加計問題の行方、これでいいのか~はぐらかしの安倍首相答弁、文科省に責任を振る、二転三転の菅官房長官答弁(3)
共同通信世論調査、2017年6月18日、先月5月より不支持10ポイント上がる
私は、必要があって、加計問題の経過年表を作ってみた。その作業の中で、今回問題になっている内閣府や文科省の内部文書やメールの一部が確認されて、その全貌や経過がかなり明らかになった。本来の「情報公開法」の趣旨に反する「黒塗り」の情報公開を許してはならないし、さらに追及を強化しなければならないだろう。
同時に、だれもが閲覧できる、公開されている以下のような会議の「議事要旨」と配布資料を見ても、かなりの部分が浮き彫りになる。次から次へと出てくる内部文書も大事だが、すでに公開されている確かな会議録や資料を精査し、詰めて行くことも大事なのではないか。追及する野党は、感情的な、情緒的な質問ではなく、周到な準備と緻密な論理をもって、臨んで欲しい。菅官房長官の「切り捨て」、安倍首相の「イライラ」答弁の繰り返しを、すでに多くの国民の知るところとなったのだから。
「国家戦略特区諮問会議」~誰が誰に諮問するのか
安倍首相は、「規制緩和の抵抗勢力を打ち破るには、岩盤規制に穴をあけるのには、首相の指導力で突破する」と豪語し、2013年12月「国家戦力特別区域法」を制定、14年1月「国家戦力特別区域諮問会議」を立ち上げ、みずから「諮問会議」の議長になっている。「諮問」とは、誰が誰に諮問するのか。行政府の審議会や首相の私的な諮問会議や有識者会議にしても、その成り立ちから、首相みずからが参加することはないはずなのに、特区の諮問会議には議長として、にらみを利かせるのだから、もはや、本来の「諮問」会議ではないだろう。会議終了後には、プレスを入れてのコメントで、その日の会議の成果をお披露目するのが慣例だ。そして、諮問会議の構成は、政府・内閣府の担当者と安倍首相の任命による民間有識者議員からなり、議題により、特区関係者が臨時議員として参加する。運営規則によれば、議事録は4年後に公表するとあるのが、これも納得のいかない規制である。私たち国民は、当面、「議事要旨」しか閲覧することが出来ない。それに、構成メンバーだが、第一に、前述のように首相が議長をつとめる矛盾があり、さらに、民間有識者議員の選任が恣意的であることは他の審議会と同様であると同時に、例えば、竹中平蔵議員などは、特区による規制緩和の対象事業者の役員にもなっていることから、ずばり利害関係者であって、公平性に欠けていることである(外国人材の家事、農業への導入の事業者に指定されている人材派遣会社パソナの会長でもある)。
たとえば、第25回、2016年11月9日の諮問会議の出席者。この日に、以下の「資料3」「資料4」が添付され、「広島県・今治市」が特区指定され、「国家戦略特特区のにおける追加の規制改革事項について」の一事項として、「獣医学部の新設」が決定するが、提案者の今治市の関係者は出席していない。この前日には、すでに、この資料が内閣府から今治市に伝達されていたことは、「不適切であった」と謝罪されている。
「資料3」では第一事項で、問題の「広域的に」が挿入された文書になっている。「資料4」の「2.追加の規制改革事項について」と題して、有識者議員の意見として提出されたものだ。
通常の諮問会議の「議事要旨」と添付資料から見えて来るものがある。地方創生担当大臣が進行役を務め、議事に係る配布資料による説明がなされる場合と資料を示すだけで、意見を求め、大方は、「異議なし」の声で進行する。「獣医学部新設」が論議されたのは、第14回(2015年6月29日)、第18回(2015年12月15日)、第25回(2016年11月9日)、第27回(2017年1月20日)の諮問会議であったが、いずれも20~30分前後で終わる短い会議である。11月9日の第25回では、例の「広域的に獣医師養成系大学等の存在しない地域に(おいて⇒)限り」のフレーズが含む添付資料の「資料3」「国家戦略特区における追加の規制改革事項について(案)」には、二つの項目の一つ「先端ライフサイエンス研究や地域における感染症対策など、新たなニーズに対応する獣医学部の設置」という6行の文書が添付されていて、すでに、上記のように追加・修正されていた(ここでは赤字で示した)。そして、進行役の山本(幸三地方創生担当大臣)議員は、会議の最後の最後で、「それでは、「資料3」につきまして、本諮問会議のとりまとめとしたいと思いますが、よろしゅうございますか」「異議なし」の声で、決定されたのである。「資料3」の文章に即しての説明は一切なされいない。今国会の会期末の文科省側の文書再調査によって、上記の追加文言「広域的に」が萩生田光一官房副長官から藤原豊審議官にもたらされたという文書が出されると、山本幸三大臣は、参院予算委員会での質疑で、「広域的に」の文言の挿入は、自分が藤原審議官に指示したと言い出した。官邸側人物の身代わりとなって、官邸の防波堤となったことを推測させる。ならば、なぜ、先の諮問会議で、山本大臣は、「広域的に」を挿入した趣旨を説明しなかったのか。
もっとも、最後の「資料3」の採決に先立って、有識者会議が提出した資料4「国家戦略特区 追加の規制改革事項などについて」による「獣医学部の新設」について、代表して八田達夫議員がかなりきわどい賛成意見を述べている。前段では、「創薬プロセス等の先端ライフサイエンス研究では、実験動物として今まで大体ネズミが使われてきたのですけれども、本当は猿とか豚とかのほうが実際は有効なのです。これを扱うのはやはり獣医学部でなければできない。そういう必要性が非常に高まっています。そういう研究のために獣医学部が必要だ」と述べるが、新設であることの説明にはならないだろう。
さらに、「口蹄疫とか、そういったものの水際作戦が必要なのですが、獣医学部が全くない地方もあ」り、大学設置基準により、過去50年間、獣医学部は新設されなかったものを、文科省告示で改正できるようになることを評価した。後段では、麻生財務大臣の、法科大学院や柔道整復師の規制緩和による失敗を例に挙げ、規制緩和は大いにやるべきことだが「上手くいかなかった時の結果責任を誰がとるのかという問題」を指摘、学生や関係者に迷惑をかけることまで考えておく必要があると、クギをさしていた。ところが八田議員は、「麻生大臣のおっしゃったことも一番重要なことだと思うのですが、質の悪いものが出てきたらどうするか。これは、実は新規参入ではなくて、おそらく従来あるものにまずい獣医学部があるのだと思います。そこがきちんと退出していけるようなメカニズムが必要で、新しいところが入ってきて、そこが競争して、古い、あまり競争力がないところが出ていく。そういうシステムを、この特区とはまた別にシステムとして考えていくべきではないかと思っております」と、既成の獣医学部への攻勢が顕著である。特区とは別のシステムとして振り払っているが、既成の獣医学部は、これを聞いて怒るのではないか。
さらに、資料4の追加事項の説明で「かねてより準備を勧め具体的な提案を行ってきた自治体を中心に、具体的なプロジェクトとして、実際の獣医学部立ち上げを急ぐ」必要があると記載されているではないか。「今治市」「加計」の文字こそ出てこないが、「加計ありき」の傍証だろう。
加計学園の新獣医学部構想の詳細はいつ提出されたのか
加計問題の一連の流れを見ていて、私は、もう一つ気になることがあった。テレビの報道番組で、加計学園が提出した新獣医学部構想(今治市)と京都産業大学が提出した新獣医学構想(京都府)のボリュームと中味の違いが指摘され、前者の書類が2頁ほどなのに比べ、京産大は、20頁を超えるという、情報だった。私も調べてみると、つぎのような経過をたどることが分かった。
加計学園が、構造改革特区に名乗りを上げた時代は、以下①②のような十数頁の提案申請説明資料を提出していた。しかしどうだろう、国家戦略特区になってからは、番組指摘のように、今治市・加計学園からの新獣医学部構想が記された資料が出てこない。私たちが目にするのは、2015年6月5日の内閣府のワーキンググループのヒアリングを受けた時の資料③愛媛県・今治市の提案書と添付資料、合計3頁の資料が最初である。
国家戦略特区諮問会議に先立ち、あるいは、合間を縫って、「区域会議」が開催される。広島県・今治市特区区域会議は15年3月30日に第1回目が開催された。以降、いくつかの特区から進捗状況の報告や提案がなされる合同区域会議として今日まであわせて3回(15年9月30日、2017年1月20日、5月16日)3回開催されているが、実施的な論議は困難な状況である。そこでの配布資料によれば、上記の③であり、その後の今治市の獣医学部新設の提案資料は⑥⑦で、いずれも1~2頁のペーパーに過ぎない。つぎの構想資料の推移で見るように、本格的な獣医学部構想が提案され、私たちが知り得るのは、京都産業大学は、2016年10月17日「ワーキンググループのヒアリング」での⑧京都府提出資料「京都産業大学 獣医学部設置構想について」(21頁)であり、加計学園に至っては、2017年1月12日に事業者が加計学園に決定した直後になって、はじめて、詳細な構想ともいえる2017年1月12日「第2回今治市分科会」への提出の⑩「広島県・今治市 国家戦略特別区域会議の構成員の応募について」(28頁)であり、同文の⑪が提出されるのは第27回諮問会議の1月20日であった。2~3頁の提案書と若干の説明で、内閣府や文科省、農水省、厚労省などの岩盤規制を突破してきたことになる。前述の八田議員による「かねてより準備を進め具体的提案を行ってきた自治体を中心に」の根拠にはなりにくい。構造特区時代の申請提案資料は、その提案書の体裁をととのえていたが、現在からみれば、掲載のデータは古いし、定員も現在の160人より少ない既存大学並みの120人となっていた。
諮問会議の議員たちは、詳しい提案書、提案資料を見ることもなく、1月20日の⑪提案資料をはじめて示され、今治市の区域指定、事業者は加計学園と決定したことになる。
一方、京都府・京都産業大学は、2016年10月17日のワーキンググループのヒアリングで「京都産業大学 獣医学部設置構想について」(21頁)を提出している。これは一体どういうことなのだろうか。私には理解に苦しむ。私の見落としがあるかもしれない。ぜひご教示願いたいと思う。
つぎに、関係者の実質的な討議がなされとされるヒアリングや区域会議、分科会の実態について検証しておきたい(続く)
加計学園獣医学部構想資料の推移~付京都府(京都産業大学)資料~(赤字)
➀愛媛県・今治市提案説明資料(構造改革特区時代2008年6月)
②愛媛県・今治市(構造改革特区時代2009年11月)
③ワーキンググループのヒアリング(2015年6月5日)(16分)
愛媛県・今治市提案資料(提案書1頁・添付資料2頁)
(提案書)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/h27/150605imabari_shiryou03.pdf
(添付資料)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/h27/150605imabari_shiryou02.pdf
④特区合同区域会議・第8回関西圏区域会議(2016年3月24日)
「新たな獣医学部・大学院研究科の設置ため」(追加規制改革事項)1/2p
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/160324goudoukuikikaigi/shiryou4.pdf
➄定例の関係省庁への要請(2016年6月)京都府
「創薬分野等における新たな獣医師の育成について」2p
⑥第1回今治市分科会(2016年9月21日)
「認定申請を行う特定事業」
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/hiroshimaken_imabarishi/imabari/dai1_shiryou3.pdf(1p)
「獣医師養成系大学・学部の新設について」(特別顧問加戸守行提出資料)
⑦第2回広島県・今治市特区区域会議(2016年9月30日)
「認定申請を行う特定事業」
「追加の規制改革事項」(加戸守行特別顧問9月21日分科会説明資料と同文)(合わせて2p)http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/160930goudoukuikikaigi/shiryou3.pdf
⑧ワーキンググループのヒアリング(2016年10月17日)(32分)
京都府提出資料「京都産業大学 獣医学部設置構想について」(21頁)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/h28/teian/161017_shiryou_t_1.pdf
( 16年10月17日付)
⑨定例の関係省庁への要請(2016年11月)京都府
「創薬分野等新たなニーズに対応する獣医学部の設置について」(3p)
http://www.pref.kyoto.jp/seisakuteian/documents/281125_25.pdf
⑩ 第2回今治市分科会 (2017年1月12日)
「広島県・今治市 国家戦略特別区域会議の構成員の応募について」(28頁)
⑪第27回国家戦略特区諮問会議( 2017年1月20日)
資料6「広島県・今治市 国家戦略特別区域会議の構成員の応募について」(28頁)http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/hiroshimaken_imabarishi/imabari/dai2_shiryou6.pdf#search=%27%E5%8A%A0%E8%A8%88%E5%AD%A6%E5%9C%92+%E7%8D%A3%E5%8C%BB%E5%AD%A6%E9%83%A8%E6%96%B0%E8%A8%AD+%E6%8F%90%E6%A1%88%E6%9B%B8%27(17年1月10日付)
⑫第3回広島県・今治市国家戦略特区区域会議(2017年1月20日)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/170120goudoukuikikaigi/shiryou2.pdf
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