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2017年10月 6日 (金)

これ以上<希望>をばらまかないで~「赤い羽根」募金を通して考える 

102日に東京へ出た。最寄りの駅の構内では赤い羽根の募金が始まっていた。国立国会図書館に調べ物があって出かけたのだが、議事堂近辺は、集会の声もなく、人通りも少なく、いたって静かなものだった。等間隔に立つ警官の姿、なぜか路上の何カ所かに置かれた蛇腹の鉄柵だけが目立っていた。すでにギンナン落果の季節は過ぎたのか、足元を気にしなくてもいいようであった。

今年の10月は、とんでもない10月になりそうだ。臨時国会の開催を3カ月も放置した挙句、9月末日に冒頭解散をした安倍内閣。臨時国会を開催しないのも、憲法7条解散もそれ自体が憲法違反ではないのか。議会軽視もはなはだしい。こじつけたような解散理由が「大義なき解散」といわれる所以である。一方、「野党共闘」に「期待」するあまり、「積み上げ」というよりは、ゆずりに譲ってしまった共産、小池新党の国政進出、民進党の希望の党への合流、はしごを外された「野党共闘」は「野党と市民の共闘」と言い換えたりしている。民進党リベラル派新党立ち上げで、少しばかり、選択肢が増えたかもしれないが、なし崩し的に選挙モードに入ってしまった。

これからいったいどうなるのだろう。日本は、近隣諸国との関係でも軍備強化、原発輸出・再稼働推進、雇用・消費が一向に伸びず、「全世代型」の福祉切り捨てなどによる危機が目前に迫り、私たち、高齢者にとっては、“命がけ”で病院や施設に入るか、そうでなければ、家族を疲弊させる在宅医療・介護に甘んじなければならない時代に入り、「絶望列島」になりかねない。「国民の命と財産を守る」と叫びながら、軍備増強によるリスクや国の借金を増やすばかりの自民党、「希望がゆきわたる国へ」とのポスターを街角に掲げる公明党、「希望の党」と名付けた小池新党・・・。不安や失望が渦を巻いているからこそ、政党は「希望」や「期待」という実のない、口あたり、聞こえのよい言葉だけをばらいてはいないか。

国にあっては、優先度をつけて、実施して欲しい施策がある。憲法改正などはまず不要で、現憲法下ですぐにでも実施できることは、山ほどある。「消費税の使い道を変える?!」って、自公は得意げではあるが、法人税のわずかな増税、内部留保税の導入、所得税の総合課税や累進性を高めれば、消費税増税などまったくもって不要にもなる。教育の無償化や補助は、憲法を改正しなくても立法により十分対応できるはずである。メディアは、政局内の攻防を面白おかしく伝えるばかりだし、登場する専門家という人たちは、素人でもいえそうなことしか口にしない。 

地域に押し寄せて来る数々の危険

この度の選挙にしても、私たち市民には、どんな選択肢があるのだろう。地域では、治安というだけの名目で、監視カメラがめぐらされ、自治会を中心に、社協、PTA、子供会、商店会、さまざまなNPOなどを束ねた「まちづくり協議会」、自治会の「法人化」、募金・防犯・防災というボランティアの強制など、いずれも自治体の行政下請け化、自治会の弱体化を図る目論見である。共謀罪新設と相まって、相互監視社会へと突入する。自治体が直面する危機~人口減少、商店街の衰退、学校の統廃合、交通困難、空き家問題など過疎化の問題、私の住む千葉県では、行政にも議会にも、羽田・成田空港の拡張に伴う環境被害、木更津基地へのオスプレイ配備の危険性、拙速な開発・再開発による弊害などについては、住民の切実な声が届かない、聞こえないふりをしているのが現実ではないのか。地元佐倉市でも、市からの24億円助成を前提にした順天堂大学学部誘致で揺れに揺れた。地元の不動産業者が暗躍、誘致の一点で市長選に候補者を立て、あくどい選挙戦を繰り広げた。消極的な市長も選挙戦後半には、その攻勢にフラフラしだしたのだ。誘致は今、白紙状態となったが、胸をなでおろしている人たちも多いであろう。

駅頭での赤い羽根募金は、あまり目にしなくなったのも、ボランティアの高齢化が進んだからであろう。自治会からはもう先月には、募金袋が回ってきていた。私たちの自治会では辛うじて、募金は、するもしないも、金額も、世帯の自由になっている。赤い羽根募金は、中央共同募金会が自治体の社会福祉協議会に募金業務を委託し、社協は、自治会や町内会に丸投げしているのが現状だ。自治会などがまさに集金マシンとなっている。本来ならば自由な寄付が、強制に近い形で集金される現状は、各地で問題を起し、裁判にもなった。このブログ記事でも何回か記事にしている。だいぶ古くなってしまったが、基本はいまだに変わっていない。

赤い羽根共同募金の行方(1)(2)

http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2009/12/post-2f90.html

http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2009/12/post-dd38.html

 集められた募金は、年々減少の一途をたどる。中央共同募金会のデータによれば、赤い羽根共同募金は、70年前、1947年、約6億程度でスタートし、1851年に10億、1980年に100億、1998年の261億をピークに、減少し始めたのである。2015年には184億にまでになっている。自治会等を通して集められる「戸別募金」は、歳末助け合いなどを含むと、募金全体の70%以上占めることも、ほとんど変わっていない。街頭や学校での募金は、合わせても5%にも満たないのが現状である。以下の図をご覧いただきたい。これが募金の入り口と出口で、2015年度では、募金総額184億、助成総額160億、差額が経費とみてよいだろう。

Img328

出典:中央共同募金会 年次報告書平成27年度(2015年)
http://www.akaihane.or.jp/organization/pdf/annual_h27.pdf 

では、これらの募金は、どう使われているのか。たとえば、千葉県では30%が広域で使われ、70%が地元に還元されているという。最後はどこに行き着くのかは、地元の佐倉市のデータベースに詳しいが、少し立ち入ってみると、疑問も多い。

佐倉市赤い羽根データベース<はねっと>

http://hanett.akaihane.or.jp/hanett/pub/homeTown.do?data.jisCd=12212 

たとえば、2016年度(平成28年度)で、歳末助け合いを含めての募金の配布先を見ると、14ある地区社協に各10万、各施設に3.5万、施設の催事に3万など合わせて80件、大口の配分先を含む個所を複写するとこんな具合だ。各行の【表示】をクリックすると、その詳細が現れる。各地区社協は10万をどのように使用しているかも見ることが出来る。

下記の大口の例では、支援金配分事業がほとんどで、対象の利用者数の延べ人数と使用目的~見舞金・祝い金の記載があるのみである。まさに、配分のための配分、機械的なバラマキの感がぬぐえない。募金会は単なる配分機関となり、配分を受けた事業主体や施設がまた配分機能を果たし、募金が配分されるたびに、人件費や経費がかさんでいく仕組みである。福祉の対象の人たちに届く時点では、わずかな見舞金や茶菓子代になってしまっていないか。これって福祉なのだろうか。

 

22

 
 

広報雑誌「社協さくら」発行

 
 

赤い羽根

 
 

2,858,000

 
 

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23

 
 

在宅福祉(いきいきサロン・食事サービス等)

 
 

同上

 
 

1,039,000    

 
 

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24

 
 

福祉総合相談事業

 
 

同上

 
 

1,044,000  

 
 

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27

 
 

要支援世帯に対する支援金配分事業

 
 

歳末助け合い

 
 
  

2,040,000   

 
 

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28

 
 

母子・父子世帯に対する支援金配分事業

 
 

同上

 
 

5,013,000 

 
 

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29

 
 

ひとり暮らし高齢者世帯に対する支援金配分事業

 
 

同上

 
 

1,680,000

 
 

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30

 
 

寝たきり高齢者世帯に対する支援金配分事業

 
 

同上

 
 

94,000

 
 

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31

 
 

心身障がい児・者世帯に対する支援金配分事業

 
 

同上

 
 

424,000    

 
 

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  身近な福祉に目を向けていくと、国における福祉政策が透けて見えてくる。年金記録問題や年金支給漏れなど、原因や責任の解明が済まない先の不祥事は後を絶たない。根っこには、寄付文化やボランティア精神が根付かないまま、「絆」とか「共助」、「家族愛」まで持ち出し、福祉や災害復興政策の補完が強制されている現実を見失っていないか。足元の地域で何が起こっているかも知らずして、国の政治は語れないと思うのだ。

 

活動の対象

 

活動の対象

 
 

件数

 
 

金額

 
 

高齢者

 
 

32

 
 

2,889,00013.2%

 
 

障害児・者

 
 

15

 
 

1,559,000円 7.1%

 
 

児童・青少年

 
 

9

 
 

  5,273,00024.1%

 
 

課題を抱える人

 
 

2

 
 

2,052,000円 9.4%

 
 

その他

 
 

22

 
 

10,106,48846.2%

 
 

合計

 
 

80

 
 

21,879,488

 

  活動の目的  

 

活動の目的

 
 

件数

 
 

金額

 
 

日常生活支援

 
 

16

 
 

   11,745,00053.7%

 
 

社会参加・まちづくり支援

 
 

51

 
 

   9,224,48842.2%

 
 

社会福祉施設支援

 
 

2

 
 

70,000円 0.3%

 
 

その他の地域福祉支援

 
 

11

 
 

840,000円 3.8%

 

合計

 

80

 
   21,879,488 

 

    図書館からの帰り道、議員会館の方から、なにやら黒いスーツの一団が渡ってきた。この時期に陳情団でもないし、地方議員の見学でもないだろう。よく見るとまだあどけない青年たちだった。そう、近辺の役所の新人たち、どうも内定者たちなのか、101日は休日だったから、今日が内定式解禁日ということなのか。先頭に、これも若い案内役が「今年は女子が少ないんですよ」との声、その後はよく聞こえなかったが、「ヴァレンタインデーが・・・」の声のあとでは、若者たちの小さな笑い声が起きていた。総勢145人だったろうか、茱萸坂を下って行った。決して佐川長官のようにはなるな、初心を忘れるな、と見送るのだった。

 

 

 

 種類 助成額 

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