赤ちゃんにも選挙権!? 吉村知事、おかしくないですか?
町内会・自治会ではすでに始まっているが
大阪府の吉村知事が、4月26日の記者会見で、前日4月25日、「人口戦略会議」の府内12市町村が消滅危機になるという分析を踏まえてか、ゼロ歳から選挙権を認めるべきとする持論を展開した。意思表示のできないない子どもたちは、保護者が選挙権を代理行使するというものだ。
ええ?? そんなことをして、地方議会や国会議員が決められたらどういうことになるのか。保護者って誰になるのか、父親か母親か、とだけ考えても、ムリ筋なのがすぐにわかる。たとえば、施設に暮らす子どもたちの保護者は誰になるのか。要するに知事は、目の前のことだけ考えて、単純に有権者を家族単位で束ねたいのだろう。かつての戸主、いまでも問題がある世帯主を中心とする「家族」制度的な発想なのではないか。「子どものころから政治や選挙への関心が高まる」?「日本の未来を決める権利がある」?というのが理由で、すでに維新の会の政策にもなっているというから、少々おそろしくなった。
もっとも、吉村知事の「持論」なるもの、これに近い発想で、地域社会ではすでに進行している政策をご存じだろうか。私は、2017年、地元の自治会=地縁団体が法人化するにあたっての臨時総会で、詳しく知ることになった。当時の、以下4本の過去記事に詳しいが、私の疑問は、自治会が法人化されると構成員であるゼロ歳児から、議決権があることになり、子どもたちの議決権を保護者が代理行使できることによる弊害であった。意思表示ができない、まだ判断能力がない子どもたちの議決権を、多くの場合は、当然、親が、世帯主が行使してしまい、議決は住民の意思を反映することができないのではないか、という疑問であった。保護者の意見が根拠なく増幅されることを意味する。
多数決原理をゆがめることに
地元の佐倉市でも、自治会区域のすべての住民の三分の二を自治会の構成員としなければ、法人化が認められない。住民であっても自治会に入会しない世帯、退会する世帯は年々増えているので、自治会が法人を維持しようとすれば、役員たちは、構成員の確保に必死で、まず、家族全員の登録を勧める。総会の議決権行使の際など、登録の家族の全員の記名、各議案について各人が〇☓を記すよう要請される。ということは、普通に考えて、世帯主、保護者の〇×がそのまま反映され、集計の効率化、議決の安定化が図られるかもしれないが、住民の意思を正確に反映することにはならない。どうして、赤ちゃんにまで議決権があるのかを、佐倉市に問い合わせると、納得できなければ、自治会構成員として登録しなければいいというが。
だが、法人化のメリットとして、不動産登記が可能になることが挙げられる。地域住民が共同保有してきた山林や共同墓地などが、団体名義での登記できるようになることであった。また、法人化前は、世帯単位でしか議決権が行使できなかったのが、構成員一人一人が意思表示できることになるのは、確かにメリットであろう。たとえば、夫婦や家族で意見が異なる場合は、反映されることになる。個人単位になったことはよいのだが、だからと言って、子どもの議決権を代理行使するのは、多数決原理をゆがめることになるはずである。
無関心を助長することに
地元の自治会は、コロナ禍のなか、対面での定時総会は中止になり、書面での議決権行使となった。ところが、今年の4月初旬の定時総会も、書面での議決となった。630世帯前後の自治会だが、構成員は約1800名、今年の表決結果は、予算・決算・事業計画・会則改訂いずれも、反対5票以下の数字であった。近年は対面の総会、行事なども中止、会員、班員同士の交流は皆無に等しく、自治会への無関心は顕著になってしまった。コロナが収まっても、法人化と相俟って、自治会活動は低迷、形骸化は進むにちがいない。 自治体や国政の選挙であっても、選挙権は18歳以上になったが、若年層の投票率は低い。自治会も、ゼロ歳からなどとせず、構成員は18歳以上として、個人あての投票用紙を配布し、要望を尋ねたり、小さな単位での、班会などでの茶話会を開いて、情報交換したり、とくに若い人にスポーツやアウトドアの行事への参加や協力を要請したりしたら、少しは関心を持ってもらえるのではないか。工夫次第だが、ダメかなあ。
いずれにしても、 吉村知事、その持論では、政治や選挙への関心は、ますます遠のきますよ。それがねらい?
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<参考>
自治会・町内会等の法人化について -認可地縁団体設立の手引き-
(令和5年4月1日改訂版)(佐倉市)
https://www.city.sakura.lg.jp/material/files/group/16/jichikaihoujinka-r5.pdf
開き始めたモクレンとテッセン、ツバキとツツジは、いま満開です。
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