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2022年5月30日 (月)

マイナンバーカード、ここまでやるの?またもや、マイナポイントが始まるという

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 5月28日、週末の新聞の全面広告である。我が家で購読している三紙とも掲載されているので、全国紙のみならず地方紙にも掲載されたのだろう。「マイナポイント」第2弾のPRである。昨年の夏から秋にかけての、マイナンバーカード自体の普及のための広告の洪水にも随分と驚かされたが、今回もその一端ということか。またもや、”最高”20000円分のポイントで、人を釣ろうと大げさのことではある。役者も代わって、新庄剛志と館ひろし、あとの二人の名前は知らない。しかし、ことは大げさでは済まないのである。この広告費、いったいいくらかかっているのだろう。今回の広告のスポンサーは、デジタル庁・総務省・厚生労働省である。

 私は、当ブログで、2016年1月から始まったマイナンバー制度について、シツコイといえばシツコイのだが、後掲のように、何度も発信してきた。私には、マイナンバー制度のメリットが理解できない。メリットがあるというのならば、宣伝せずとも、普及するはずである。その広報、促進対策に、湯水のごとく税金が使われていることも許せない。今回は、まだ問い合わせていないが、たとえば、昨年、新聞全面広告、テレビコマーシャル、ネット上の広告・・・にどれほど使ったのかを総務省に問い合わせても、電話は回されるばかりで、行き着いた先の自治行政局住民制度課のマイナンバー制度担当室では、「広告代理店でないとわかりません?!」ということになる。

 6月から始まるというマイナポイント第2弾というのは、マイナンバーカード取得者で、第1弾のマイナポイント申込者、これからのカード取得者も 申請すると5000円相当のポイントが付き、カードを健康保険証としての利用申込みをすると7500円相当のポイントが付き、公金受取り口座を登録すると7500円のポイントが付き、合計2万円のポイントが付くというものである。マイナポイント申請は22年9月まで、上記利用申し込み、登録申し込みは23年2月までという。これで、カードの交付率を上げようというわけである。

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NHK
政治マガジ(2022年5月30日)より

 いずれにしても、マイナンバーカードに、個人情報が積み上げられることになるのだから、その保管・利用には、細心の注意が必要となる。保険証として使える医療機関が、まだ極端に少ない。キャッシュレス決済が可能になるのだが、18種のキャッシュレス決済サービスのどれか一つを選ばなければならない。銀行口座の登録は、いわゆる徴税との「紐つけ」の不安も大きい・・・。ご家族一緒の申請だと、ポイントはたくさんつきますよ、ということになる。子供の分までということになると、その管理・利用はどうなるのだろう。マイナンバーカードの交付に必要な赤ちゃんの写真の撮り方まで指南するサイトがあった。

 ところで、ここ数年の、カード交付率は、以下の通りである。21年に飛躍的に倍増したのは、コロナ対策として特別定額給付金として国民1人当たり一律10万円の給付が、その要因であった。20年4月20日の閣議決定により、(1400億円余の事務費を含め13兆円を計上)マイナンバーカードによるオンライン申請も可能となったからであった。しかし、郵送による方が、給付は早く、オンライン申請者の給付はかなり遅れるという結果になった。もう一つの要因として、マイナポイント制度の第1弾が20年9月1日から21年3月31日に実施ではあったが、はたして、その効果を一概にそれを示す数字はないのだが。

マイナポイント事業第2弾によってどれほどのカード普及が促進されるのか、私には疑問が多い。

 

2019年7

2020年5

2021年5

2022年5

全国

13.5%

16.4

30.0

44.0

町村

10.8

13.6

27.0

39.8

総務省のホームページ「交付状況」からから作成。19年は7月1日、20年以降は5月1日の数字で、%を示す。

 

<昨年、デジタル庁発足前後のマイナンバー関係の当ブログのレポート>

イナンバーカード、このCMの洪水はなんだ?!(2)(2021年11月13日)

http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2021/11/post-dbc3cf.html

マイナンバーカード、このCMの洪水はなんだ?!(2021年1015日)http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2021/10/post-8b9bd0.html

◇デジタル庁、発足だって?!いったい何をやってくれるのか~ 8000憶はどこへ行く(202191日)

http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2021/09/post-ecdd68.html

マイナンバーカード、全面広告、朝日の見識を問う2021828日)

http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2021/08/post-820e5f.html

なんとも鬱陶しいマイナンバー、私は使わない202143日)
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2021/04/post-449614.html

<マイナンバー制度導入前後の当ブログのレポート>

◇マイナンバーその後、保険会社からマイナンバー申告書類が届く2016814

http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2016/08/post-23cd.html

◇マイナンバーに法的根拠はあるのか~内閣官房も自治体も、その説明に苦慮している! 16/01/15

http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2016/01/post-7a6d.html

◇マイナンバー通知、到着、どうしますか、「ニューデンシャ」って、何?! 15/12/05

http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2015/12/post-8d52.html

◇「マイナンバー制度」は、日本だけ!? 先進国の失敗からなぜ学ばないのか 15/11/25

http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2015/11/post-afb2.html

 

 

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2022年5月21日 (土)

「日米同盟強化」にだまされてはならない!

   あすは、バイデン大統領が来日、首都は、厳戒態勢で迎えるといい、抗議の集会予定も聞こえてきません。日本はこれでいいのだろうかと、疑問が絶えません。
 地元の9条の会のニュースを1年半ぶりで出すことができました。私たちの会は、2006年に発足しています。この間、ニュースの発行・配布とともに、チラシの駅頭配布、講演会、映画会、近隣の戦跡めぐりなどを実施してきました。また、市内にある4つの県立高校前でのチラシ配りも、三巡しています。コロナ禍の中、私たちは、何回かの例会は中止しましたが、細々ながら、活動を続けています。
 今回、4月、5月とニュースを続けて出すことができたのです。私は、44号に以下の一文を寄せています。2月の例会に提出したものなので、やや旧聞に属します。まだ、ロシヤのウクライナ侵攻が始まる前のことです。
 この戦争を機に、日本政府は日米同盟をさらに強化しようとしています。日米安保条約、日米地位協定がいかに屈辱的なものか、アメリカは、日本をいいように基地として使い、軍用機や武器を買わせています。沖縄の実態を見ればよくわかります。米軍基地を持つ他の国と比較してみると、より明確になるのではないでしょうか。

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どうする?どうしよう!

北朝鮮のミサイル発射より、沖縄の米軍基地から拡大したコロナ感染の方が恐ろしかった。日本の国土なのに、国内法は原則不適用の治外法権なのだ。羽田空港発着の新ルートでは、なぜ都心を低空飛行しなければならないのか。房総の空では、羽田着陸の航空機が3分に一機が飛ぶ時間帯もある。なぜそんなことになるのか。それというのも、「横田空域」と称して、米軍は、日本の航空機を飛ばせない空域を占有しているからだ。日本の空なのに、東京の空なのに、3800フィート、1100メートル以下は、米軍の占有、管理下にあるという。これとて、日本政府は、不動の如く日米地位協定や日米合意を持ち出すが、米軍の占有空域は、協定や合意ですらない。日米協議とはいうものの、その会議録も非公開でアメリカの言いなりでしかない。
ドイツやイギリス、ヨーロッパッパ諸国にもアメリカの基地はある。けれど、日本のような米軍優位を放置している国はない。アメリカは日本を守ってくれるどころか、危険にさららしているようなものだ。国民の命と財産を守るはずの日本政府は、なぜノーと言えないのか。これほど法律や憲法をないがしろにされていて、黙っていることはできない。

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(この画像からは、読み取りにくいので、下をクリックしてください。)

ダウンロード - r2_p15.pdf

以下のホームページをも併せて読み比べるとよくわかるのではないか。

沖縄県ホームページ(沖縄から伝えたい米軍基地の話Q&A

https://www.pref.okinawa.jp/site/chijiko/
ichitai/tyosa/documents/r2_p15.pdf

 外務省ホームページ(日米地位協定Q&A)

https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/qa.html

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ニュース各号の全容は、以下のPDF版で読むことができます。ぜひお立ち寄りください。

ニュース43号file:///C:/Users/Owner/Downloads/%E3%81%95%E3%81%8F%E3%82%89%EF%BC%99%E6%9D%A1%E3%81%AE%E4%BC%9A43%E5%8F%B7%20(4).pdf

ニュース44号file:///C:/Users/Owner/Downloads/%E3%81%95%E3%81%8F%E3%82%89%EF%BC%99%E6%9D%A1%E3%81%AE%E4%BC%9A44%E5%8F%B70418%20(3).pdf

 

 

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2022年5月17日 (火)

岩波ホール、さようなら~「メイド・イン・バングラデシュ」を見る

   東京に出たついでに、思い切って、岩波ホールに寄ってみた。上映時間もちょうどいいので、予備知識もなく飛び込んだ。 整理券に従って入館したが、観客は30人程度か。7月には閉館と聞けば、なおさらさびしい。熱心に通ったというわけでもないが、大昔の映画ファンとしては、やはり悔しさもある。

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岩波ホールはこの神保町ビルの10階にある。

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廊下の壁には、これまでの上映映画のポスターがびっしりと展示されていた。

 

「メイド・イン・バングラデシュ」(2019年、フランス・バングラデシュ・デンマーク・ポルトガル)

 バングラデシュのダッカには、世界の衣料品メーカーの多くの縫製工場が集中している。というより、各国のメーカーは、安い素材と工賃によって安く仕上げるために、安い労働力の得られる他国に多数の系列工場を抱えている。メイド・イン・バングラデシュの衣料品が世界に出回っているのだが、その縫製工場の劣悪な労働環境の中、低賃金で働く、縫製工場の一人の女性労働者が、仲間たちと、さまざまな苦難に遭いながら、労働組合を立ち上げるストーリーである。

   教室のような狭い場所に、三、四十人の若い女性たちが古いミシンでTシャツを縫い上げてゆく。その縫製工場では、アイロン室からの失火で火事になったり、夜勤の末、扇風機も止められたミシンの下の床でごろ寝をさせられたり、賃金や残業代の遅配は日常的だったりする上、男性監督の監視もきびしい。1日にTシャツ1600枚以上仕上げながら、月給がその2・3枚分という過酷さなのだ。地方からダッカに来て、色々な職場を転々としながら、いまの工場に勤める23歳の主人公は、家庭では、無職の夫を養う苦しい暮らしだった。
  工場近くで出会った、労働者支援団体の女性から、工場の実態を知りたい、お礼も出すからと声を掛けられる。出向いた彼女は、支援者から労働法や労働者の権利について教えられ、署名を集めれば組合が作れると勧められる。与えられたスマホを使い、工場の実態や経営者の発言などを記録するようにもなる。労働法を学び、集会にも参加、署名も集まり、監督官庁の労務省?への組合結成申請にまでこぎつける。条件が満たしているのに、なかなか認可が下りず、何度も役所に通うが、上司のところで止まっているらしいと知る。家に帰れば、職を得た夫からは、もう働かなくてもよい、組合を作るなんてやめろ、とまで、暴力を振るわれもする。
 いつまでも組合認可が下りない役所で、受付を突破、幹部の部屋になだれ込んで、なぜ認可が下りないのか詰め寄ると「外からの・・・業者からの圧力があって・・・」と言いよどむ。そこからが彼女の底力というか、勇気というか、スマホで録音した発言を言質にとって、とうとう書類にサインをさせるのだった。 
 映画は、そこで終わり、そこからも苦難が続くであるだろうに、彼女は、成し遂げたという力強い眼差しながら、かすかな笑みを浮かべるのだった。

   ドキュメンタリータッチに徹したという監督のルバイヤット・ホセインは、足踏みミシンで、黙々と縫い続ける女性たち、主人公の住む街の狭い路地、そして家賃の支払いもままならない暗くて狭い家、家主とて、やっとテレビが置ける程度の貧しさ・・・を丹念に描いている。路地に行き来する人たち、サッカーボールをただ転がしているだけの子どもたち。仕事を終えた主人公たちは、みな若い、恋の話にも興じながら家路につく・・・、 印象深い場面がよみがえる。

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監督、主人公のモデルは語る

 2020年に来日したとき、監督は、インタビューで、縫製工場で働くのは女性が80%を占め、平均年齢は25歳、2013年頃の状況だったと語る。その後、たしかに、月給は2倍、シャツ4枚分程度にはなったが、現在の縫製工場は機械化が進み、そこで働くのは男性が多くなり、女性の失業者が増えているともいう。なお、業者と政府の癒着という構図も映画では描かれているが、主人公に詰め寄られた役人のモデルは、政府から解雇され、いまは労働者の支援をしているとのことであった。この映画製作の動機は、主人公のモデル、活動家のダリヤ・アクター・ドリに出会ったことにあり、そこから調査や取材も始めたという。

 一方、モデルとなったダリヤ・アクター・ドリも、同年、来日した折に、「私は工場の仕事に誇りを持って働いてきました。それなのに解雇されかけた。労働者の権利を守るためには、今、自分が動かなければいけない。後に続く若い人たちの夢や希望まで潰えてしまう。自分1人のための戦いではないと思ったから、苦しくても続けられたのだと思います」と語り、映画で描かれているよりも、私の労組の活動に対し、夫は、協力的ではなく、離婚したとも語っている。

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振り返って、日本の場合~ユニクロは大丈夫?

 最近、中国の新疆ウイグルスで過酷な労働条件のもとに生産されたワタを使用しているとされたユニクロが問題視され、会社側は、その否定に必死であった。ちなみに、ファストリテイリングの2022年3月現在の「生産パートナー工場リスト」によれば453工場のうち約半分の239工場が中国にあり、ベトナムが58、その次がバングラデシュの30、続いて日本22、カンボジア、インドネシア、ポルトガルと続く(間接取引、直接取引を含む)。「主要素材工場リスト」(91工場)には中国50、ベトナム10、インドネシア8、日本6、・・・バングラデシュ3と続く。
ファストリテイリングホームページ、参照。
https://www.fastretailing.com/jp/sustainability/labor/list.htm

 それでは、ZALA、GAP、H&Mなどの大手アパレルの場合はどうなんだろうか。わたしも、自分や家族の衣類のタグを見るようになった。自分の下着などは、ほとんど生活クラブ生協から購入しているつもりだが、かつて購入した衣類では、もちろん日本製が多いのだが、ほかでは、メイド・イン・中国が多く、ベトナム、韓国なども見受けられた。

 映画を見始めたとき、これは日本の『女工哀史』か、紡績工場や製糸工場の「女工」ではないかの感想を持った。組合結成の話になると、いまの日本の働く人たちの非正規の割合、その待遇の低さ、正社員、正職員であっても、その労働組合の加入率は、私たちが働いていた頃には想像もつかないくらい、極端に低くなってしまった現実がある。
 働き方改革? 多様な働き方? 選択肢が広がった? 一億総活躍? 高度プロフェッショナル制度? 同一労働同一賃金? コトバだけは踊るが、その実態は、働く者が一番よく知っているはずではないか。
 それなのに、日本では、労働組合は働く者から遠ざかり、働く者の労働組合離れが主流になってしまった。そして、組合の必要性を身をもって体験した人たちにより、各業界でユニオンなどが結成されることが多くなり、活動を続けている。

 近くの工業団地のアマゾンや食品会社のシャトルバスから降りて来る働き終えた人たちが、黙々と駅へと急ぐのを目にすることがある。外国の人も多い。三交代制とも聞く人たちの労働環境を思わずにはいられない。「メイド・イン・バングラデシュ」が外国の話には思えないでいる。

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2022年5月12日 (木)

”短歌ブーム”がやってくる?短歌は商売になるのか

 けさ、遅い朝食のかたわら、テレビのチャンネルをまわしていると、なんと、短歌が話題になっている。「『サラダ記念日』以来の短歌ブームが必ずやってくる」と断言するのは『短歌研究』の編集長だった。「スッキリ」のようなワイド番組に短歌雑誌の編集長が登場するのも珍しい。

 岡本真帆(32)という人の歌集『水上バス浅草行き』(ナナクロ社 2022年3月)が、歌集ではめったになく、8000部も売れていて、書店でのサイン会や大手書店の短歌コーナーが紹介されていた。

・ほんとうにあたしでいいの?ずぼらだし、傘もこんなにたくさんあるし

 という一首が紹介されていたが、「におわせ満載の、あるある短歌」で、正直、あまり好きにはなれない。ジェンダーの視点から見ると、眉をひそめそうな一首である。当然、俵万智も登場し、なぜ短歌がブームになったのかを聞かれて、SNSの影響が大きいという。やや不正確だが、短い言葉での表現の過程で、心も豊かになるといった趣旨のことを述べていた。歌集を読まずに申し訳ないが、岡本短歌も俵万智のかろやかさの流れをくむものであって、わかりやすいのは確かなようだ。

 歌壇には、もう一つの短歌ブームがあるようで、表現上では、口語で平明だが、一首として、私などには「意味不明」な短歌がもてはやされている。

 ところで、番組には、木下龍也という人の、注文に応じて短歌一首を1万1000円で売っている?様子も放映されていた。この歌人については、新聞等でも紹介されていた。依頼者の、いまの自分の状況や気持ちを短歌にしてほしいというオファーに応える短歌を作り、依頼者を励ましている現実があるという。なかには、その一首を「お守り」のようにしているという依頼者も登場している。

 要するに、お題に添って短歌を詠み、それを仕事にもしているのだが、現代の短歌のありようとして、「題詠」というのに、私は、いささか違和感を持っている。短歌の学習過程やゲームとしての題詠はあるのかもしれないが、本当の短歌の姿なのだろうか。というのも、戦時下において、著名歌人の多くが、「戦果」に応じて短歌を詠み、戦意高揚に貢献したという歴史、現代にあっても、天皇の決めた「御題」に従って、天皇に詠進するという「歌会始」の存在が、私には暗い影を落としているからである。

 短歌は、他人に注文するものではなく、多くの短歌との出会いの中から、自分の座右の一首を見つけるのを楽しみ、自らも詠んで、革まる気持ちを確かめるものではないかと。

 木下さんには数十件のオファーがあると言い、岡本さんのツイッターには「お仕事の連絡は・・・」などとあった。

庭の半分ほどを占めてしまう一本のヤマボウシ。どんな鳥なのだろう、この茂みの中でしきりに鳴いているようだった。

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2022年5月 3日 (火)

<国策メディア>を見究めるには―『国策紙芝居ー地域への視点・植民地の経験』を読んで

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下段は裏表紙

 最近、神奈川大学の非文字資料研究センターからブックレット『国策紙芝居―地域への視点・植民地の経験』(大串潤児編 神奈川大学評論ブックレットシリーズ41、御茶の水書房 2022年3月)をお送りいただいた。数年前に、神奈川大学での「国策紙芝居」の研究会に参加し、その後のシンポジウムには参加はできなかったが、非文字資料研究センター編著の『国策紙芝居からみる日本の戦争』(勉成出版 2018年2月)をいただき、当ブログにも何回か紹介しているので、ご覧いただければ幸いである。今回の、上記『国策紙芝居―地域への視点・植民地の経験』は、ブックレットながら、地域や植民地の現場を訪ね、資料を発掘し、戦時下の体験者の証言も収め、大変興味深く、充実した内容に思えた。

「国策紙芝居」というのがあった~見渡せば「国策メディア」ばかり・・・にならないために(2013年12月6日)
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2013/12/post-1e1c.html

『国策紙芝居からみる日本の戦争』のページを繰って(1)(2)(2018年3月28日)
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2018/03/post-16d3.html

http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2018/03/post-1aed.html

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 私の紙芝居体験は、敗戦直後の街頭紙芝居であった。もう記憶もあいまいになっているのだが、銭湯の横の路地に、毎日自転車でやって来るおじさんは、太鼓をたたいて、辺りの子どもたちに知らせてまわる。空き地で遊んでいた子も、家から出てくる子も駆けつけて、いつも10人以上は集まっていたように思う。たしか10円で紙芝居の台の下の箱のイモ飴を割りばしのような棒に絡めて売ってから、紙芝居が始まるのだった。冒険もの、母もの、時代ものが定番ではなかったか、みな続きものだから、毎回通う羽目になる。おじさんのセリフと演技、太鼓に、思わず息をのみ、また涙することもあった。当時は、小遣いなどはもちろん持たせてもらわないから、私は、その都度、店に立つ、父や兄から5円?10円硬貨?をもらって駆け付けたように思う。たしかにアメを買わない子も一緒だったから、おじさんも黙認?していたようだった。

 上記の書によれば、この時代の街頭紙芝居は、第二次の戦後復興期の紙芝居ブームのさなかだったらしい。そして、第一次のブームというのが、一九三五年前後から始まる、戦意高揚、戦争協力を主旨とする「国策紙芝居」の時代だった。「国策紙芝居」は対極として、便乗絶叫型と家族愛型があり、前者の典型として近藤日出造の「敵だ!倒すぞ米英を」(大政翼賛会宣伝部 1942年12月)であり、後者の典型が国分一太郎脚本の「チョコレートと兵隊」(日本教育画劇 1941年7月)であったという(13頁)。近藤も新聞紙上の漫画で、国分も作文教育で、戦後に目覚ましい活躍をしていた人物として、私も記憶している。 
 本書は、サブタイトルにもあるように、国内では、北海道札幌市京極町、水上町、須坂市、但馬市出石町、豊岡市、亀岡市、大津市、福岡県朝倉市などでの現地調査により、資料館や収集家を訪ね、紙芝居の発掘や体験者からの聞き取りを行い、台湾での調査も実施した成果、韓国の研究者とも連携して、植民地での紙芝居研究が収められている。

 私は、かつて「台湾萬葉集」や「日本占領下の台湾における天皇制とメデイア」についての論稿を執筆したことがあるが、「紙芝居」まで、その視野になかったので、多くを教えられた次第である。

 いまの日本では、多くは、幼稚園、保育園などで、紙芝居を演じられることが多い。大人たちは、紙芝居ならぬテレビやスマホをはじめ、インターネットを筆頭にさまざまなメデイアを通じて、大量の情報を得る便利さの中で暮らしている。しかし、その反面、情報操作も多様化、国際化が進行し、知らない間に、操作された、限られた情報を与えられ続けている状況にあるともいえる。ふたたび「国策メディア」に組み込まれないように、「不断の努力」が必要だと思い知らされるのだった。

20225
憲法記念日に開いた垣根のテッセン、レッドロビンの茂みの中で

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