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2022年12月23日 (金)

櫻本富雄著、二冊のミステリーが刊行されました。

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左:幻冬舎 2022年6月15日刊。右:鳥影社 2022年12月18日刊。                                                                                                                                          

 大先輩の知人、櫻本富雄さんが、今年6月、12月に小説二冊を立て続けに出版されました。櫻本さんとは、2006年、著書『歌と戦争―みんなが軍歌をうたっていた』の書評を「図書新聞」に執筆したご縁で、以後、多くを教示いただくことになったのです。著書は、ご覧の通りで、戦時下の、文化人、文学者の戦争責任、戦後責任を資料にもとづいて詳細に検証し、その責任を問うものがほとんどです。自身が軍国少年であったことを起点としながら、戦後は精力的に戦時下の出版物―図書や雑誌、パンフレットや紙芝居などの収集をしています。その数10万点にも及んだそうですが、それらを駆使して著書の中でも、『空白と責任』(未来社1988)『文化人たちの大東亜戦争』(青木書店 1993)『日本文学報国会』青木書店1995)『本が弾丸だったころ』(青木書店 1996)などは、戦時下の文学や評論を対象とする研究者や関心を寄せる人たちには避けては通れない文献です。

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 その櫻本さんは、もともと詩人で、小説も何篇か書かれているのですが、新刊の二冊は、数年前、蔵書の全てを処分した後に書かれています。構想はかなり前からできていたそうです。ミステリーですので、あらすじは書けませんが、二冊の舞台は、アジア・太平洋戦争末期の日本の占領地、国内の各地に展開します。事件を追う捜査関係者は別として、読み終わってみれば主な登場人物すべてが非業の死を遂げていたことが分かってきます。読むにあたっては、あたらしい地図帳がそばにあった方がいいかもしれません。

 興味を持たれた方は、近くの図書館にぜひリクエストしてみては。

 なお、櫻本さんが出演した下記の番組がユーチューブでご覧になれます。櫻本さんが資料を携え、横山隆一、山本和夫、丸木俊、住井すゑさんたちにインタビューをし、戦時下の言動を質そうとしますが、誰もが反省や後悔の弁どころか自らを正当化する様子が記録されているドキュメンタリーです。次作も執筆中とのことです。1933年生まれの櫻本さんのエネルギとゆるぎない信念に脱帽です。

・「ある少国民の告発~文化人と戦争」(毎日放送製作 1994年8月14日放映)
 https://www.youtube.com/watch?v=8-dC55hmhbc

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上記、映像から。上:戦時下の雑誌の数々。下:住井すゑにインタビュー。

 なお、当ブログの関係記事は以下の通りです。

・書評『歌と戦争―みんなが軍歌をうたっていた』― 歌と権力との親密な関係―容認してしまう人々への警鐘(『図書新聞』2005年6月11日)http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2006/02/post_d772.html(2006年2月17日)

 ・「ある少国民の告発~文化人と戦争」(1994年放送)を見て
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2017/09/1994-2d3e.html(2017年9月23日)


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