怒りの年末、次からつぎへと(2)国民に執拗に迫るマイナカード
マイナンバーカードについては当ブログでも何度も書いてきた。政府がこれほどまでに執拗に、マイナンバーカードで迫ってくるのはなぜなのか。“丁寧に”説明すればするほど、政府への不信は募るばかりである。
10月13日、河野太郎デジタル大臣が、健康保険証を2024年秋に廃止し、マイナンバーカードへ一体化した形に切り替えると表明したのを受けて、NHKは直ちに、その日の夜のニュースでつぎのように報道している。登場した、関係閣僚や官房長官の発言は、日頃の言動から直ちに信じられない思いで見ていた。
「政府 再来年秋 健康保険証を廃止 マイナカード一体化発表」(2022年10月13日 18時56分)
岸田総理大臣は13日、河野デジタル大臣や加藤厚生労働大臣、寺田総務大臣と、マイナンバーカードについて協議しました。
この人、コロナワクチン担当時は、「来週にもお示しします」を連発、デジタル化すればすべてが解決するような発言を覚えてますよ。
河野デジタル大臣が記者会見を開き「デジタル社会を新しく作っていくための、マイナンバーカードはいわばパスポートのような役割を果たすことになる」と述べ、2024年の秋に現在使われている健康保険証を廃止し、マイナンバーカードへ一体化した形に切り替えると発表しました。
松野官房長官「よりよい医療 受けてもらうこと 可能に」
この人、記者会見では、めったに顔をあげず、ひたすら朗読が続く。メディアは、記者との質疑を決して伝えないのはどうしたわけか。
松野官房長官は、午後の記者会見で「マイナンバーカード1枚で医療機関を受診してもらうことで、健康・医療に関する多くのデータに基づいた、よりよい医療を受けてもらうことが可能となる。こうしたことから、マイナンバーカードと健康保険証の一体化を進めるため、再来年秋に保険証の廃止を目指すことにした」と述べました。
加藤厚生労働相「理解得られるよう丁寧に取り組んでいく」
この人、安倍政権時代の厚労大臣のとき、「働き方改革法案」の基礎データのデタラメを追及されていましたね。
加藤厚生労働大臣は、記者会見で「システム改修などの対応に必要な予算は経済対策に盛り込んでいく。岸田総理大臣からは国民や医療関係者から理解が得られるよう丁寧に取り組んでいく必要があると指示があった。医療関係者や関係省庁などと連携して取り組みを進めていきたい」と述べました。
寺田総務相「保険証と一体化 格段に普及が進む」
寺田総務大臣は、記者団に対し「日本は国民皆保険制度であり、保険証と一体化するということは、ほぼすべての国民にマイナンバーカードが行き渡るということで、格段に普及が進む。ただ、生まれてすぐの0歳児にどうやってカードを取得してもらうかや認知症の方への対応など、いろいろクリアすべき点がある。(中略)マイナンバーカードは非常に安全なものだ。ナンバーが仮に他人に知られたとしても個人情報が流出することは一切ない。」と述べました。
さらに新聞各社は、つぎのような社説を掲載している。その主張は、見出しを見ても分かるように、毎日・朝日・東京の三紙と日経・読売ときれいに分かれた。
毎日「マイナ保険証に一本化 国民不在の強引な普及策」【10月14日】
朝日「マイナ保険証 あまりに拙速、乱暴だ 」【10月15日】
東京「マイナ保険証 強引な義務化許されぬ」【10月15日】
日経「もっと使えるマイナンバーカードに」【10月15日】
読売「マイナ保険証 丁寧な説明で普及を図りたい」【10月20日】
三紙は、政府の強引な手法に疑問を呈してはいるものの、結論的には、「利用者の理解と納得があっての話である」(朝日)、「導入を急がず、制度への不信感と誠実に向き合うことが先決」(東京)、「国民に対し丁寧に説明し、理解を得る手続きを怠ってはならない」(毎日)と、要するに「丁寧な説明」と「国民の理解」を求めるにとどまり、マイナンバー制度そのものには、決して切り込まない。それはそうでしょう、マイナポイントの全面広告をあれだけ掲載しているのだから。NHKは、各党の反応、専門家・街の声・現場の声を取材するものの、メインのニュース番組では、中立・公正どころか、編集次第、「残る課題」「動向を注視」の指摘で終わる<政府広報>となるのが現状なのだ。
【こちらで詳しく】健康保険証がなくなる… “マイナ保険証”導入の現場では
その後、従来から指摘されてきたさまざまな問題点や新しいトラブルが浮上してきた。私のような一般市民の素朴な疑問が投書欄に見かけない日がないくらい寄せられている。
情報管理への不安
一つは、マイナンバー制度そのもの、情報一元管理への不安である。政府は、カード自体に情報が蓄積されているわけではない上に、暗証番号が必要だし、情報は国や自治体が分散管理しているから、芋づる式に情報い洩れが生じない、としている。すでに社会保障・税番号として機能しているわけだが、自治体の事務上の作業は、2021年度の個人情報保護委員会の報告によると、45%以上が外部の業者に委託し、再委託もあることが分かっている。この個人情報の拡散は、さまざまな重大な漏えい―データの誤送付、不正アクセス、職員による違法収集・・・も報告されている(朝日新聞22年10月30日)。さらに、民間での利用拡大の方針をすでに打ち出しているのである。
交付、普及を急ぐ拙速
カードの交付は2016年から始まっているが、2017年3月には8.4%であって、20年9月から21年12月にわたって、カード申請すれば特定のキャッシュレス決済に限って2万円に5000円のポイントが付くというキャンペーンを実施した。第2弾として、22年1~12月までは、公金受取口座に紐づけなど含め、2万円のポイントを付けるというキャンペーンを実施の末、22年11月現在53.9%にたどり着いたようだ。この間のすさまじいほどのネットやテレビでのCM、度重なる新聞の全面広告は記憶に新しい。なぜここまで、政府は躍起になるのか、逆に不信を招いたのではないか。
しかも、このマイナポイント事業には、第1弾に2979億円、第2弾に1兆8134億円を計上していることが、12月1日の参院予算委員会の質疑で判明した。いわゆる宣伝費はここに含まれていたわけである。さらに、カード交付の申請サポートを民間施設に委託拡大、その費用を加えると今年度だけで2兆円を超える。
医療現場の混乱、利用者の不安
2021年11月からマイナ保険証の運用ははじまっているが、2022年11月現在、システム導入の医療機関・薬局は35.7%である。顔認証のカードリーダーの不具合、トラブルが続出して、その原因も未解明なのが現状であり、全国の開業医約11万人が加盟する全国保険医団体連合会の調査によれば、保険証廃止に反対が65%、システムを導入しない・できないと回答した1279件の内、その理由のトップはセキュリティ対策の不安で、多額の費用の発生、オンライン請求をしていないが続く。スタッフが少ない・いない、高齢で数年後に閉院予定などという切実な理由も挙げられている。詳しくは以下の記事をご覧ください。
『全国保険医新聞』2917号(2022年12月15日)、調査は10月14日から11月20日、回答数は8707件(医科診療所5186、歯科診療所2668、病院449、無回答ほか)
マイナンバーカードやマイナ保険証について、国民の受け止めについてのある調査によれば、「健康保険証の廃止」について、全体では概ね、約25%が肯定的、約45%が否定的、約30%が「わからない・どちらともいえない」であった。以下のようにまとめている。
「現段階では反対の割合が高いと言えよう。ここでも、マイナンバーカードの取得有無によって、考えが異なる。既にマイナンバーカードを取得している層は、約30%が肯定的、約40%が否定的となるが、マイナンバーカードを取得するつもりがない層は、約7%が肯定的、約67%が否定的と、強い抵抗感が窺える」。(SMPOインスティチュート・プラスhttps://www.sompo-ri.co.jp/2022/11/15/6126/)
かつて、私は、自治体に、マイナンバーの付与を拒否する要望書を出したことがあるが、自治体判断のマターではないとの回答を得ている。残念ながら、番号は付与されている。そもそも、マイナンバーカードの交付は法律上任意のはず、強制、義務化されるいわれはない。利用者としての私は、マイナ保険証を登録しない最大の理由は、やはり、セキュリティへの不安である。現に、カードを持つことの必要性もメリットも感じない。身分証明は、保険証やパスポートで用が足りるし、薬情報はくすり手帳で用が足りている。公金の入金口座は登録している。現在、保険証の確認は月一であるが、マイナ保険証は毎回提示しなければならない。乳幼児や未成年のカードの交付、カードの保管、利用のこと、紛失や災害時、停電のことなど想定するとリスクは際限がない。
私は、マイナンバーカードの交付も申請しないし、当然、マイナ保険証の登録も出来ない、しないことになる。
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