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2023年2月27日 (月)

マイナンバーカード申請に並ぶ人たち

 先週の金曜日2月24日、駅に近いビルの一画にある佐倉市出張所の前を通りかかると、いつになく人が立て込んでいる。入口の外に長机を置いて、マイナカード申請専用の受付を行っていたのである。出張所の外かべにそって、椅子も並べられていて、多くの高齢者が、ひとりで、あるいは夫婦で、順番を待っているようだった。受付には二人いて、20000円の文字が大きいのぼりが見えた。

 のべつまくなく流されるテレビや新聞のコマーシャルで、あるいは周辺からの口づてで、せかされてやって来た人たちだろう。さまざまな情報が盗み取られるリスク、持ち歩くことのリスクを覚悟しているのかしら。マイナ保険証とても、あちこちからのシステムの不具合、現場の混乱が報道されているではないか。

 2月22日は、東京保険医協会の医師ら計274人が、健康保険証の代わりにマイナンバーカードで保険資格を確認できるオンラインシステムの導入を国が医療機関に義務付けたことは憲法違反だとして、国を相手取り、義務化に従う必要がないことの確認などを求める訴訟を東京地裁に起こしている。当然の訴えである。

 総務省の発表によれば、2月19日現在、全人口の69.8%がカードを取得したという。資格証明だとか、更新はどうするなど・・・、中途半端なことばかり。マイナカードを健康保険証代わりにして、マイナカード取得を義務化しようとする先に、何をしようとするのか。銀行口座の紐づけ、運転免許証代わり、民間での利活用促進・・・などとなったら、リスクは果てしもない。「持ち歩けば便利」の先にあるものは。

  以下の当ブログ記事も併せてご覧下さい。

「マイナンバー制度」は、日本だけ!? 先進国の失敗からなぜ学ばないのか
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2015/11/post-afb2.html

  ちなみに、1月末日現在ながら、交付率は、全国で60.1%、千葉県59.9%、千葉市64.7%、佐倉市は57.4%であった。そんな中、千葉市の交付率が、2月21日現在、66.9%となり、政令指定都市20の内の中で1位だそうで、松本総務相が2月23日視察に現れている。

 なぜそれほど必死なのか。佐倉市は、2月末日まで、何パーセントまで伸びる?

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2023年2月25日 (土)

『図書新聞』の時評で『<パンデミック>とフェミニズム』が紹介されたのだが

 新・フェミニズム批評の会の事務局から、下記の時評で、『<パンデミック>とフェミニズム』が取り上げられているとのことで、『図書新聞』の画像(一部)が添付されてきた。書評が少ない中で、紹介されたことはありがたいことであった。

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  『図書新聞』では、岡和田晃「《世界内戦》下の文芸時評」が連載中で、2月25日号には「アイデンティティをめぐる抹消させない<女たちの壁>」と題して展開されている。そこで拙稿「貞明皇后の短歌が担った国家的役割―ハンセン病者への<御歌碑>を手がかりに」に言及された部分を引用させていただく。 

明治天皇の歌が翼賛体制を正当化するのに使われた半面、厭戦的な内容を含む貞明皇后の歌はその陰に隠されてきた点や、皇后が「良妻賢母」的なロールモデルを担いつつ、父権的温情主義(バターナリズム)に加担したという二重性を指摘している。

  前半は、その通りなのだが、後半における「ロールモデル」と「父権的温情主義」の「二重性」を指摘しているという件には、驚いた。というのも、突如、現れた「ロールモデル」、「父権的温情主義」、「二重性」という言葉を、私は一切使用していなかったからである。さらに良妻賢母の「典型的なモデル」を“担わされた”ことと貞明皇后のハンセン病者への歌と下賜金に象徴される差別助長策を“担わされた”ことは、「二重性」というよりは、日本の近現代における天皇・皇室が時の権力に利用される存在であるという根幹でつながっていることを、実例で示したかったのである。

 なお、拙稿については、昨秋の当ブログでも記事(2022年10月31日)でも、ダウンロード先を示したが、再掲したので、ご一読いただければ幸いである。

ダウンロード - e8b29ee6988ee79a87e5908ee381aee79fade6ad8c.pdf

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2023年2月19日 (日)

もう、いい加減にして!「国民皆マイナ」?

2023172023年2月19日

 またも、今日2月19日の新聞一斉の一頁広告である。2月4日にも同じことが起こった。起用されているタレントのポーズが違っている。テレビのコマーシャルもバージョンを替えた。ポイントが付くマイナンバーカード申請が2月末日に迫ってのことである。もういい加減にしてほしい、湯水のごとく税金を使うのは。

2023172023年2月4日

 そして、何が何でも、国民すべてに、カードを持たせようという発想は、任意が前提の「マイナンバー制度」とはなじまないはずである。義務化するというならば、それに伴うリスクの責任は、政府が負う?「国民皆兵」ならぬ「国民皆マイナ」ではないか。1873年「徴兵令」に対して、生血を取られてはたまらないとの誤解もあって「血税一揆」が各地で起こったという。現代人は、5千円、2万円のポイントにつられて、やすやすとマイナンバーカードを作ってしまう。個人情報満載のカードは、わずかなポイントをぶら下げられて、身ぐるみ売り渡すにも近い。

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 東京新聞、2023年2月19日

 今日の一斉広告の二日前、2月17日の東京新聞「こちら特報部」の見開きの記事では「マイナカード<任意>はどこへ」「<不利益>作りなし崩し」の見出しが大きい。本来「任意」のはずのマイナンバーカードが、未取得への公務員への圧力が半端ではないこと、政府が、昨年、健康保険証を原則廃止してマイナンバーカードと一体化し、地方交付税の算定にカードの普及率を反映させるとの表明後、自治体の普及合戦を煽っていることを報じていた。カード取得を条件に「給食費」を無償にするという備前市の例も挙げていた。メディアも、一斉広告の日とはずらしての特集だったのだろう。
 政府のえげつないやり方、悪乗りする自治体には、身を挺して抵抗するつもりである。

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  この記事をアップして数時間後、つぎのようなニュースが入ってきた!

 予想はしていたものの、やっぱりの思いが強い。マイナンバーカードを強制して、誰が得をするのか、申請する人はよく考えて欲しい。

マイナ事業、84%無競争 カード発行法人の発注
KYODO 2/19(日) 21:00配信

 マイナンバーカード発行業務などを担う「地方公共団体情報システム機構(J―LIS)」が発注したマイナンバー関連事業のうち、競争入札を実施せず任意の業者を選ぶ随意契約か、1事業者しか入札に参加しない一者応札の割合が84%に上ることが19日分かった。予定価格に対する契約額の割合が高水準の事業が多数あり、一部の国内大手企業に契約相手が偏っていることも判明した。(後略)

 さらに、『東京新聞』は、本記事に紹介した「こちら特報部」の特集に続いて、2月20日の「社説」で「マイナカード 政府の強引さ目に余る」の見出しで「そもそもカード取得は任意であり、強引な普及策は逆効果だ」と述べていた。

 さらに、2月23日の朝刊は、一斉に、2月22日、東京保険医協会の医師ら計274人が、健康保険証の代わりにマイナンバーカードで保険資格を確認できるオンラインシステムの導入を国が医療機関に義務付けたことは憲法違反だとして、国を相手取り、義務化に従う必要がないことの確認などを求める訴訟を東京地裁に起こした、との報道がなされた。Img585毎日新聞2月23日

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2023年2月18日 (土)

どうする高齢者!どうすればいいのか(2)ルーブルや大英博物館職員がストできるのは

 どうする家康、どころではない。
 前の記事で述べたように、年金支給開始を段階的に62年から64年にしようとするフランスのマクロン政権は、大規模な反対運動に立ち往生している。反対運動を続ける市民たちに、私は少なからず心動かされている。そして、ストを実行し、デモに参加する多くの公務員がいることにも衝撃を受けている。さらに、ともに参加し、見守る市民がいることにも。

 そういえば、数年前に、パリの国立ルーヴル美術館の職員たちが突如、ストライキに入り、美術館が閉館となったニュースにも驚かされたことを思い出す。当時、組合側は、「2018年には1000万人以上がルーヴル美術館を訪れている。来場者数は2009年から2割以上増えたが、一方で職員数は減少している」と指摘、人手不足がストの理由だったのである(「ハフポスト日本版」2019年05月28日)。

  そして、この2月1日、 記録的な物価高が続くイギリスで、省庁の職員や教師などを含む50万人が賃上げを求めてストライキを実施したというニュースにも接した。大英博物館も臨時休館となり、観光客は戸惑っているが、職員は、ギリギリの生活の中での最後の手段としてのストだと語っている(TBSテレビ 2023年2月2日)。スナク政権の支持率は12%と低迷。不支持は70%にもなっているという。

 この大規模なストに先立ち、昨年の12月下旬には、救急隊員と電話の応答業務の人たちが、昇給を求めるストライキを実施したニュースも記憶に新しい。さらに、昨夏には、鉄道労働者による、30年ぶりとも言われる大規模な、断続的なストライキが続いた(さかいともみ「いつまで続く?英国「30年ぶり」の大規模鉄道スト激しい物価上昇で全国鉄道労働者が賃上げ要求」『東洋経済(オンライン)』2022年8月11日)

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202212月21日、クリスマスを前に、英イングランドとウェールズの大半の地域で、救急隊員や緊急電話の応答係などが昇給を求めるストライキを行った。BBC news Japan(2022年12月23日)より

 

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看護師のストライキ、2022年6月 BBC news Japan(2022年12月2日)より

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地下鉄の24時間ストライキ 2022年6月21日、さかいともみ撮影、東洋経済オンライン(2022年8月11日)より

 ところで、フランスやイギリスの公務員たちは、なぜこれほどストライキを続けることができるのかといえば、下記の表を見てみると、一目瞭然である。要するに、国家公務員の労働基本権のうち団結権は、表中の各国に認められ、協約締結権については英仏で分かれるが、争議権については、英仏ともに認められており、日本では争議行為は禁止されている。 Photo_20230218174801
諸外国の国家公務員制度の概要(2022年4月2日更新)
https://www.jinji.go.jp/kokusai/syogaikoku202202.pdf

  そして、日本の国家公務員は、下記の表をみると、「労働組合」とは名付けられず「職員団体」としての位置づけであって、その加入率が省庁別に記されている。復興庁、外務省と文部科学省には、そもそも職員団体=労働組合自体が存在していないことも驚きであるが、組合加入者数の加入しうる在職者総数に対するの割合、加入率は、2021年(平成3年度)で37.0%、2020年の38.3%から下がり、組合数自体も減少していることがわかる。なお、ILOは、日本政府に対して、公務員全般に団結権や争議権に制約があることを問題視し、特に消防職員と刑務所職員には直ちに団結権を付与するよう求め続けてきたが、いまだ、実現されることがない。

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  「第6章「職員団体」『令和3年度人事院年次報告書』より
https://www.jinji.go.jp/hakusho/pdf/1-3-6.pdf

  また、下記の表の全国の労働組合数、組合員数、推定組織率をみると、組織率は、近年17%前後を推移している。一方、2022年6月30日現在、雇用者数は微増しているが労働組合数は確実に減少を続けているし、直近の組織率も下がり、16.5%となっている。国家公務員の組織率も2022年3月31日現在37.0%で、前年の38.3%から下がっていることがわかる。

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令和4年労働組合基礎調査の概況(厚生労働省 2022年12月16日https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/roushi/kiso/22/dl/gaikyou.pdf

    諸外国の労働組合組織率について、同じ年のデータというのが見当たらなかったが、以下のような資料が出てきた。2019年現在で揃った数字はつぎの通りであった。
 アメリカ:10.3%、ドイツ:16.3%、イギリス:23.5%、韓国:12.5%
(「諸外国の労働組合組織率の動向」(2023年1月11日更新)『主要労働統計』独立行政法人労働政策研究・研修機構https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/shuyo/0701.html

 日本は2019年では16.7%、フランスは別のデータで10.3%ということがわかった。
(「フランスの労働組合加入率、2019年に10.3%まで低下」『日刊メディアダイジェスト』2023年2月3日)

 こうしてみると、ノルウェーなど北欧諸国の組織率は60~70%なのだが、英仏と比べては、日本の組織率は決して低くはないけれど、着実に成果を上げている英仏の労使交渉、労働運動の高まりの違いはどこから来るのだろうか。
 前述のように、一番の理由は「産業別」組合でなく、「企業別」組合であることだろうか。日本も戦前は職業組合的な争議も見られたが、1900年治安警察法、1925年治安維持法などにより弾圧され、敗戦直後は、産業別労働組合が結成され、40~50%台の組織率だったが、GHQによるに二・一ゼネスト中止指令などを経て、企業別組合が定着してしまうのである。日本企業の終身雇用、年功序列は、いま崩れつつあるが、企業別組合からの脱却が、当面の課題となった。企業別組合とて正社員、大手企業が中心である。大手企業の春闘の妥結額が報じられはするものの、非正規やパート従業員は、蚊帳の外である。連合の会長が自民党の党大会に出席するとか、しないとか、いや招待されているとかいないとか、なんと情けない姿であろう。その一方、非正規やパート従業員の一部は、必要に迫られて、横断的なユニオンなどが結成され、部分的ながら成果を上げつつあるのではないか。 

 私たち高齢者は、どうすればいいのだろう。途方に暮れるのだが、企業別組合から産業別へのみちのりは遠いかもしれないが、少なくとも連合体の組織がもう少し強くなって欲しいし、未組織の人たちの応援をし、できれば一緒に活動したいのだが・・・。かつての職場の組合の「国会職連」「私教連」はどうなっているのだろう。前者では、組合に入って当たり前、7~8割の職員たちが加入していた感覚だった。私立短大では、教員を含めて7割くらいは入っていたと思う。たしかに事務局の職員は組合員ではなかったし、職員では図書館職員だけが入っていたことなどを思い出す。最後の職場の新設大学は、一族経営の感が強く、組合はなく、私が退職した後に組合結成の動きがあり、犠牲者が出たとも聞く。30年近くも前の話だが・・・。

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ことしは、ハトも時々迷い込んでくる。1月5日

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広いエサ台に頑張るヒヨドリ。2月18日

 

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2023年2月13日 (月)

どうする高齢者!立ち上がるのはだれか(1)

 「どうする家康」 どころではない。
   高齢者には、ガラガラと坂を転げ落ちるように生きづらい社会になってゆく。内閣支持率下落のさなか、「閣議決定」で、何もかも決まっていってしまう現実を目の当たりにし、国会は形骸化するばかりである。

 2月10日の閣議で、75歳以上の健康保険料引き上げのための健康保険法改正が国会に提出される。昨年10月には、医療費が倍額になった。週一の通院、二カ月、三カ月ごとの定期診療に通わなければならない身には、大打撃である。今回の保険料値上げの対象は、後期高齢者の四割あたるという。コツコツと働いてきて、年金生活者になってからは、医療や介護への不安が募るばかりで、老後を楽しむどころではない。コロナ対策にしても、死者のほとんどが高齢者で、増加のさなかに、対策を緩和したり、感染者の受け皿の医療体制が整わないまま、5月には5類にしたりするというのだから、いわば、高齢者を置き去りするに等しいのではないか。

 こんな仕打ちをされている高齢者を横目で見て、国会では、与党はもちろん、野党もまったくと言っていいほどアテにならない。政権の敵失ばかりを責め立てるばかりで、自らの政党の選挙対策に余念がなく、連携だの共闘などと騒がしく、党内外の批判にさらされ、慌てふためいて反撃している党もある。

 どうすればいいのか。本来ならば、自ら立ち上がらねばならないはずの高齢者だが、その核になる組織がない、リーダーがいないと、あきらめてしまいそうになる。いや、リーダーや組織が華々しい運動は、大方は、しぼんで、挫折してしまうのが、通例ではなかったか。だったら、ひとりでも、片隅からでも叫びたい。その声が重なり合うときが来る日まで、とも思う。

   2018年11月から数カ月にわたって展開されたフランスの「黄色いベスト」運動を想起する。当初、私は、ガソリン税値上げ反対の、トラックの運転手たちによる抗議行動と思っていた。一部暴徒化する様子も報道されていた。ところが、どうだろう、毎週土曜日の抗議デモは、地方から都市へ、サラリーマンや自営業者、高齢者や女性へと多くの市民による運動となった。その結果、マクロン政権は、ガソリン税値上げの完全撤回、富裕税課税の不動産限定を中止、購買力向上ための減税、国民との大討論会の約束などをとりつけるに至ったのである。

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『毎日新聞』2018年12月17日、より

フランスでは、いま

 それにつけても、フランスやイギリスの労働者たちの大規模な集会やデモの報道を目にして思うのは、なぜ、日本人はこれほどおとなしいのだろう、従順なのだろうかと。

 フランス政府は、今年の1月10日に、年金の支給開始を62歳から段階的に64歳に引き上げるという改革案を発表した。1月19日には、労働組合が中心となって、改革案に反対する大規模なストや抗議デモが各地で行われ、 内務省は、  112万人が参加したと発表した。一方、主催者側は、ストやデモの参加者は200万人を超え、公共職の参加率が高かったとする。国民教育省によれば、全国で四割の教員が参加小学校の休校が相次ぎ、一斉ストでは、パリの地下鉄などダイヤが大きく乱れた、と報じた。(「フランス、反年金改革デモ112万人 政府に逆風強まる」『日本経済新聞』2023年1月20日、「仏年金デモ100万人超」『東京新聞』2023年1月21日)

 さらに1月31日には、「全国で280万人、パリ50万人。1995年の社会運動より大きい歴史的な動員だ。労組に一般市民が大勢加わり若者も多く、大学や高校での封鎖も始まっている」と報じるメディアもあった(「年金改革反対デモ広がる〜1995年を超える歴史的動員に(飛幡祐規)」『れいばーネット』 2023年2月1日)。「1995年の社会運動」とは調べてみると、やはり年金改革の問題で、公共交通、電気・電気・ガス・学校など大規模なストが約1カ月にも及んだときのことらしい。そして、2月7日にも大規模なストライキが実施され、公共交通機関や学校、製油所などの運営がストップし、国民の反対は根強いと、ロイターは伝える(「仏で3度目の大規模スト、年金改革巡り 交通機関や学校にも影響」 2023年2月8日)。さらに2月11日にも、大規模ストライキを予定しているというが、どうなったことだろう。

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『朝日新聞』2023年1月20日 、より

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年金制度改革案に反対する抗議デモに参加し、警官隊に拘束された男性=パリで2023年1月31日、AP。『毎日新聞』2023年2月1日、より

 こうしたストライキやデモをする人たちの意思とエネルギーは何に由来するのだろうか。今回の大規模な運動は、最大の労働組合「労働総同盟」(CGT)を含め、八労働組合が呼びかけている。と言っても、フランスの労働者の組合組織率は8.8%だというが、団体交渉適用率が98%という高さなのである。組合員でなくとも、団体交渉で得た成果は、非組合員にも適用されている(「日本の労使問題」『東京新聞』(サンデー版大図解シリーズ)2023年2月5日)。そして何より、その組合というのは、業種別、産業別組合なのであって、日本の企業内組合とは性格を異にする。日本の組合の組織率は日本の組合の組織率は、「厚生労働省のまとめによると、2022年6月時点の労働組合員数は999万2000人と前年に比べて0.8%減った。雇用者に占める組合加入者の割合(推定組織率)は16.5%」(「労働組合加入率22年は16.5%で過去最低」『日本経済新聞』2023年1月4日)で、日経のこの記事では、加入率の減ったり理由として、正社員の加入が減ったことと、働き方の多様化、労組への期待低下を上げていた。日本の企業内組合は、いわゆる「御用組合」が多くを占め、本来の組合の役割を果たしていないといってよいだろう。(続く)

 

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2023年2月 5日 (日)

菅沼正子さんの「映画招待席」が再開されました。

「菅沼正子の映画招待席」が再開されました。 女性数人がかかわって発行していた地域誌「すてきなあなたへ」が休刊する2015年まで連載されていました。42回で休止していましたので、「菅沼正子の映画招待席 43」として、再スタートすることになりました。しばらくは、活躍したスターたちの作品や生涯に迫ります。ときには、新作の映画案内もしていただきたいです。今回は、あの「キャンデイス・バーゲン」です。近年の主演作品に「ブッククラブ」がありますが、バイプレイヤーとしても活躍しています。そして以外にも・・・。

「菅沼正子の映画招待席」43
キャンデイス・バーゲン~ニュー・シネマの時代では美しすぎた~

ダウンロード - suganumamasako2043.pdf

 菅沼さんは、私の学時代からの友人です。映画雑誌『スクリーン』編集部勤務後、フリーランスの映画評論家として活躍、著書に『女と男の愛の風景』(マルジュ社)『スター55』(筑波書房)『エンドマークのあ・と・で』(マルジュ社)などがあります。『スター55』と『エンドマークのあ・と・で』は、アマゾンの電子版でも読むことができます。詳しくは、上記本文をご覧ください。

 なお、「すてきなあなたへ」のバックナンバーは、左欄のマイリスト「すてきなあなたへ」でご覧になれます。

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若い女性歌人の「仕事」の困難さと楽しさと

 読売新聞で「女が叫ぶみそひともじ」というシリーズが昨秋から始まっているのをネット上で知りました。「男が叫ぶみそひともじ」というシリーズが成り立つのか、と思うと複雑なものがあります。短歌雑誌でも「仕事の歌」といった<特集>は見かけ、さまざまな職種の人たちの短歌を知ることができて、興味深く読んできました。今回の読売のシリーズは、まず、比較的若い女性歌人を対象に、仕事の歌と仕事にまつわるエッセイを同時に載せているところが特色と言えるかもしれません。10人ほどの記事しか読んでいない段階での執筆でしたが、以下が『ポトナム』2月号の歌壇時評です。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

   昨年一〇月から読売新聞が「女が叫ぶみそひともじ」を連載しているのをネット上で知った。「若手女性歌人三五人が、働くことにまつわる短歌とエッセーをリレー形式で連載します。三一文字に詰めこまれた、さまざまな喜怒哀楽を感じてください。」と銘打って、すでに一〇人を数える。一九八〇~九〇年代生まれが対象だろうか。歌壇では知られているベテラン、結社で、あるいはツイッターなどで活躍している人などさまざまである。一〇人の作品は、私にとっては「今風」であっても共感できる作品が多く、各人のエッセーには、女性の働き方が変わってきたようで、決して変わってはいない労働環境のなかで、働き続ける困難と楽しさが見えてくる。

・風に逆らって面接 わたしがわたしでいるために必要なものはなんだろう
(初谷むい 一九九六年生 事務アルバイト)

働くことをやめていた日々もあった作者は「楽しいことが少しずつ増えて、今になった。働く、とはなんなんだろう、とよく思う。お金がもらえる、だけではたぶん、ないのだろう」の思いに至る。

・事務職をやっていますと言うときの事務は広場のようなあかるさ
(佐伯紺 一九九二年生 人材派遣会社員)

人材派遣会社で働きながら、転職活動中という複雑な環境にいる作者は「会社に仕事をしているとめちゃくちゃたくさん人間がいるなと思うから絶望しないでいられるのかもしれない」と語る。

・上司のLINE無視をする朝 その午後も許可もらったり判子もらったり
(竹中優子 大学職員)

職歴も長い作者は「私はよく働く辛さを短歌にする。いつも他人が羨ましく、自分は損をしている気がする。(中略)こんな私が最後にたどり着く場所はどこだろう。本当はただ単純に、誰かに必要とされたり必要としたりして生きていたい」と究極に分け入る。

・資料室に深くに潜ってゆく午後の非常灯から緑の光
(戸田響子 一九八一年生 事務員『未来』)

作者は働き続ける秘訣のように「働くのがしんどいなぁと思ったら、心が逃げていった方向を注意深く見る。おもちゃの指輪のような他愛ない、でもちょっとステキなものがそこに光っている」と。

・パソコンを抱えて帰るバッテリーの熱もいつしか温もりになる
(奥村知世 会社員『心の花』)

結婚し、子育てをしながら働いている作者は「先人が変えていってくれたからこそ、今、私は楽しく働くことができていると思うことも多々ある。そのような良い連鎖の一部になれるようにと願いながら、時々とても疲れてしまう日があっても、前を向いて仕事を続けていると思う」と先人を称える。

 その「先人」たちとは、私などの世代でいえば、働いて生計を立てていた女性歌人たちのつぎのような作品であった。

・俸給を小出しに父へ渡すことみづから憎むわが狭さなり
(富小路禎子『吹雪の舞』一九九三年刊、一九二六~二〇〇二)

・屈託なき若さはややに煩わしく共に働く地下の倉庫に
(三国玲子『蓮歩』一九七八年刊、一九二四~一九八七)

・クレー画集編むよろこびに往来せし妻恋坂も雪降りてゐむ
(三国玲子『鏡壁』一九八六年刊)

・明日の夜になさむ仕事を残しおく眠りゐる間に死ならざむため
(大西民子『野分の章』 一九七八年刊、一九二四~一九九四)

・牧草に種子まじりゐし矢車の咲きいでて六月となる
(石川不二子『牧歌』一九七六年、一九三三~二〇二〇)

(『ポトナム』20232月)

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2023年2月 4日 (土)

マイナンバーカードへ募る不安とリスク

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2月4日、今日の朝刊各紙に一斉に掲載された全面広告。再度延長して今月末日が申請締め切りとなった。年度末の予算消化?どこまで続く無駄遣い。

  岸田政権になって、内閣支持率が落ちに落ちるのをチャンスとばかりに、これまであいまいにしてきた政策を一気に右へとかじを切ったというべきなのか、人気浮揚のつもりの政策がすべて裏目に出たというべきか。私たちの暮らしはどうなるのか。

 いま、私の世代で、もっとも不安なのは、医療と介護である。親の介護の心身の負担、経済的負担を乗り切ったとしても、今度は自らの医療と介護の問題に直面している。

 政府は、来年2024年秋には、マイナンバーカードと保険証を一体化して、紙の保険証の廃止を目指している。その前提として、今年度末3月までには、すべての医療機関にマイナ保険証対応のシステム導入を義務づけた。しかし、その達成には至らず半年の延長を余儀なくされている。

 私が、いま通院する、地域の中核病院では、たしかにマイナ保険証対応のステムは導入されているらしい。通っている眼科のクリニックでは、受付カウンターの端に置かれている機器の利用者を見たことがない。皮膚科の医院では、冊子のカルテで対応してくれて、先生は「去年も今頃でしたね、あの薬はどうでしたか」と、手書きの図を見せてくれる。病院の方は、月一の保険証確認の窓口に列はできるが、待つこともなく、次回の予約確認と会計用の番号を渡される。マイナ保険証対応の機器がどこにあるのかはしらない。

 導入した医療機関からは、システムエラーが多数報告されて、そのリスクに不安があるという(「マイナ保険証 医師ら不安」『朝日新聞』129日)。それ以上に、私が不安に思うのは、これまでも、このブログで何度も書いてきたが、情報一元化による情報流出のリスクである。多機能なカードなればなるほど、そのリスクは拡大する。カードを入手し、パスワードさえ分かれば、その情報に入り込むことができるからだ。政府は、保険証ばかりでなく、運転免許証を一体化し、公金振り込み口座も紐づけ、国家資格の更新などもできるようにし、今国会で、マイナンバー法の法改正をして、細かな用途規制の緩和をするという。

 現在ですら、さまざまな官民が持つ個人情報があちこちで漏えいされ、実害も生じているのではないか。すでに、カードを持っている人、5千円、2万円のマイナポイントにつられて、カードを作ってしまった人、よく不安にならないか、私には不思議にも思える。いくら丁寧に説明されても、リスクはリスクで、解消されるわけでもない。また、子供の場合の交付申請が15歳未満と1518歳までとで扱いが異なるというけれど、カードとパスワードの管理はどんなことになるのか。誰のメリットになるのか、国民は、だまされてはいけない、とつくづく思う。1月末日現在で、カード取得率は60%に達したというが、「国民皆カード」で管理される時代にしてはいけない。

 マイナポイントに限定しても、20209月に始まった第1弾では2979億円、226月から始まった第2弾では18134億円が計上された。マイナポイントをPRするあのテレビCM・新聞広告やキャッシュレス事業者に支払う事務費などもこれに含まれ、併せて2兆円を超えることになる(朝日デジタル2022122日)。

 また、日経クロステックの調査(202214日)によれば、この3年間のデジタル関係予算は、5.8兆円にもなる。
2020年度第3次補正予算と2021年度当初予算<15カ月予算>1.7兆円
202112月~20233月<16カ月予算>4.1兆円

 ところで、来年度の社会保障関係予算は、下記の上段の図表によれば、36兆円規模ながら、2022年度に比べて、6154億円の増、1.7%増に過ぎない。さらに、鳴り物入りのこども家庭庁予算は、下段の図表によれば、1233憶円増え、2.6%増えたに過ぎない。

「2023年度社会保障関係予算のポイント(202212月)」https://www.mof.go.jp/policy/budget/budger_workflow/budget/fy2023/seifuan2023/13.pdf

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 「異次元」?「次元の異なる」?の少子化対策は、倍増の予算を充てるというが、どの予算が倍になるのかも分からない。その財源に至っては何の裏付けもなく、右往左往している。児童手当一つをとっても、下の図表に見るように、所得制限撤廃しても、対象を高校生まで、第2子、3子に拡大しても、マイナポイント関係予算2兆円で、十分賄えるのでないか。ほかの費目を流用したり、削減したり、さまざまな費目の寄せ集めの「基金・資金」を新設したりもするかもしれないが、結局は、増税や国債発行に拠らざるを得なくなるだろう。将来世代にツケを回さないどころか、逆走ではないか。世代間の負担格差の是正と言いながら、高齢者は、ますます生きづらい社会へと進む。この時代に、防衛費増強など、まさに異次元の人間が考えることではないか。

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NHKテレビ「時論公論・異次元の少子化対策 ~ 問われる家族観」(竹田忠、2023年2月2日)より  

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2023年2月 3日 (金)

「短歌ブーム」というけれど

 『ポトナム』1月号に寄稿した「短歌時評」です。『短歌往来』「今月の視点」一部重なりますが、「短歌ブーム」と言われているけれど、これでいいのだろうかと、少し考え込んでいるところです。

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「歌壇」というものがあるとしても、私には、遠い存在でしかない。未練がましく短歌総合誌を二誌ほど購読し、短歌との付き合いは長いので、新聞の投稿歌壇や短歌時評などには、自然に目が向く。そして、ときどき、テレビの短歌番組を覗いてみたりする。いま、一種の「短歌ブーム」のさなかにいるらしいことがわかる。昨年は『文学界』が五月号で「幻想の短歌」を、『短歌研究』八月号ではズバリ「短歌ブーム」の特集が組まれていた。そして、数年前には、『ユリイカ』(二〇一六年八月)の「あたらしい短歌、ここにあります」の特集が話題となったこともある。 最近のブームについての情報やその実態もわかりにくいが、意外にも若い世代の人たちがブームを支え、短歌メディアもここぞと盛り上げようとしているのが見えてくる。

NHKも短歌番組に力を入れているが、テレビでは、私など、名前も知らない若いタレントをゲストに、四週で一回りする四人の選者と司会者が何やらゲームのようなコーナーで作歌を競わせたりする。若い選者の中で奮闘する栗木京子の週でも、芸人やタレントの短歌を一刀両断、プレバトの俳人夏井いつきを目指しているのか、どこか無理をしているようにも見えて、騒々しい番組になってしまった。毎年実施されるNHK全国短歌大会も、テレビを見る限り、ものものしく、近年は、「歌会始」の応募歌数が一万四〇〇〇首台であるのに比べると、この大会の方が上回っている。選者の数の多さと多様さがその一因と思われる。ジュニア部門として、切り分けているところが新聞歌壇にない特徴と言えようか。

 また、昨年、一一月三日、NHKの「第一二回牧水・短歌甲子園(宮崎県日向市主催)~三十一文字にかけた青春」をたまたま見たのだが、選者の紅白の旗の上げ下ろしで勝負が決まっていく様子をスポーツ実況さながらに報じていたのである。もっと淡々と高校生の短歌を伝えて欲しいと思った。と同時に、短歌ってこんな風に競うものだったのか、とあらためて思う。

 NHKは、ラジオでも、短歌に力を入れている。昨年の七月から九月、今野寿美による「危機の時代の歌ごころ」が放送されていた。そのテキストを読むかぎり、人選や歴史認識に違和感もあったが、戦争や災害、ハンセン病やコロナ禍、差別と闘ってきた多くの女性歌人、与謝野晶子から川野芽生までの作品を中心とするミニ短歌史ともいえる内容であった。また『ラジオ深夜便』一一月号によれば、月一回で、穂村弘による「ほむほむのふむふむ」、佐佐木幸綱による「おとなの教養講座~初めての万葉集」、「新・介護百人一首」の欄もあり、リスナーの世代的な配慮も欠かさないようである。

 敗戦直後、一九四六年一二月、『八雲』が創刊された折、久保田正文は、その「編集後記」において、「第二芸術論」を念頭に置いてのことと思うが、つぎのようにいう。「短歌が真に文学の一環としての生命を自覚し、芸術にきびしい途に繋がり得るか否か」に応えるには、その一つとして、「読者吸収策」の「短歌投稿欄」を設けないとも宣言していた。読者獲得のための営業政策には加担しないジャーナルを目指したのである。「読者歌壇」を持たない短歌総合誌が、現在も、たしかに、健在であることは知られている。

販売部数や視聴率は、送り手にとって大事にはちがいない。その ためにも、雑誌・番組の中身の編集・編成の工夫と執筆者・出演者の文学的資質によって、受け手のリテラシーも向上するという好循環を期待したいのである。(『ポトナム』2023年1月)

20231

 

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