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2021年10月24日 (日)

眞子さんと小室さんの結婚騒動~「さま」と「さん」って、どういうこと ?

 多くのメディア、良心的な?とされる報道番組や新聞に至るまで、眞子さんと小室さんの結婚報道を見ていると、もう、男女平等、ジェンダーを語る資格があるのだろうかと思ってしまうし、結婚する二人、その家族らへのバッシング報道には、うんざりというよりは、怒りさえ覚える。

たとえば、直近の眞子さん30歳誕生日の記事を見てみよう。
「眞子さま30歳に 皇族としての最後の誕生日」『毎日新聞』(2021年10月23日)
「眞子さま30歳 26日に婚姻届 皇族最後の誕生日」『東京新聞』(同上)
「眞子さま30歳 皇族最後の誕生日」『朝日新聞』(同上)

 いずれの記事も、当然のことながら、10月26日に小室圭さんと結婚することに触れるが、眞子「さま小室圭「さん」という敬称の表記は変わらない。また、同日には、つぎのような記事もあった。どちらかといえば、皇室や小室圭さんバッシング報道にやや批判的な側面を見せる記事でも同様であった。
「眞子さまの結婚から見えたもの―自粛まとう皇室 もっとアピールを」(デーブ・スペクター談/聞き手・武田啓亮)『毎日新聞』
「週刊ネットで何が・・・〈小室さん〉扱えば〈ドル箱〉に」(ニュースサイト編集者・中川淳一郎)『東京新聞』

 週刊誌も、広告の見出しの限りだが、一様に「さま」「さん」である。あの「週刊文春」『週刊新潮』も同様であった。たまたま見ていた10月23日TBS「報道特集」の金平キャスターは「さん」と言いかけたように聞こえたが「眞子内親王」と言い換えていた。なお、敬称の限りでいえば、森まゆみ「寄稿—眞子さんの結婚に思う」(『朝日新聞』10月22日)では、「さん」で貫かれていた。
 この現象はたんなる些末にすぎないのだろうか。こだわる私がおかしいのだろうか。
 また、これも、冒頭の誕生日の記事で、いずれも「30歳」が主たる見出しになっていたことにも、違和感を覚えた。これらの記事に誘発されて思うのは、まじかに控えた「結婚」ということではないか。男性皇族の結婚の場合、年齢が見出しになることがあっただろうか。「皇族最後の誕生日」はいいとしても、とくに年齢を見出しにすることもなかったのではないか。内閣府の発表によれば2019年現在の結婚平均年齢は、男性が31.2歳、女性が29.6歳なのである。 

 先の敬称の差は、何を意味しているのだろうか。その根底には、天皇制という不平等の根源を、日本国憲法が擁していることにあるはずだ。こうした憲法のもとに、法律や政治、教育やメディアが、呪縛とも思わず動いてきたのではないか。支持基盤が高齢化して危機感を持ち、ひたすら自民党に縋り付きたい公明党の山口代表、共産党は「天皇制は憲法違反である」と主張する党だとの演説に、あわてて否定する共産党でもある。

 少なくとも、象徴天皇制といえど、政治に利用されてきた存在であって、民主主義とは相容れない制度であることを私たちは自覚し、天皇はじめ皇族方の政治利用を監視しつつ、皇族方には、なるべく、静かにしてもらいながら、私は、その終焉を願っている。

 

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2021年10月15日 (金)

マイナンバーカード、このCMの洪水はなんだ?!

たんなる予算消化かも?!

 8月28日、朝日新聞のマイナンバーカードの全面広告に驚いて、当ブログに下記の記事を書いた。朝日だけではなく同日の毎日新聞にも全面広告があったので、他の全国紙にもあったのかもしれない。

2021年8月28日 (土)マイナンバーカード、全面広告、朝日の見識を問う
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2021/08/post-820e5f.html

  以降、自民党総裁選に続いて、総選挙の政局報道で姦しい中、新聞広告に驚いているまもなく、あれよ、あれよと、テレビのコマーシャルがしきりに流れ始めた。
 マイナンバーカードの発行が4500万を突破したそうで、佐々木蔵之介が、八百屋?の店先で「三人に一人はカードを持ってるんだって」と店員と掛け合うのは「そろそろあなたもマイナンバーカード「<3人に1人持ってる>」篇 15秒」というのらしい。また、喫茶店で、カードを持ってない田中みな美(後から彼女の名前を知ったのだが)が友人にそのメリットを聞くのが「そろそろあなたもマイナンバーカード<メリットを知る>篇 30秒」、黒柳徹子が中年の男性を相手に、一方的にしゃべる「そろそろあなたもマイナンバーカード<デジタル苦手>篇 15秒」であることがわかった。ヤフーで検索していると、右肩にしょっちゅうこの広告が現れる。8月28日から一斉に流し始めたことは、ネット上の総務省の「報道資料」(連絡先:自治行政局住民制度課マイナンバー制度支援室)で知った。
 そして、10月10日には、また、下記のような黒柳徹子の全面広告に接して、税金には違いないが、いったいこの広告費は、どこから出ているのかと、疑問が広がった。

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「society5.0時代の社会」ってなに?

 上記のマイナンバー制度支援室に聞いてみた。総務省のホームページの「予算・決算」のところでわかります」というので、それじゃあ、ということで、パソコンをひらき、誘導してもらい「令和二年度総務省所管第3次補正予算の概要」(2021年1月)からわかるという。なんと、これらの広告費は、2020年、昨年度第三次補正予算、つまり、その積み残しから出ているというのだ。その「概要」をたどってみた。「経済政策」として3,981.3億円が計上されている。 

【経済対策】
Ⅰ 新型コロナウィルス感染症の拡大防止策
 30.4億円

Ⅱ ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現
 .国・地方を通じたデジタル・ガバメントの推進
 1,799.3億円
 .マイナンバーカードの普及・利活用の促進

 1,336.4億円 
 1)マイナンバーカード普及に係る対応策強化

  1,032.1億円
 2)マイナンバーード機能のスマートフォン搭
  載等の実現に向けた実証等
    39.6億円
 3)マイナポイントによる消費活性化策の拡充
    250.0億円
 4)マイナポイントの基盤を活用した個人給付の検討
    14.7億円

 .テレワークや遠隔教育を支える情報通信基盤の整備
 .Beyond 5Gをはじめとした先端技術への戦略的投資
 5.デジタル化の進展に合わせたセイバーセキュリティの確保
 6.新しい働き方・暮らし方の定着・デジタル格差対策の推進
 7.総務省の政策資源を総動員した海外展開の推進

Ⅲ 防災減殺、国土強靭化の推進などの安心・安全の確保
  50.2億円

 各項目の解説を見るまでもないが、
Ⅱ-2-1)マイナンバーカード普及に係る対応策強化 1,032.1億円

 ということで、「キャンペーンやテレビCMなどの広報活動を強化する」ための予算が1000億円を超えていることがわかる。昨年度の積み残し、残してはならぬ、使いは果たさねば、来年度度予算獲得にも影響し、9月1日デジタル庁発足の機もあって、8月下旬からの一斉広報になったのも見て取れる。あんなに大きな新聞広告、しきりに流れるテレビコマーシャル、億単位のお金を湯水のごとく使っているようにしか見えない。

 マイナンバーカードを持つ、持たないが、今の私たちの暮らしに、どれほどのメリットがあるのだろうか。一番関係ありそうなのが、マイナポイント事業によるマイナンバーカード普及と消費の活性化をうたったのだが、笛吹けど踊らず、マイナポイント普及のために、表に見るように、別に260億円以上計上しているのである。
 ところが、以上は、あくまでも補正予算、令和二年度の本予算では、「総務省所管予算概要」の主要事項として「Ⅰ 東京一極集中の是正と地域の活性化」と並んで「Ⅱsociety5.0時代の社会」とある。その中で

・マイナンバーカードの普及とマイナンバー制度の利活用の促進:1,664.4憶
・マイナンバーカードを活用した消費活性化と官民共同利用型キャッシュレス結成基盤の構築:2,457.6憶

以上が、すでに計上されているのである。この予算で、何がどう使われて、どれほどの残っているのか、足りないのか。わけが分からないまま、また次年度の予算が組まれていくではないか。「society5.0時代の社会」ってなに?

「「society5.0」とは」「内閣府のホームページより
https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/society5_0.pdf

マイナポイント事業の失敗

 ちなみに、新聞報道によれば、マイナポイント事業は当初4000万人にマイナポイントの付与(2万円の前払いに対して5千円のポイントを付ける)の実施を予定していたが、ことしの8月末現在でマイナポイントに登録したのは2250万人に過ぎなかった。財務省によれば、マイナポイント事業の予算は3000億円で、5000万人分が確保されているがこのままだと大半を使い残す可能性がある(「マイナポイント登録対象半数以下」『東京新聞』2021年10月12日)。

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 マイナポイントの2万円で2万5000円の買い物ができるからとマイナンバーカード取得の促進をはかった。目の前にニンジンをぶら下げれば何とかなるとでも思ったのか、消費者はそう簡単には動かなかった、というわけである。上記の総務省所管予算の数字と上記の報道の財務省の数字とは若干異なるが、本予算、補正とをあわせれば、それに近い数字となるのだが(2457.6憶プラス264.7憶)。

 ところで、マイナポイント事業の前提となるマイナンバーカードの取得率といえば、総務省から毎月1日現在のデータが発表になる。10月1日現在の詳細は以下のサイトで見られる。交付枚数として全国人口1億2665万4244分の4867万2550で、38.4%になったそうである。都市部は40%をわずかに超えるが、町村部が34.7%であった。都道府県別、市町村別の取得率、取得率のベスト10まで発表されている。ちなみに、ベスト1は石川県加賀市で70.0%、私の住む千葉県佐倉市は32.8%で、先月は31.6%であった。9月の全国の取得率は37.6%であったから、それぞれのアップ分が、今回の異様なほどの「広報活動」の成果とでもいうのだろうか。

マイナンバーカードの市区町村別交付枚数等について(令和3年10月1日現在)https://www.soumu.go.jp/main_content/000773377.pdf

 マイナンバーカードは、行政手続きがラクになる、保険証にもなる、運転免許証にもなる、キャッシュレス決済にもなる、スマホにも搭載するというのだが、それだけ情報が集中しているカードがあるということは、個人情報の漏洩や悪用のリスクが高まることであり、システム整備などによるコスパは、低下するばかりであるのは、上述の通りである。億単位の税金が、どこでどう使われているのかを知ることは、まず、国民にとっては至難の業なのである。一度でも知りたいことを国や自治体に尋ねてみると、回される、待たされる、はっきりしない、あきらめさせる・・・。情報提供や情報公開を試みてみるとイヤというほどわかる。

 

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2021年10月11日 (月)

水野昌雄さん追悼~初期の評論をめぐって

 『短詩形文学』10月号は、ことし5月、91歳で亡くなった水野昌雄さんの追悼号で、私も一文を寄稿しました。発行人の下村すみよさんにはわがままも聞いていただきました。やや自分の歩みに引き寄せてしまった感があるのが、気になるところです。思えば、水野さんには、さまざまな機会を、それとなく与えてくださったことに感謝しています。

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 机上には、いまにもばらけそうな、古い『短歌研究』の数冊が置かれている。

①水野昌雄「新しき抒情の確立のために」『短歌研究』
一九五八年九月
②水野昌雄「敗北の記録を超えるために」『短歌研究』
一九五九年四月

 水野さんの初期の評論である。①は、『短歌研究』新人評論賞の第一位入選作「短歌散文化の性格」(秋村功)につぐ第二位の入選作であった。選考委員は、久保田正文・高尾亮一・上田三四二と編集部の木村捨録と杉山正樹の五人。その要旨は、短歌否定論の要因が「短歌的抒情」や「韻律」であるかのような議論を、啄木は感傷を超えた進歩性をもって、茂吉は万葉の世界を二〇世紀にもたらすことによって超えてきたように、新しい抒情性の可能性を探ることの意義を説いた。同時に、「日常語から選びだされたうつくしい日常語によつて表現することが、文語文法の場合よりも高度な短歌的抒情を持つ日の来るまで、文語は民衆の中で生命を保ち」「日常語によって短歌形式を自由に駆使できるようになつたとき、おそらく短歌形式は少なくとも現在とは異なつたものになるだろう」と論じた。②は、一九五九年三月『短歌研究』の「歌会始は誰のものか?」を受けたような形で書かれている。その記事は、歌壇内外の四〇余人の回答を、杉山正樹がまとめたものであろう。五九年四月に明仁皇太子の結婚を控え、まさにミッチーブームに沸いていた頃である。歌壇は、「歌会始」の選者がすべて現代歌人になり、著名な歌人が入選したり、陪聴者になったりしたことにより民主化されたとして、オマージュを呈する状況であった。しかし、杉浦明平の「現代短歌と宮中歌会始が近づいたというのが本当なら、それは現代短歌が文学的に救いがたく堕落したということ以外ではない」、岡井隆の「文学であるならば天皇制と結びついた国家権力に守られたくない。民衆の下からのエネルギーで守られてこそ、その資格がある」との言も伝えている。この年、選者になった木俣修は「ちょうど新聞や雑誌の選歌をする場合と同じだと割り切つている」と回答、この言は、一九九三年から選者を引き受けた岡井の弁と全く同じであったことに気づかされる。

 ②では、「歌会始の隆盛によって短歌は盛大になったかも知れないが、短歌作者がどれほど増えようと、ジャーナリズムでどれだけもてはやされようと、文学としての条件を脱落することの代償として与えられたものに何の意味もない」と述べ、「戦後の戦争責任をふまえた短歌否定論」と歌会始の問題に対決することができるのは、強烈な個性と豊かな感受性が必要不可欠で、「抵抗することを通して生活論理を変革」(篠弘)することを核とした「民衆短歌」の一つとしての無名な作者たちの作品であると記す。
 水野さんは、私の手元にあるだけでも、以下の評論集を出版している。

③『リアリズム短歌論』(短歌新聞社 一九七〇年)

④『現代短歌の批評と現実』(青磁社 一九八〇年)

⑤『歴史の中の短歌』(アイ企画 一九九七年)

⑥『続・続・歴史の中の短歌』(生活ジャーナル 二〇〇七年)

  二〇〇七年には『続・歴史の中の短歌』も刊行したとあるので、この二冊の刊行を機に企画されたのが「水野昌雄と現代短歌を語る会」(二〇〇七年一〇月二〇日)ではなかったか。この会には、私も「水野昌雄の評論の一断面―短歌と天皇制」と題して報告しているが、そのレジメも当日の記録も見つからない。
  当時、関心のあった安保闘争後になされた岩田正・水野論争についての報告があったのか定かではないが、いま少しその論争に立ち入ってみたい。水野さんの発言は、③の最終章に収められている。岩田さんの『抵抗的無抵抗の系譜』(新読書社 一九六八年)も書棚には確かにあったはずの草色の本も見つからないので、心もとないのだが。この論争のあらましは、篠弘『近代短歌論争史・昭和篇』最終章「現代短歌の論争(二)」(五七二~五七五頁)の「社会詠のゆくえ」の中に収められている。〈安保改訂をうたう〉(『短歌』一九六〇年五月)〈再論・社会詠の方向〉(『短歌』同年九月)と『新日本歌人』誌上の素朴リアリズムをめぐっての水野・一条徹論争をふまえての、岩田「抵抗的無抵抗の系譜」(『短歌』六一年七月)から始まった一年余にわたって展開された論争である。
 岩田は、六〇年安保の抵抗歌が結実しなかった要因は、人民短歌運動の主体性の脆弱さとともに技法的な立ち遅れがあったとして、それを克服するには、技法と表現による様式美と造形美に命を懸けている前衛短歌の方法に学ぶべきだと主張した。これに対して水野は、素朴リアリズム批判には賛成し、前衛短歌の方法を不可欠とすることには反対としながら、抵抗歌の方法論の模索が続いていることも明らかにしている。
 塚本邦雄、岡井隆の没後、前衛短歌論は盛んであるが、近年、私は、技法や表現の追求のあまり、テーマを失うような、そして、とくに若年層の口語発想は頷けるにしても、その内容の希薄さが短歌の発信力を弱めているのではないかという危惧を覚えている。水野さんが提示した課題は、半世紀以上経た今日でも有用だと思っている。     

・一茎のちから集めてここに立ち根づきし薔薇やまだ繊きとげ
(『冬の屋根』1973年)
・「悲憤慷慨本日めでたく本人死去」と通知をしよう献花は辞さず (『正午』2001年)

  一九八八年の冬、連れ合いの東京への転任が四月に迫り、私の転職や引越しの準備で忙しい頃だった。名古屋での『短詩形文学』の歌会の席であったのだろうか、水野さんは「渡辺順三賞」を手渡してくださるという。私が数年にわたって連載していた「『歌会始』―現代短歌における役割をめぐって」(『風景』一九八三~八八年一月)を目にとめて、推してくださったのだと思う。私は、一九七〇年、同人であった『ポトナム』の「白楊賞」以来、後にも先にも、外からいただく、たった一つの賞、大事な賞になった。
  一九九四年の「8・15を語る歌人の集い」でのスピーチのお誘いを受けたとき、戦前生まれながら、幼時の疎開体験しかない私は戸惑ったが、現在、関心のあることや調べていることでもよい、との水野さんや日野きくさんの勧めで、『台湾萬葉集』について話したのであった。清水房雄、白井洋三、金子きみさんという大先輩に混じってのことであった。その後、『台湾萬葉集』の編者の呉建堂さんから何通もの手紙を頂き、意見交換をさせていただいた。そんなことがきっかけにもなって、私は、早期退職を思い立ち、社会人入学した大学で、「日本の占領下の台湾における天皇制とマス・メデイアの形成」という修士論文を提出したのが一九九八年だった。その頃、立教大学の五十嵐暁郎教授らが中心になって「天皇制研究会」を立ち上げた折、声をかけられた。高橋紘さんや原武史さんらの末席に連なることにもなり、天皇制について多角的な話を聴くことができたのは、何よりも貴重な体験となった。水野さんにも、最近の歌壇の状況と天皇制について、とくにリベラルとされる人たちの親天皇制への傾斜について伺っておきたかった、といましきりに思う。
  二〇〇一年一一月、哲久忌でのスピーチの依頼も水野さんからだったと思う。水野さんは司会をなさっていた。私は、ポトナムの歴史を振り返るたびに、プロレタリア短歌との関係が気になっていたので、「ポトナムにおける坪野哲久」と題して話をした。
  近年では、「短歌サロン九条」で、二〇一七年「沖縄の天皇の短歌」、二〇一九年「斎藤史」について報告した際に、お会いしたとき、お元気だったので、その姿だけが印象に残っている。長い間、遠くから見守ってくださっていたのではないかと感謝の思いは尽きない。

・四つ目の橋を渡りて引き返す自転車のバッテリーたしかめながら(『短詩形文学』二〇二一年一月)
・ベランダにしばらく一人よりかかり点滅はじめし鉄塔を見る
(『現代短歌新聞』二〇二一年五月)

(『短詩形文学』2021年10月)

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枯れたアジサイにも風情があってなかなか伐り落とせない。お隣のアメジストセージには長い間楽しませていただいている。

 

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2021年10月 1日 (金)

NHK提訴、第1回口頭弁論の傍聴へ。森下経営委員長は出廷せよ!

 9月28日、秋晴れの下、久しぶりの東京、霞が関も久しぶりのことだった。今回のNHK裁判までの経過はなかなか厄介なのだが、朝日デジタルは、その日の夜、つぎのように報じている。

かんぽ報道で会長厳重注意の議事録 開示訴訟でNHK側争う姿勢
宮田裕介2021年9月28日 19時59分)
 かんぽ生命保険の不正販売を報じた番組を巡り、NHKの経営委員会が2018年、当時の上田良一会長を厳重注意した問題で、市民ら約100人がNHKと森下俊三・現経営委員長を相手取り、厳重注意の経緯がわかる経営委の議事録の全面開示などを求めて提訴した訴訟の第1回口頭弁論が28日、東京地裁であった。NHKと森下氏は請求の棄却を求め、争う姿勢を示した。原告側は議事録などの開示を4月に求めたのに、応じていないのは違法だとして、6月に提訴していた。・・・

2021928hk  
東京地裁に入る原告団(筆者撮影)

 原告の私たちが求めているのは、日本放送協会NHKに対しては経営委員会の議事録の全面開示と森下経営委員長には、放送法に規定のある経営委員会議事録を遅滞なく開示する義務を怠ったことによる損害賠償請求であった。100人を超える原告団の一人として、提訴に至るまで、NHK視聴者団体の一つで少しばかり手伝いをしてきた者として、やはり傍聴しておきたかった。定員98人の大きな法廷ながら、コロナ感染対策のため、今回の傍聴席はその約半分、抽選で入れなかった方もいらした。私たち原告のあらかじめ申請した13人は黄色い傍聴券を渡され、その席は、片側に特定され、何回も人数を確認された。

 裁判までの経過をたどると・・・2018年4月24日、NHKは「クローズアップ現代+」で、日本郵政のかんぽ不正販売問題を報道した。その後、日本郵政グループからの抗議を取り次いだNHK経営委員会から上田NHK会長は「厳重注意」を受けていた。同年8月10日に放送予定だった「クローズアップ現代+」の続編は、郵政との関係が深い森下俊三経営委員長代行ほか多くの経営委員から、その内容にまでクレームがつき、放送は延期になっていた。これらの経過を、2019年9月26日、毎日新聞がスクープし、10月には、野党のヒアリングで森下委員長代行は、上田会長への厳重注意をした時の議事録は作っていないと発言。2019年12月には、森下委員長代行は委員長に選出された。その後、毎日新聞が件の経営委員会議事録の全面開示を求めたところNHKは拒否したとの報道がなされたのは毎日新聞2020年2月27日だった。

 2020年3月6日、市民グループが議事録の全面開示と森下委員長の辞任を求める要望書を提出、辞任署名を提出したところ、NHK内部に設置されている情報公開審議会から、開示せよとの答申が二度出されたにもかかわらず、全面開示に至らなかったのである。
 この間、市民グループは、森下委員長の罷免を求める国会請願、森下委員長の再任反対署名などを実施、2021年6月14日、上記提訴に踏み切ると、NHKはあわてて?議事録開示と称して原告らに提示されたものは、不備の多い正式なものではなかったのである。
 かくて、9月28日第1回口頭弁論に至ったわけである。原告側は、市民グループで運動を続けてきた二人と元NHKプロデューサーの三人の原告と主任弁護人の意見陳述がなされたが、NHK側は、弁護士や関係職員が出廷しながら、一言の意見陳述もなされなかったし、森下経営委員長とその代理人弁護士も出廷していなかった。

 これは一体どういうことなのだろう。森下経営委員長は原告側の主張を認め、争うつもりがないのか。そうでないとしたら、この提訴を軽視しているからなのか。森下経営委員長の陳述を聞かねばならない。
 「クローズアップ現代+」の続編の放送延期の間、かんぽ生命保険不正販売の続行によって、多くの被害者が出すに至ったことへの責任も大きい。何よりも放送の自由と表現の自由にかかる重大な裁判であることは間違いなく、私も生まれて初めて「原告」を体験することになった次第である。
 裁判後の司法クラブでの記者会見、その後の報告会の模様は、以下のユープランさんのフルバージョンの録画で見ることができる。陳述などの資料も添付されている。

https://www.youtube.com/watch?v=XSl5OmhEQ20

 

 

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