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2022年5月12日 (木)

”短歌ブーム”がやってくる?短歌は商売になるのか

 けさ、遅い朝食のかたわら、テレビのチャンネルをまわしていると、なんと、短歌が話題になっている。「『サラダ記念日』以来の短歌ブームが必ずやってくる」と断言するのは『短歌研究』の編集長だった。「スッキリ」のようなワイド番組に短歌雑誌の編集長が登場するのも珍しい。

 岡本真帆(32)という人の歌集『水上バス浅草行き』(ナナクロ社 2022年3月)が、歌集ではめったになく、8000部も売れていて、書店でのサイン会や大手書店の短歌コーナーが紹介されていた。

・ほんとうにあたしでいいの?ずぼらだし、傘もこんなにたくさんあるし

 という一首が紹介されていたが、「におわせ満載の、あるある短歌」で、正直、あまり好きにはなれない。ジェンダーの視点から見ると、眉をひそめそうな一首である。当然、俵万智も登場し、なぜ短歌がブームになったのかを聞かれて、SNSの影響が大きいという。やや不正確だが、短い言葉での表現の過程で、心も豊かになるといった趣旨のことを述べていた。歌集を読まずに申し訳ないが、岡本短歌も俵万智のかろやかさの流れをくむものであって、わかりやすいのは確かなようだ。

 歌壇には、もう一つの短歌ブームがあるようで、表現上では、口語で平明だが、一首として、私などには「意味不明」な短歌がもてはやされている。

 ところで、番組には、木下龍也という人の、注文に応じて短歌一首を1万1000円で売っている?様子も放映されていた。この歌人については、新聞等でも紹介されていた。依頼者の、いまの自分の状況や気持ちを短歌にしてほしいというオファーに応える短歌を作り、依頼者を励ましている現実があるという。なかには、その一首を「お守り」のようにしているという依頼者も登場している。

 要するに、お題に添って短歌を詠み、それを仕事にもしているのだが、現代の短歌のありようとして、「題詠」というのに、私は、いささか違和感を持っている。短歌の学習過程やゲームとしての題詠はあるのかもしれないが、本当の短歌の姿なのだろうか。というのも、戦時下において、著名歌人の多くが、「戦果」に応じて短歌を詠み、戦意高揚に貢献したという歴史、現代にあっても、天皇の決めた「御題」に従って、天皇に詠進するという「歌会始」の存在が、私には暗い影を落としているからである。

 短歌は、他人に注文するものではなく、多くの短歌との出会いの中から、自分の座右の一首を見つけるのを楽しみ、自らも詠んで、革まる気持ちを確かめるものではないかと。

 木下さんには数十件のオファーがあると言い、岡本さんのツイッターには「お仕事の連絡は・・・」などとあった。

庭の半分ほどを占めてしまう一本のヤマボウシ。どんな鳥なのだろう、この茂みの中でしきりに鳴いているようだった。

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