないできたつもりである。ただ気を付けてきたことは、事実に基づくことを書き、伝聞や推測では書かない、ということであった。  この日の勝訴報告集会でも、発言を求められ、ささやかなブロガーの一人として、決して他人事ではないと実感したこと、これからも表現の自由のために努めたいので、どうぞよろしくと申し上げた。澤藤弁護士からは「この人のブログは、もしかしたら私よりも過激かもしれません」などと紹介されて、ちょっとはずかしかったが。
  もし、スラップ訴訟の被害者になった場合は、いろいろな手立てはあると思うが、とりあえずは、下記のホームページが役立つかもしれない。

*スラップ訴訟情報センター SLLPIC Slapp Information Center
http://www.slapp.jp/

今後のスラップ訴訟に向けて
  報告集会は、澤藤夫人の言葉で締めくくられた。身近な夫人の支えも大きかったことがよく分かるのだった。「勝訴」の垂れ幕を背に写真撮影もあった。地裁前で、報道陣や支援者を前に「勝訴」の紙を広げるというパフォーマンスは見られなかったが、最高裁でも棄却の「勝訴」判決が待たれる。この日の傍聴や報告集会は、もともと連れ合いと参加するつもりであったが、急用のため私一人の参加となってしまった。そもそも、澤藤弁護士夫妻とのご縁は、「ブログ」からだったなあ、と思い起こす。話せば長くなりそうだが、いま、夫は、さまざまな活動にかかわる法律的な相談をさせていただき、私は、夫人の私のブログへのご意見や感想に感謝しつつ。

  この日の地裁では同時刻に、JALの客室乗務員の「マタハラ裁判」の第1回口頭弁論が開かれているのを知った。なんと、急いで乗ろうとしたエレベーターホール前で JAL乗務員解雇原告団のお一人、客室乗務員のAさんにお会いしたのだ。傍聴にいらしたということだった。ついこの間の8月25日のNHK包囲集会に駆けつけ、コールを担当してくださったのだ。ここでまたお目に掛かれるとは思わなかった。ともにこの日の法廷での健闘を願って別れたのであった。その日のテレビや翌朝の新聞で報じられた「マタハラ裁判」で闘う原告や支援者に拍手を送りたい気持ちになった。客室乗務員が妊娠したら、地上ポストがないから解雇だというJAL、まさにブラック企業に成り下がってしまったのだろうか。スラップ訴訟と同じ土壌ではないかと、思うことしきりであった。

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