2019年、歌会始は終わったが~召人は二人?
今年の歌会始の中継は、忘れずに見た。今の天皇夫妻にとっては最後の歌会始ということらしい。天皇の短歌ばかりが、メデイアでは繰り返されていた。
私が、とくに印象に残ったことといえば以下の通りだ。
平成最後の歌会始といっても、格別応募歌数が多くなく、二万首を少し超えた程度だった。入選者の一番の若手は16歳の女子高校生で、最年長者は、30代から応募を続けていたという89歳の男性だった。20・30・40代が一人もおらず16歳から 58歳にとぶ。世代別の歌会始、短歌への関心の在りようを示していよう。中・高校生については、歌会始応募に熱心な学校、教師の指導が左右しているのかもしれない。
また、今年は、選者の最年長者篠弘の作品が披講されたが、その間、杖をついて立っていたのがつらそうでもあった。今年の召人は俳人鷹羽狩行と栗木京子の二人であったらしいのだが、鷹羽の作品が披講されたが、栗木や他の選者の名前の紹介もなかった。そして不思議だったのは、手元の三紙、翌日17日の朝刊、朝日、毎日、東京新聞にも召人の栗木の名前も作品も掲載されていない。たしかに、栗木は、入選者と選者の間の席に着いていて、その姿は、なんども映されていた。テレビでは、陪聴者の席でもないし、どういう立場なのかわからなかったのだが、ネットで検索してみると、jijicom(時事通信)の記事には、つぎのように掲載されていた。
【召人】
鷹羽狩行さん
ひと雨の降りたるのちに風出でて一色(いつしよく)に光る並木通りは
栗木京子さん
言葉には羽あり羽の根元には光のありと思ひつつ語る
ということは、来年の選者は、篠弘に替わって、栗木京子が就く前触れかな、などとも。女性選者が今野寿美と二人時代が再来するかもしれないなど、予想屋みたいなことは、はしたないと思いつつも・・・。
それにしても、これから代替わりまでの半年は、歌壇も何かとざわつくかもしれない。
そんなことを考えていたとき、旧著の出版元、名古屋の風媒社からのメールで、『週刊金曜日』天皇制特集(2019年1月11日)で『現代短歌と天皇制』(2001年)が紹介されているのを知った。旧著がこうした形で読まれ、推薦されていることを知って、正直、ありがたかった。
↑ 最下段⑥に数行の言及がある。
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コメント
岡村久子様 歌会始に関する記事をお読みくださりありがとうございます。私自身は、おっしゃるように、歌会始自体の今のようなありかたに疑問を持っています。もし、現憲法下で行うのであれば、宮中内の私的な行事の一つとして執り行われるべきものではないかと思っています。歌人や国民を巻き込んで行われることは、国・皇室、国民双方が、様々な意味で、皇室を利用することになって
しまうと思うからです。法的な根拠を持たない被災地訪問と同じ「公的行為」とする考え方もあるようですが、
いずれも、私的行為のように思えるからです。
しかし、岡村様の疑問は、やはり宮内庁にただすのがよいと思います。谷川秋夫様の歌会始欠席の際、披講されなかった件で、熱心な働きかけによって慣例を変えた実績がおありのようですから、ぜひと思ってます。
選者となった歌人に期待するのは、無理でしょう。
投稿: | 2019年1月29日 (火) 13時48分
初めてお便り申し上げます。数年前、歌会始を検索していて内野様のブログを拝見しました。短歌にお詳しい内野様に、歌会始で 毎年 決められるお題のことで、お便りする次第です。
今回のお題は「光」でした。実況中継の説明では、お題は陛下がお決めになるそうで、それなら何の文句も言えません。しかし、それ迄に何か選考委員会のようなものも無しで決められるのでしょうか。
「光」のお題は三度目です。
昭和35年 「光」http://www.kunaicho.go.jp/culture/utakai/utakai-s35.html
平成22年 「光」http://www.kunaicho.go.jp/culture/utakai/pdf/utakai-h22.pdf
平成31年 「光」http://www.kunaicho.go.jp/event/eishin.html
陛下が独断でお決めになるにしても、三度も出るのは異常ですし、それが誰の指摘も受けずフリーパスでお題になるというのも不思議です。
それも、平成最後の記念すべき?歌会始で、言葉が良いとしても、使い古し?の「光」で、国民に詠進させるというのも無神経に思えます。
宮内庁HPを見ても、同じお題が三回というのは無いようで、これは異様に思われます。詠進者は海外からも有り、国民としても恥ずかしい気がします。内野様のブログに お題のこのことへの言及はなく、これが普通とお思いなのでしょうか。
お題としての漢字は幾らでもある筈で、この先、新元号になっても これが踏襲されるようなら、改善へのご尽力をお願いできないでしょうか。
来年のお題は、皇太子殿下ご即位の時に発表されます。その時、また古いお題から出されては堪りませんし、余りに能がありません。
決まってからでは遅いので、歌人の方達に発表前にチェックとか打診して頂く訳には行かないものでしょうか。
内野様は、歌会始の儀式自体、好ましくないとお思いかも知れませんが、この国家行事を中止するには多大な時間がかかります。今日明日にやめることも無理です。それなら、せめて恥の少ない行事を、と願っています。
「恥」と言えば、余談になりますが、入選者に授与される「入選賞状」ご覧になったことがお有りでしょうか。毛筆を詠進条件としている皇室行事としては、恥の最たるものです。これが入選者の家宝として子々孫々に伝えられるのは、国の恥で耐えられない思いです。
しかし、それを指摘する人もいません。選者がご存知かどうか判りませんが、話題になった話も聞きません。私が拝見したのは、平成五年の方の賞状ですが、今は改善されているのでしょうか。宮内庁にそれをチェックする部門も無いことを憂えます。
投稿: 岡村久子 | 2019年1月26日 (土) 17時04分